ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

リュウキュウベニイトトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 京女の好み

 京都へは、もう十回以上も旅をしている。舞妓さん(芸者さんともいうのか、違いが良く判らないので、ここでは同一とする)にも何度もお目にかかっている。が、声を交わしたことは一度も無い。一回だけ、「おばんやす」と二人連れの若い舞妓さんに声をかけられたことがあるが、びっくりして何の返事もできぬまま通り過ぎてしまった。
  粋という言葉がある。広辞苑によると「気持や身なりのさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気をもっていること。」とのこと。「おばんやす」と私に声をかけてくれた二人の舞妓が「気持ちがさっぱりと」した人であったかどうかは不明だが、「身なりがあかぬけしていて、しかも色気をもっている」については、正しくその通りであった。彼女達に粋の称号を与えても何ら差し支えないと私は思った。

 粋な京女はきっと、物の名前のつけ方も粋であるに違いない。イトトンボのことをマメムスメ(豆娘)なんて情緒のある名前をつけたのはきっと、京女に違いない。粋からは遠く離れて生まれ育った沖縄のガサツ男は、それでも歳取って、いくらかは人生の酸いと甘いを経験して、少しは情緒が理解できるようになったのか、イトトンボを辞書で引いて、そこに豆娘という漢字を見たときに、粋だあなぁと感動したのであった。

 
 リュウキュウベニイトトンボ(琉球紅糸蜻蛉) 
 イトトンボ科 南九州から南西諸島に分布する 方言名:センスル
 方言名のセンスルはイトトンボ科の総称。イトトンボ類は沖縄に9種生息するが、本種は民家の近くにも多く、もっとも普通に見られるイトトンボ。
 イトトンボは普通のトンボよりも小型で、胴体がずっと細い。で、漢字で糸蜻蛉となるのだが、広辞苑を見ると、豆娘ともある。昔、京の宮中の粋な女中の誰かが、「あれ、あそこにマメムスメ」などと呼んだのだろうか。日本人の感性は情緒があって楽しい。糸蜻蛉なんて見た目よりも豆娘の方が全体の雰囲気を表している。詩的であると思う。
 腹長30~40ミリ。成虫の出現はほぼ周年、春、秋に多く見られる。
 
 交尾

 記:ガジ丸 2005.6.27 →沖縄の動物目次
 訂正加筆:2009.5.30

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


オオシオカラトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 田園風景1

 学生の頃、5年間東京に住んでいた。吉祥寺、武蔵境、小金井、国分寺とアパートは替わった。できるだけ沖縄に近付こうという意識なのでは無く、できるだけ田舎で暮らしたいという意識の現われだったと思う。沖縄の私の実家は那覇市の中心近くにあり、少なくとも住んでいた4つのアパートの周辺よりは都会である。その点からも、沖縄へ近付こうという意識では無く、できるだけ静かな所にいたいという気持ちであったことが判る。

  武蔵境のアパートは駅から5分という近さにあって割と賑やかではあったが、他の3つは中央線から離れており、静かなところにアパートはあった。そして、吉祥寺にも小金井にも国分寺にも、アパートの周辺には規模は小さかったが、畑があった。ただ、畑はあったが、田んぼは無かった。武蔵境のアパートの傍には農業大学があって、その中にはおそらく田んぼがあっただろうが、その中に入って、田んぼの景色を見たことは無い。

 沖縄には、昔はともかく今は、田んぼがほとんど無い。金武町にいくらか残っているというのは聞い ていて、今住んでいるアパートの前の隣人であるTさんが伊平屋の出身で、年に1度か2度、実家から送られてきたという島米をおすそ分けとして頂いていたので、伊平屋にも田んぼがあることは知っている。八重山にも田んぼがあることは、友人のYから聞いて知っている。が、その3箇所のいずれも私は見たことが無い。
 よって、私の脳の中には田園風景の記憶がほとんど無い。田植えをする農夫の姿も、黄金色に輝く稲穂の景色も、しかとは映像として浮かんでこない。そういった風景、旅先で見かけたことはあるだろうが、数が少ないせいで、はっきりとした絵にならない。

  ムギワラトンボという字を見たとき、何かしら懐かしい想いに駆られた。おそらく小学校高学年の時の少年雑誌か何かにその言葉があったのだろう。懐かしさと共に、記憶に無いはずの田園風景の絵が浮かんだ。田んぼの、まだ頭を垂れるほどではない稲の上をムギワラトンボが飛んでいる。麦藁帽子と重なって、夏の風景となっている。
 今回調べて初めて解ったことだが、田んぼに多いシオカラトンボの雌のことをムギワラトンボというらしい。ところが、田んぼのほとんど無い今の沖縄には、そのムギワラトンボを目にすることは少なくなったということだ。私もたぶんお目にかかっていない。

 
 オオシオカラトンボ(大塩辛蜻蛉)
 トンボ科 東アジアから東南アジアまで広く分布する 方言名:アーケージェー
 方言名のアーケージェーはトンボの総称。ヤンマトンボのことをダーマー、ウスバキトンボのことをカジフチダーマーとか言うが、すべてひっくるめてアーケージェーで通る。
 本土の田園地帯でよく見られるのは大の付かないシオカラトンボ。昔、田んぼが多くあった頃は沖縄でもシオカラトンボが普通に見られたそうだが、田んぼの多くがサトウキビ畑に変わってしまった今ではシオカラトンボが激減し、オオシオカラトンボが増えたとのこと。ちょっとした水溜りでもオオシオカラトンボは繁殖できるらしい。
 腹長40ミリ内外。成虫の出現は3月から11月。
 
 雌
 
 交尾

 記:ガジ丸 2005.6.27 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ウスバキトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 台風のたんびに

 今年は台風の襲来が多かった。沖縄県に影響を与えた台風の数は13個、観測史上最多とのこと。台風が来るたんびに破れた網戸の網の補修、倒れた畑の野菜、オクラ、シマトウガラシ、シシトウなどの立て起こし、ゴミの吹き溜まったベランダの掃除などといった作業を繰り返す。そういった3、4時間はかかる作業をコツコツと繰り返した。先日の台風23号の後始末は、さっきやっと終えた。ふと見上げると、夕焼けの空にトンボが飛んでいる。24号も来るのであろうかと不安になる。

  台風のたんびに群れを見せるトンボがいる。それは台風の前ぶれ、あるいは台風が過ぎ去った後に姿を見せる。南方から風に流されてくるというウスバキトンボだ。ウチナーグチ(沖縄口)ではその通り、カジフチダーマー(風吹きとんぼ)という名がある。
 那覇の市街地でよく見られるトンボは、ウスバキトンボの他に、ショウジョウトンボがいる。赤い色をしていて、アカトンボと呼ばれたりするが、歌にでてくるアカトンボはアキアカネなどアカネトンボの仲間で、ショウジョウトンボとは別種。アカネトンボの仲間は沖縄にはいない。しかも、ショウジョウトンボは 秋のトンボでは無く、年中いる。

 ウスバキトンボも年中見られる。私の周りではショウジョウトンボよりウスバキトンボの方が断然多い。おそらく絶対数が多いのだと思われる。しかも、ウスバキトンボは人間に近付いてくるので気付きやすい。「やーい、捕まえられるものなら捕まえてみろ。」とからかっているかのように近くまで寄って来て、目をやるとさっと逃げる。彼らはまた、何かに止まってじっとしていることがあまり無い。写真の撮りにくい奴らなのだ。

 
 ウスバキトンボ(薄羽黄蜻蛉) →写真1 →写真2
 トンボ科 世界の熱帯、温帯の各地に分布 方言名:カジフチダーマー
 トンボのことを総称してアーケージェーという。本種もアーケージェーで通るが、カジフチダーマーと特に呼んだりする。ダーマーはヤンマトンボのような大き目のトンボのこと。カジフチは風吹きの沖縄読み。台風の前触れに飛んでくると思われている。
 台風が来ても来なくても、じつはやってくる。どこにでもいて、生息数も多いのでよく見かける。台風前後に多く見られるのは、風に流されてやってくるのではないかと、これは同僚のTの推測。繁殖力が強いので分布も広いとのこと。これは文献から。
 腹長30ミリ内外。成虫の出現は周年。夏から秋にかけて多い。

 注:文章の大方は2004年10月に書いたもので、それに一部追加(2005.6.27)している。写真は2005年6月に撮ったもの。あざ笑うかのように私の近くを飛ぶウスバキトンボを強引に撮った。ぼやけているのはバカチョンカメラのピントが合わなかったか、トンボの速さにシャッタースピードがついていけなかったかのどちらか。
 

 記:ガジ丸 2004.10.29 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


コウガイビル

2011年05月06日 | 動物:クモ・その他

 ハンマーヘッドシャーク

 植物で吃驚するようなモノに出会うことはあまり無いが、動物だとたまに出会う。先々週(12月3日)に紹介したブラーミニメクラヘビにも驚いたが、今回紹介するコウガイビルにはもっと驚いた。ミミズのようでミミズでは無い。頭の形が違う。
 頭の形が本種の特徴のようで、それが名前の由来となっている。都心の土地代が高くなって、郊外にビルを建てるようになって、ビルがポツンと建っている様が本種の形に似ている、なんてわけでは無い。コウガイビルは由緒正しき日本語。

  コウガイビル、ビルはヒル(蛭)のことだが、ヒルの仲間ではないとのこと。コウガイは笄で、「男女ともに髪をかきあげるのに用いる具。箸に似て、本を平たく末を細く・・・」(広辞苑)のこと。その形に似ている。コウガイビルにはいろいろあるらしいが、私が見つけたコウガイビルは、私の感覚ではハンマーヘッドシャークに似ている。
 コウガイビルはコウガイビル科コウガイビル属に属する動物の総称とのこと。「陸生の渦虫類の一群」とも広辞苑にあった。コウガイビルも渦虫類も初めて聞く。見た目にも驚くが、名前を見ても、「なんじゃこりゃ?」といった気分になる。

 
 コウガイビル(笄蛭) 
 コウガイビル科の渦虫類 方言名:不詳
 ヒル(蛭)と名が付くがヒルの仲間では無く、渦虫類というプラナリアの仲間。見た目の印象がヒルに似ているからヒルだと思われる。コウガイ(笄)は広辞苑にあり、「男女ともに髪をかきあげるのに用いる具。箸に似て、本を平たく末を細く・・・」のこと。本種の頭部がイチョウの葉のような形で、全体が笄のような形となる。
 コウガイビルは、コウガイビル科コウガイビル属に属する動物の総称で、日本には数種いるらしいが、詳細は分かっていないとのこと。
 体長も5センチから1メートルと種類によってさまざま。私が見つけ、写真に撮ったものは体長10センチほどであった。沖縄にも数種生息し、そう珍しいものでは無く、石の下など暗く湿った所を探せば見つかるらしい。私は写真に撮ったものが私の初めてのコウガイビルだと思ったのだが、それまでにもたぶん何度か見ていたに違いない。子供の頃からモノをよく観察する性格では無かったので、ミミズだと思ったに違いない。
 肉食で、土壌の微生物やミミズや陸産貝を食べる。人体への害は無い。

 記:ガジ丸 2010.11.23 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ナメクジ

2011年05月06日 | 動物:魚貝類

 殻を脱いだカタツムリ

 私は、部屋の中にいる小さなアリは殺すが、大きなアリは殺ずに部屋の外へ追い出す。何故か?小さなアリはイエヒメアリ、彼らは私に危害を加えるからである。イエヒメアリは人の肌を噛む、噛まれると痒い、その被害に何度もあっているので殺処分。
 私は、畑に糞をする憎き野良猫も大目に見ており、ネズミを見つけても放っている。しかし、特に被害は受けていないが、気持ち悪いという理由だけで殺処分となる可哀そうな奴もいる。ゴキブリ、「悪いけど」とも全く思わず、見つけたら即殺。

  気持ち悪いけれど殺されない奴もいる。ナメクジ。ナメクジは殻を脱いだカタツムリのようなものだ。しかし、カタツムリは気持ち悪くないのに、手の平で遊ばせることもできるのに、ナメクジは気持ち悪い。気持ち悪いけれど殺さない。
 カタツムリ同様、ナメクジは動きがとても鈍い。しかも、殻を脱ぎ捨てて無防備だ。弱き者と思ってしまう。弱き者はなかなか殺せない。逃げることのできない無抵抗の者を殺すのは、いくら冷たい心のオジサンでもなかなかできるものでは無い。とは言っても、子供の頃、ナメクジに塩をかけたことは何度もある。・・・死んではないと思うが。
 ナメクジは、出会う回数は少ない。カタツムリに1000回会ったとしたら、ナメクジに1回会うかなといった頻度。でも、探せばきっとそこらにいる。身近な動物。

 
 ナメクジ(蛞蝓)
 ナメクジ科の巻貝 日本、アジアに分布 方言名:ナンドゥルームン、ユダヤームン
 名前の由来は資料が無く不明。蛞蝓は広辞苑にあったが、おそらくナメクジのために作られた漢字だと思われる。ナメはしかし、滑「ぬるぬるしているもの」(広辞苑)の意味であろう。方言名のナンドゥルームンもまた「ぬるぬるしているもの」という意、もう一つのユダヤームンは「よだれを垂らすもの」という意味。「這った跡に粘液の筋を残す」(広辞苑)のでユダヤームン。方言名はどちらも解りやすい。
 貝殻は退化しまったく無い、が陸生の巻貝の一種。陸生の巻貝というとカタツムリがあるが、ナメクジもカタツムリもマイマイ目の陸生有肺類巻貝に含まれる。
 体長は6センチ内外、体を伸縮させて移動する。移動した跡に粘液の筋が残り、光って見える。頭部に2対の触角があり、これもカタツムリに似る。
 暗く湿った所を住処とし、カタツムリ同様、野菜の害虫となっている。塩をかけると水分が出て体が縮むが、子供の頃、私もやった経験があり、確認している。
 『沖縄大百科事典』によると、沖縄島北部の山地には体長15センチ、幅2センチを超すヤマナメクジが生息するとのこと。
 
 ナメクジ大きさ

 記:ガジ丸 2010.11.20 →沖縄の動物目次
 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行