高校生の頃、同級生たちには心も体も健康だが、素行は不良という友人たちがいっぱいいた。彼らは部室でエロ本を読み、てんぷら屋(主に天ぷらを売っている食堂)で煙草を吸い、一人暮らししていた私の部屋にやってきては酒を飲んだ。
タバコを吸い、酒を飲み、年に50回以上も遅刻をし、授業中に窓から抜け出したり、最初から授業を受けずにパチンコ屋へ行ったり、そりゃあ世間から見れば不良だったかもしれないが、我々は、天に向かって言えば、まったく善人であった。暴力を嫌い、人の悲しみを我が憂いとする心を持っていた。仲間同士ではもちろんのこと、他校の生徒と争うなんてことも一切無かった。我々の多くは平和主義者であり、道徳的であった。
首里高校は首里城のすぐ近くにある。当時、首里城のある敷地には首里城では無く、琉球大学があった。我々は昼飯を食いに琉大の生協へたびたびでかけた。食後の一服は美味いということを既に知っていた我々であるが、さすがに琉大では吸えなかった。琉大から首里高へ向かう途中のある場所で、たいていは一服した。その場所とは園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)という、現在、国指定重要文化財となっており、2000年には世界遺産に登録されという文化財。その裏に回って、食後の一服を楽しんだ。
園比屋武御嶽石門の扉は木材でできている。裏に回るとその木材部分にたくさんの落書きがされてあった。よくある誰が好きとか、相合傘とか、卑猥な言葉や絵などとかの落書きである。タバコを吸いながら「くだらねぇことするなあ」と思った。タバコを吸う真面目な少年たちは、歴史ある文化財に落書きするような真似はしなかったのである。
5月に首里城近辺を散策した時、園比屋武御嶽石門の裏にも回ってみた。落書きはまったく無かった。地面の上にはタバコの吸殻も落ちていなかった。
円覚寺(えんかくじ)
「臨済宗の総本山。王家の菩提寺」、「池にかかる放生橋は住時のもので、国指定重要文化財」とのこと。私には何の思い出も無い。写真も撮らなかった。
円鑑池(えんかんち)と弁財天堂(べざいてんどう)
円鑑池は1502年に造られた池。龍潭と接しており、周囲からここへ水が集まる。ここから溢れた水が龍潭へ流れる。円鑑池に浮かぶ赤瓦屋根の建物は弁財天堂といい、航海安全を司る水の神・弁財天を祀っている。現在は1968年に復元されたもの。
池には珍しいハスがあるという噂を昔聞いたことがある。他に思い出は無い。
園比屋武御嶽石門(そのひゃんうたきいしもん)
御嶽とは神を祭り、祭祀が行われる場所。御嶽はこの石門の裏にある。この御嶽は守礼の門のすぐ後ろにあって、王府に関わった重要な御嶽とのこと。
ここで、健康優良精神優良素行不良少年たちはタバコを吸い、吸い切ると地面に落として、靴で踏み消す。そこは既に吸殻だらけであった。今から思えば、何て無知で、感性の貧弱な少年であったかと反省する。園比屋武御嶽石門にはそんな思い出がある。
記:ガジ丸 2006.7.20 →沖縄の生活目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行