先月(9月)、鹿児島から友人のNが遊びに来て、一緒にヤンバル(山原と書く、沖縄島北部の通称)ドライブを楽しんだ。恩納村山田にあるホテルでNを拾い、先ずは渡久地港へ向かう。水納島行きの船が発着する港で本日全便欠航(台風後の荒波のため)を確認して、海洋博公園方面へ向かう。世界一とか言われている有名な「美ら海水族館」のある海洋博公園には入らず、公園を過ぎてすぐの場所にある別の観光名所へ行く。
観光名所とは備瀬フクギ並木。名所とはいっても観光バスが停まるような大々的な名所では無い。大きなレストランとか大きな土産品店なども無い。 舗装されていない駐車場と小さな食堂、小さな土産屋さんがポツンとある程度のもの。観るものは、フクギの並木以外何も無いようなところ。ウチナーンチュの私でさえここを訪れたのは今回が2回目。1回目もオジサンという年齢になってからのことで今から十数年ほど前のこと。
十数年前、私は昆虫や鳥などにほとんど興味が無かったので、フクギ並木を歩いても、ただ単に「あー、昔の沖縄の風景だぁ」とくらいにしか感じなくて、さーっと通り過ぎただけだが、今回はゆっくりじっくり、景色を眺めながら歩く。木々や石垣の陰 に潜んでいる虫やトカゲやクモはいないかと目も耳もいくらか緊張させながら歩く。
そうやって歩いているといくつかの動物も発見できたが、縦横にいくつも走るフクギ並木のコーラル(サンゴ石灰岩)敷きの道が、どこもきれいなことにも気付いた。私がもしも家を建てたなら、その庭にはフクギを植えることは無い。フクギは良い雰囲気を持った木であるが、その大きな果実が時期になると地面に落ちて、腐って、臭いのである。掃除をしなければならない。果実はたくさん生るので、その掃除は毎日となり、面倒臭いであろうと思われるのだ。放っておくと、蠅がたかってさらに煩い。
フクギ並木散策の途中で、道を掃除しているの人を何人も見た。見知らぬ旅人が家の前を無遠慮に歩くのさえ鬱陶しいと思われるのに、彼らは旅人たちのために毎日道を掃除しているのだ。「見知らぬ誰かと一期一会」ということなのかもしれない。少しの時間だったが、とても気持ちの良い散策となった。ここには良い気が流れている。
記:ガジ丸 2006.10.18 →沖縄の生活目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行