ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

コシブトトンボ/ヒメトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 池畔の住人1

 9月、仕事で沖縄市泡瀬へ行った。その昼休み、弁当持って近くの公園へ行く。その公園は海の傍にあり、ゲートボール場のある中規模の広さで、一角には200平方メートルほどの池があった。ゲートボール場側には大きな出入口があるが、対角にある池側の出入口は気をつけないと見逃してしまいそうなほど小さい。それを私は見逃さない。
  小さな入口から園路を歩くとすぐに数匹のトンボに出会う。10mも歩くと池が見えてくる。池の周りにはたくさんのトンボが乱舞していた。「そうであった。トンボの幼虫ヤゴは水中の住人であった。トンボは水辺に多くいるのであった。」と気付いた。

 目で追って、ざっと数えただけで8種類、私が確認できたものはウスバキトンボ、ハネビロトンボ、ショウジョウトンボ、オキナワチョウトンボの4種類。写真は撮れなかったが、たぶんオオシオカラトンボ、たぶんギンヤンマらしきものも見た。
 名前の知らないトンボも何種類かいた。小さなト ンボが何匹も、弁当食っているベンチの傍にまで寄ってきた。初めは同じ種類かと思ったが、体の太さが違う。同じ太さの体をしていて色の違うのもいる。それぞれ写真を撮って調べる。太いのはコシブトトンボ、普通の太さはヒメトンボ、ごく細いのはアオモンイトトンボであった。アオモンイトトンボはイトトンボ科なので別項(→池畔の住人2)で紹介するとして、この頁ではコシブトトンボとヒメトンボ。私は知らなかったが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』のヒメトンボの説明に「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とあった。思いがけず、小さなトンボの1位と2位ということになった。

 
 コシブトトンボ(腰太蜻蛉):トンボ目の昆虫
 トンボ科 奄美諸島、琉球列島、東南アジア、他に分布 方言名:アーケージェー
 腰が太いのでコシブトトンボという名。別種にハラビロトンボというのがいるが、それは腹部全体が太い。本種は腹部の上部だけが太い。本種はもっと大きな特徴がある。『沖縄昆虫野外観察図鑑』のヒメトンボの頁で、「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とあった。つまり本種は、琉球列島で一番小さなトンボということ。
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』の本種の頁では、「産地は局限される」、「観察される場所が少なくなった」とある。成虫はあまり移動しないため生息場所が広がらないということと、池沼、水田に多かったが、水田が少なくなったため見られる場所も減ったということである。私が本種を発見した場所は小さな池だが、多く観察できた。
 腹長18ミリ内外。成虫の出現は3月から11月。
 
 雌

 
 ヒメトンボ(姫蜻蛉):トンボ目の昆虫
 トンボ科 種子島以南、台湾、東南アジア、他に分布 方言名:アーケージェー
 ヒメ(姫)は、広辞苑に「小さくて愛らしい意を表す語」とある。その通り小さなトンボ。「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とのこと。
 平地で多く見られ、「常に水があれば、小さな水溜りや池などでもヤゴは生息できる」とのことだが、私の住む近所、職場の近所にも「常に水のある小さな水溜りや池など」はあるが、本種を見たことは無い。写真は沖縄市の池のある公園で撮ったもの。
 「腹部挙上姿勢が見られる」とも文献にあり、止まっているとき尻を空に向けた格好をしているということだが、それはその通り、そういう格好で止まっていた。
 腹長18ミリ内外。成虫の出現は周年。
 
 雌

 記:ガジ丸 2006.11.11 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行


ハネビロトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 判り易いもの

 これまでの人生において私は、昆虫採集の趣味は無く、今でも、写真は撮るが、それらを捕 まえようなどとはちっとも思わない。第一、それらは食えない。捕まえても私の腹を満たしてはくれない。第二に、それらを殺そうなどとは思わない。殺して手元に残したいほど愛おしいとは思わないからだ。捕まえても私の心を満たしてはくれない。
 というわけで、動物を紹介するとき、私は自分の撮った写真と文献の写真を見比べて、それが何であるか判断している。ところが、特に昆虫の中には、ごく僅かな違いで別種ということもあって、じつは、写真だけでは判断のできないものも多くある。ホソミシオカラトンボもその一つ。シオカラトンボとの違いは体が細いとのことだが、それは、2つを並 べて、じっくり見なきゃあ判らないことである。

 宮沢りえと菅野美穂のどちらが細いかなんて、目の前に二人を並べて、服を脱がしてみなくちゃ判らないことなのだ。しかしこの場合は、じっくり見る前に、いや、服を脱がす前に私は目が眩んで、比較するどころでは無くなるに違いないのだが・・・。
 宮沢りえと菅野美穂のどちらがどっちだ?と顔写真を見せられたら、すぐに答えることができる。どちらも同じく美人だが、どちらもそれぞれ個性的である。トンボにも見た目に個性的な者がいる。そういったものは判別しやすい。ハネビロトンボは個性的だ。

 
 ハネビロトンボ(翅広蜻蛉):トンボ目の昆虫
 トンボ科 九州以南、沖縄、台湾、東南アジアなどに分布 方言名:アーケージェー
 後翅の幅が広いのでハネビロという名。名前も判りやすいが、その後翅の根元のほうに黄色の縁がある褐色の紋様があって、本種であると判断するのも易しい。
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』には「平地部の植生が豊富な池沼に多い」とあったが、私が目撃した場所は、職場の庭も西原の公園も近くに池沼は無い。でも、「移動力が強く、水域からかなり離れた地域でも・・・」と同書にあって、納得。
 腹長30~35ミリ。成虫の出現は周年。
 
 下から

 記:ガジ丸 2005.11.25 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ギンヤンマ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 名前は有名だけど

 トンボと言えば、童謡にある「夕焼け小焼けの赤とんぼ」が先ず浮かぶが、その次に有名なものは、先に紹介したシオカラトンボよりもヤンマトンボの方ではなかろうか。大きなトンボなので少年たちに人気があり、本や雑誌でも多く紹介されている。
  じつは、しかし、ヤンマトンボというトンボはいない。広辞苑によると、ヤンマは「ギンヤンマ・オニヤンマ・カトリヤンマなど、大形トンボの総称。」とある。それでも、(カトリヤンマは知らないが)オニヤンマ、ギンヤンマはその名でまた有名である。虫を知らない私でもそれらの、実物はともかく、名前はよく知っている。
 アパートの畑、近くの原っぱ、職場の庭でもよく見かけるトンボはしかし、オニヤンマでもギンヤンマでも無い。既に紹介済みの、ウスバキトンボ、ハラボソトンボという私にはまたっくの無名トンボたちであった。虫の写真を撮り始めてから約1年。名前が有名なギンヤンマとオニヤンマはずっと発見できずにいたのである。が、先日、職場の庭をやっと訪れてくれた。たった1匹、しかも、その時のたった1回だけ。

 
 ギンヤンマ(銀蜻蜓):トンボ目の昆虫
 ヤンマ科 日本、沖縄、台湾、他に分布 方言名:ダーマー(トンボの総称)
 ヤゴは池や河川の下流部などの流れの緩やかなところに生息する。成虫はそこから大きく移動し、人家周辺にも現れる。ヤンマ科のトンボは大型のものが多い。
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「トンボ釣りの遊びができるヤンマ」とあったが、トンボ釣りという遊びを私は知らない。「雄が雌を交尾のためにつかまえる習性を利用したものである。」と書かれてある。トンボを糸に括りつけて、糸の一方を手に持ってトンボを飛ばしている光景をテレビかマンガかで見たことがある。あのことか。
 腹長47~55ミリ。成虫の出現は2月下旬から12月。

 リュウキュウギンヤンマ(琉球銀蜻蜓):トンボ目の昆虫
 ヤンマ科 琉球列島、台湾、東南アジアなどに分布 方言名:ダーマー
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』によると、ギンヤンマとの違いは「本種の方が大型で、腹部が長い」とあり、他に額の紋が違うともあったが、写真のものがどちらなのか写りも悪いので、私には判別がつかない。本種は人工的環境には少ないとあり、ギンヤンマが人家近くでも良く見かけられるというので、写真のものはギンヤンマとした。
  腹長53~64ミリ。成虫の出現はほぼ周年。

 後日、「トンボ公園」(仮称)でヤゴの抜け殻を発見した。どのトンボか不明だが、4センチほどの大きさだったので、大型のギンヤンマかオニヤンマかもしれない。
 なお、オニヤンマは、上の2種とは科が違う。オニヤンマ科となっている。
 

 記:ガジ丸 2005.10.10 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


ハラボソトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 ドラゴンフライ

  grasshopperという英単語はバッタのことを指す。grass(草)、hopper(飛び跳ねるもの)ということから何となく想像はつくが、そのことを私が知っていたわけでは無い。アメリカへは3回、計5ヶ月ほど滞在した経験はあるが、英語は得意では無い。中学一年の頃から英語はずっと苦手科目であった。それなのにバッタの英語名を言える。じつは、今日知った。それもバスの中で。しかも小学校3年生位の女の子に教えてもらった。

 今日(24日)ウッディー・アレン監督の作品を観た。期待通りに楽しめて、気分の良いまま帰りのバスに乗る。一番後ろの6人が腰掛けられる席に座る。隣に初老の女性、その向こうに孫と思われる小学校3年生位の女の子がいて、英語の塾にでも通っているのだろう、彼女が虫の名前を英語で言って、それをおばあちゃんが答えるというゲームをしていた。隣にいた私は、なるほどそれはそう言うのかと、いくつかを頭の隅に留めた。

 ドラゴンフライといっても、竜の天ぷらのことでは無い。英語でdragon-flyと書き、トンボのこと。flyはハエのこと(天ぷらはfry)も指すが、飛ぶ虫の総称でもある。竜のごときハエということか、あるいは、竜のような飛ぶ虫ということであろう。

 
 ハラボソトンボ(腹細蜻蛉):トンボ目の昆虫
 トンボ科 九州、南西諸島、台湾などに分布 方言名:ダーマー(トンボの総称)
 腹部がほっそりとしているのでこの名となっている。こういう名前のつけかたは判りやすくて、素人には助かる。シオカラトンボなどと比べるとその細さは明確。
 雄雌に外見の違いはほとんど無いようだが、見分け方はあるらしい。雄に副生殖器があるとのことだが、それがどうなっているのか、もちろん、テーゲー(大概、おおざっぱという意味の沖縄語)のガジ丸は、そこまで詳しくは調べない。
 雄は池や川などの水辺に縄張りを持つが、移動する力が強く出現する範囲は広い。山地にもいるが、平地の住宅地辺りでもよく見かける。写真1はアパートのすぐ近くにある原っぱのもの。原っぱに水気は無いが、隣の小学校に池のようなものがある。写真2はアパートの畑のもの。畑に水気は無いが、小学校の池までは約100mの距離。
 腹長37ミリ内外。成虫の出現は周年。
 
 横から
 
 交尾

 記:ガジ丸 2005.9.24 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行


リュウキュウハグロトンボ

2011年05月09日 | 動物:昆虫-トンボ目

 相手が誰であろうと

 山の中に入るといろんなトンボに出会うことができる。一昨年、本島北部、名護にあるタナガーグムイ(注1)に遊びに行って、一人で沢登りをしている時にきれいなトンボを見つけた。何故か近付いても、そう遠くに逃げない、逃げないどころか、私の周りをウロチョロする。なもんで、うまい具合に写真を撮ることができた。後日、調べると、リュウキュウハグロトンボという種類だった。自慢しようかと思ったのだが、そう珍しいトンボではないらしい。せっかく、ハブに遭遇する危険を冒して沢に登ったのに、残念。

  「何故か近付いても、そう遠くに逃げない。周りをウロチョロする。」のにはわけがあった。リュウキュウハグロトンボの雄は縄張りをもっていて、その中から遠く離れることは無いとのこと。しかし、自分の目から見れば遥かにデカイ、姿形も全然違う人間の私のことも彼は、雌を奪いに来るライバルに見えたのだろうか、私のことを見張るようにして近くに止まり、睨んでいる。お陰で、素人の私にも近写が撮れたのであった。

 注1:タナガーグムイ
 グムイは形容詞の付かない単独の場合はクムイと発音し、池や沼のことを指すウチナーグチ(沖縄口)。タナガーは、おそらくタナゲーが変化したもので、タナゲーのいる池という意味になるのだと思う。タナゲーは「川エビ」を指すウチナーグチ。

 
 リュウキュウハグロトンボ(琉球羽黒蜻蛉)
 カワトンボ科 南西諸島、中国、台湾、他に分布 方言名:アーケージェー
 方言名のアーケージェーはトンボの総称であるが、渓流に住み、見た目も違うので違う名前があって良さそうなもんだと思う。しかし、文献に本種の特別な方言名は無い。
 雌が卵を産みやすい場所に雄は縄張りをもっていて、雌がやってくるのを待つらしい。卵を産みやすい場所というのは、やはり人気があるらしく、油断しているとその縄張りを他の雄に奪われる。よって、雄はその中から遠く離れることは無い。
 腹長50ミリ内外。成虫の出現は2月から12月。渓流地に住む。
 
 雄
 
 雌

 記:ガジ丸 2005.6.27 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行