日本に国境はない?

 うまい言葉が見つからなかったが、地図上に「日本と他国とを分かつ国境線はない」と云う意味である。郷秋<Gauche>は中学の社会科の時間に、日本は島国だからヨーロッパの国々のような国境問題は存在しないと習った。同様に、アメリカのような多民族国家と違い日本には日本人しか住んでいないから民族問題も存在しないと習った。確かにそんな風に習った記憶がある。

 しかしどうだ、南は尖閣諸島、北は北方領土と、このところ「国境問題」が頻発。確かに北海道から沖縄本島の陸地上に国境線は存在しないが、海上には(地図上のと云う意味だが)幾本かの国境線が引かれ、日本が固有の領土だと主張しているにも関わらず、他国に長く実行支配されている島もある。

 日本海(島根県沖)の竹島も領有問題を抱えている。さすがに日本以外の国がその領有権を主張することはないようだが、日本が本州の南方おおよそ1000kmの位置に広がる広大な排他的経済水域(EEZ)を主張する根拠になっている「沖ノ鳥島」は、「島」ではなく岩礁であり、排他的経済水域の根拠とはなりえないと主張する国と地域が存在する。 日本に国境問題は存在しなと云う主張の根拠がなんであったのか、当時の社会科教員に聞いてみたいものである。

 人種問題も同様。一番大きな問題として「アイヌ」の問題がある。これはアメリカ大陸やオーストラリアにおける先住民とヨーロッパ人との問題に似ているかも知れないが、アイヌ固有の文化や言語が「消滅の危機に晒されている、あるいは既に消滅している」と云うことすら正確に報道されていない程、問題にされていないことが問題だと郷秋<Gauche>は思う。

 同様に沖縄の問題もあるだろう。文化、言語的にあるいは社会的に日本とは別の歴史を持つ琉球を日本に県の一つとして扱うことに異議を唱える方も、あるいは(特に沖縄県には)おられるかも知れない。このことは太平洋戦争末期における沖縄地上戦が更に問題を複雑にしているかも知れないが、これもまたアイヌ民族の問題と同様、一般に報じられる機会は極端に少ない。だから郷秋<Gauche>もほとんど知らないが、そこに少なからぬ問題が潜んでいるように思えてならない。

 郷秋<Gauche>の中学生時代にもあったはずの在日中国人、韓国・朝鮮人問題は、当時は完全に無視されていた。高度経済成長時代以降はアジア地域からの出稼ぎ外国人の問題、南米からの日系人出稼ぎ者とその家族の問題もある。更には(今は数は少ないとしても)アジア各国から日本に定住しようとする難民の問題も今後は無視できない問題となるかも知れない。外国人問題は多分に宗教の問題を孕んでいるが、多くの日本人にその認識がないのも問題と云える。

 郷秋<Gauche>の中学生時代にも、国境問題、民族問題、在日中国人、韓国・朝鮮人問題はなかったはずはない。ただ「臭い物に蓋」で、そんな問題はなかったことにしていただけの話だろう。そんな臭い物にいつまでも蓋をし続けることが出来なくなったのが昨今。問題を無かったことにして考えることをしなかったから、政府には確固とした方針も対応策もない。だから問題が起こるたびに関係国や関係勢力に振り回され閣僚も国会議員も役人も右往左往する。

 この国の危機管理能力はいったいどうなっているのか、考えだしたら心配になって夜も眠れぬほどであるが、そうは云っても夜はしっかり寝ておかないと翌日の仕事に触るから寝ている郷秋<Gauche>ではあるが、心配でることに変わりはない。

 平和ボケした日本に難問が次々に襲いかかっている昨今だが、議員や役人ではなく、民間の有識者(これの人選が甚だあやしいとも云えるのだが)を活用し、しっかりした対応策を検討し、断固実施しなければ国の利益、ひいては国民一人ひとりの権威・利益を守ることはできないだろう。民主だ自民だと己が勢力の事だけを考えて対立しているような場合ではないだろうと、郷秋<Gauche>は思うぞ。


 人の世で何が起ころうとも「おいらには関係ないぞよ」と自適な構えのニャンコが羨ましい。あるいは猫には猫の世事や葛藤があるのかも知れないけれど。
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