9月4日付記事「ユスラヤシ」の中で、
ユスラヤシとビンロウジュの違いが私にははっきり判らなくて、写真を見せられて「これはどっち?」と問われても自信持って答えることはできない。
と書いたが、じつはその時、別のヤシ類の記事に目が行ってちょっと読み返してみた。2015年4月に「ビロウとワシントンヤシ」という記事を写真入りで両者の違いを書いてアップしているが、それを見て、「これ、間違っているかも」と気になって宜野湾市立図書館へ行って『沖縄のヤシ図鑑』という本を借りて確認した。
「これ、間違っているかも」と気になったのはワシントンヤシ。私の記憶にあるワシントンヤシは幹が太くガッシリした、例えて言えば筋トレ熱心のマッチョな男性であった。ところが、私がワシントンヤシとして載せた写真のヤシは、例えて言えば、背が高くスリムで頭の小さいミスユニバースクラスの美女。個体変異では済まない違い。
他の何冊もある参考文献には載っていない種類のヤシが『沖縄のヤシ図鑑』にはいくつもあった。その1つが今回紹介するワシントンヤシモドキ。
ワシントンヤシとは葉の形が似ているだけで、全体の見た目はミスターマッチョとミススリム美女ほどの違いがある。「それにモドキ(擬き)なんてよー」と思わぬでもないのだが、同属(washingtonia)なので学問的にはしょうがないのかと思わぬでもない。
ワシントンヤシモドキ(華盛頓椰子擬き):街路・公園
ヤシ科の常緑高木 メキシコ原産 方言名:ヤーシ(ヤシの総称)
名前の由来はワシントンヤシと同属で、ワシントンは同じく属名のWashingtoniaから。ワシントンヤシと似ているがちょっと違うのでモドキがつくものと思われる。
ワシントンヤシの別名にオキナヤシ(翁椰子)とあるが、本種の別名にもオキナヤシモドキ(翁椰子擬き)とある。その他セダカワシントンヤシという別称もあり、これは、本種がワシントンヤシに比べ背が高いということから。これには納得できる。
ワシントンヤシと比べると、幹の直径はワシントンヤシが1m程度で、本種のそれは30センチ以下(根元は肥大して直径70センチ程)とワシントンヤシよりずっと細く、高さはワシントンヤシが15m程で本種は22~27mと背も高い。葉柄の長さがワシントンヤシ2mほどなのに対し本種は1m強と小さく、葉梢部全体がコンパクト。例えて言えば、背が高くスリムで頭の小さいミスユニバースクラスの美女。
花序はクリーム色、花は白色、果実は熟すと黒褐色になるというのはワシントンヤシに同じ。ただし、開花期と果実の熟期はワシントンヤシより1ヶ月ほど遅れ、開花期は5月から6月で、果実の熟期は7月となっている。ちなみに学名、
ワシントンヤシモドキ washingtonia robusta
ワシントンヤシ washingtonia filifera
葉
幹
記:島乃ガジ丸 2018.9.19 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『沖縄のヤシ図鑑』中須賀常雄・高山正裕・金城道男著、(有)ボーダーインク発行