ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ハードルの高い人並み生活

2014年05月23日 | 通信-社会・生活

 私の畑ナッピバルの南隣はTさんのキャベツ畑となっている。5月に入ってTさんはキャベツを収穫し始め、出荷していた。そして、今週月曜日、残り(全体の約半分)を全て刈り取っていた。「こんだけ一遍に収穫したら車3~4台分になるな、今日一日で行ったり来たりするつもりかな」と思っていたら、Tさんに声を掛けられ、キャベツを5玉頂いた。「今日で全部採るつもりですか?」と訊いたら、
  「今日で終わりだ、長雨で多くが腐ってしまった」と言う。見ると、刈り取ったキャベツの多くは畑に残されており、車に載せられたのはその内の三分の一程度だった。残されたキャベツは全て包丁で縦横に切られてもいた。「厳しいなぁ」と思った。

 Tさんからはその2週間前にもキャベツ2玉を頂いていた。Tさんのキャベツは大きいのでその時のキャベツもまだ1玉と少し残っていた。そこへさらに5玉、独り者ではとうてい消費できない。よって、その翌日、近所の先輩農夫のNさんが来たので彼へ1玉、従姉 の亭主Tに会ったので彼に1玉をそれぞれおすそ分けした。あと2玉を別の従姉Hと友人Oに持って行こうかと思ったが、ちょっと閃きがあって、それは考え直した。
 「キャベツを保存食としよう」と閃いた。沖縄の夏場はあんまり暑くて葉野菜が育たず不足する。キャベツを茹でて冷凍しておく、あるいは酢漬けにしておいて、それを夏場に食うことにしようと思った。それで、夏場の野菜不足が補える。
          
          

 今、野菜はほとんど自家生産で間に合っているので、私の食費(食べ物)は肉や豆腐などだいたい2日で500円くらい、月にすると7500円程度で済んでいる。夏場を冷凍キャベツで乗り切れば、年間を通じてこの金額でやっていける。
 飲み物はどうだろう?と考えた。会社を辞めて貧乏になってからビールが発泡酒に、ワインも安物となった。ひと月で、発泡酒は25缶2500円ほど、ワインは1800ミリリットル入りボックス880円のもの、日本酒は四合瓶約1500円程度と高いが、たまにしか飲まないので、これもひと月分である。飲む機会の多い泡盛は値段が安いので、ひと月に換算するとだいたい1000円くらい。よって、私がひと月に消費する家飲みアルコール代は約6000円となる。飲食費は計12500円、まあまあ質素。

  思えば、会社勤めをしていた頃、私は贅沢であった。むろん金持ちでは無かった。会社は零細企業なので給料も安い、私の年収は多い時でも300万円ほどしかなかった。「しかなかった」というのは、世間一般から見た限りのことで、今の私から見れば「おー、俺はそんなに貰っていたのか、金持ちだったんだ」と思えるような金額だ。
 その頃の贅沢、「発泡酒なんて飲めるかい!」だったし、ワインは四合瓶で1000円程度のものだったし、大好きな日本酒も、吟醸酒とか大吟醸などといった値段の高いものをよく飲んでいた。美味しいと評判の山城牛のステーキもたまに食っていたし、鯛やヒラメ、マグロの刺身もしばしば食っていたし、いやー、贅沢だった。
 そんな贅沢、農夫でいる限り、もう復活することはないだろう。そんな贅沢、それが人並み生活であるというのなら、農夫にとって人並み生活はハードルが高い。そして、干ばつで泣き、長雨で泣き、病虫害にも泣く。農夫の歩く道にはそんなハードルもある。
          

 記:2014.5.23 島乃ガジ丸


蟲の季節

2014年05月23日 | 沖縄01自然風景季節

  今はもう他人のものとなってしまった那覇市泊にある実家、そこから徒歩7~8分、今は廃れているが、かつては男の歓楽街であったらしいジッカンジ(十貫瀬)の一角に蟲と看板に書かれた飲み屋があった。もう30年程も前、誰か(誰だったか忘れた)に誘われて行き、その後2、3度誰か(誰だったか忘れた)を誘って行っている。
 蟲、何と発音したかはっきり覚えていない。「うじむん」だったか、意味は確か「たくさんの虫達が蠢いている様子」だと、そこの亭主から聞いた覚えがある。そんな変な名前の店、肴はサバ缶などの缶詰やスルメなどの乾き もんのみであった。また、那覇市のほぼ中心部だというのにトイレは昔ながらのポットン便所(汲み取り)だった。

 蟲、和語で発音すると「むし」、広辞苑によると「蟲は、虫を三つ合わせ、たくさんに寄り集まる小動物を示す会意文字。虫は、その略字として古くから用いられたもの」で、意味としては「獣・鳥・魚以外の下等動物。むし。特に、昆虫」とのこと。
 ちなみに、蠢は「虫がごそごそ動く」(広辞苑)で、「うごめ(く)」と読んで、「はっきりとでなく、全体がわずかに絶えず動く。もぐもぐ動 く」(同)のこと。春の日差しの下で虫たちがごそごそ動いている様が容易にイメージできる。
 上述の飲み屋「蟲」は、春夏秋冬関係なく、夜な夜な集まって酒を飲んでいる客のことを「ごそごそ動く虫」に喩えたのかもしれない。亭主のユーモアだったと思う。カウンターに7、8席しか無い小さな店で、店内はゴキブリがごそごそ這い回っても気付かないほど暗かった。そんな小さな暗い場所で客達は確かに、ごそごそ酒を飲んでいた。

 「蠢く」は「はっきりとでなく、全体がわずか に絶えず動く」であるが、それはおそらく倭国に於いてでの話で、沖縄の春は違う。少なくとも新暦の3月ともなれば、もう虫たちは活発に動いている。繁殖活動も盛んに行っている。
 3月以降、いろんな種が夥しくいて、それぞれが盛んにセックスしている。5月11日(2014年)、私は畑でたくさんの命を奪った。正確な数字は12匹、今まさに子作りの最中であった恋人同士をも無理やり引き裂いて、二匹ともあの世に送った。じつは、子作りの最中であったことが私に直接的な殺意を抱かせたのだ。
  愛し合う2匹を独り者のオッサンが妬んで・・・というのでは無い。虫に嫉妬する程私はスットコドッコイでは無い。2匹がいた傍にシークヮーサーがある。ゴマダラカミキリの幼虫はシークヮーサーの幹の中に入り、枯らしてしまう。大敵だ、畑のあちこちを探すと彼らは12匹もいた。子作りをさせてはいけない。で、皆殺しとなった。

 ヒメゴマフコヤガ、ツマグロキンバエ、キスジセアカカギバラバチ、マダラアシナガヤセバチ、キスジノミハムシ、ダイコンハムシ、ツツサルハムシ、ハイイロクチブトゾウムシ、ア  シビロヘリカメムシ、イワサキクサゼミ、以上が今年春、写真を撮って何者か判明した昆虫たち。何者か判明していない者はこれの4倍位はある。
 上記の内、ツツサルハムシ、ハイイロクチブトゾウムシ、イワサキクサゼミは交尾の写真も撮れている。既に判明したもの、あるいは、判明してガジ丸HPで紹介済みのものでも、ダンダラテントウ、ヒメナガメ、ウルマクロハムシダマシ、ゴマダラカミキリ、シオカラトンボなどその交尾写真をこの春で撮ることができた。
     
     
     
     
     
     
     
     

  沖縄の虫たちが蠢く季節は当然去年もあったはずだが、去年はほとんど昆虫の写真を撮っていない。畑仕事に集中していたからだと思う。実家の処分に関わるあれこれで忙しくしていたせいもある。今は梅雨、雨で畑仕事も休みの時が多い。畑仕事も今はそう忙しくない。植付けも収穫もほとんど無い。やることといえば草刈だけだ。
 蠢の季節、3月からこれまでに多くの写真を撮っている。何者か判明していない写真はこの間だけでも40種以上ある。そして、去年は無かった時間の余裕が今年はある。梅雨の間、何者か判明させる時間も多く取れ る。これから昆虫の紹介が続くと思う。

 記:2014.5.18 ガジ丸 →沖縄の生活目次