池畔の住人1
9月、仕事で沖縄市泡瀬へ行った。その昼休み、弁当持って近くの公園へ行く。その公園は海の傍にあり、ゲートボール場のある中規模の広さで、一角には200平方メートルほどの池があった。ゲートボール場側には大きな出入口があるが、対角にある池側の出入口は気をつけないと見逃してしまいそうなほど小さい。それを私は見逃さない。
小さな入口から園路を歩くとすぐに数匹のトンボに出会う。10mも歩くと池が見えてくる。池の周りにはたくさんのトンボが乱舞していた。「そうであった。トンボの幼虫ヤゴは水中の住人であった。トンボは水辺に多くいるのであった。」と気付いた。
目で追って、ざっと数えただけで8種類、私が確認できたものはウスバキトンボ、ハネビロトンボ、ショウジョウトンボ、オキナワチョウトンボの4種類。写真は撮れなかったが、たぶんオオシオカラトンボ、たぶんギンヤンマらしきものも見た。
名前の知らないトンボも何種類かいた。小さなト ンボが何匹も、弁当食っているベンチの傍にまで寄ってきた。初めは同じ種類かと思ったが、体の太さが違う。同じ太さの体をしていて色の違うのもいる。それぞれ写真を撮って調べる。太いのはコシブトトンボ、普通の太さはヒメトンボ、ごく細いのはアオモンイトトンボであった。アオモンイトトンボはイトトンボ科なので別項(→池畔の住人2)で紹介するとして、この頁ではコシブトトンボとヒメトンボ。私は知らなかったが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』のヒメトンボの説明に「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とあった。思いがけず、小さなトンボの1位と2位ということになった。
コシブトトンボ(腰太蜻蛉):トンボ目の昆虫
トンボ科 奄美諸島、琉球列島、東南アジア、他に分布 方言名:アーケージェー
腰が太いのでコシブトトンボという名。別種にハラビロトンボというのがいるが、それは腹部全体が太い。本種は腹部の上部だけが太い。本種はもっと大きな特徴がある。『沖縄昆虫野外観察図鑑』のヒメトンボの頁で、「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とあった。つまり本種は、琉球列島で一番小さなトンボということ。
『沖縄昆虫野外観察図鑑』の本種の頁では、「産地は局限される」、「観察される場所が少なくなった」とある。成虫はあまり移動しないため生息場所が広がらないということと、池沼、水田に多かったが、水田が少なくなったため見られる場所も減ったということである。私が本種を発見した場所は小さな池だが、多く観察できた。
腹長18ミリ内外。成虫の出現は3月から11月。
雌
ヒメトンボ(姫蜻蛉):トンボ目の昆虫
トンボ科 種子島以南、台湾、東南アジア、他に分布 方言名:アーケージェー
ヒメ(姫)は、広辞苑に「小さくて愛らしい意を表す語」とある。その通り小さなトンボ。「琉球列島ではコシブトトンボに次いで小さなトンボ」とのこと。
平地で多く見られ、「常に水があれば、小さな水溜りや池などでもヤゴは生息できる」とのことだが、私の住む近所、職場の近所にも「常に水のある小さな水溜りや池など」はあるが、本種を見たことは無い。写真は沖縄市の池のある公園で撮ったもの。
「腹部挙上姿勢が見られる」とも文献にあり、止まっているとき尻を空に向けた格好をしているということだが、それはその通り、そういう格好で止まっていた。
腹長18ミリ内外。成虫の出現は周年。
雌
記:ガジ丸 2006.11.11 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行