ハノイで行われた2回目の米朝首脳会談が、合意文書の発表はおろかワーキングランチも中止されるという結果に終わった。
米朝双方は会談決裂原因の糊塗と責任転嫁に忙しいが、伝えられるところでは北朝鮮が寧辺の核施設を米国の査察下に破棄する見返りとして経済制裁の全面解除を求めたことに対し、アメリカは老朽化した寧辺の核施設に加えアメリカ情報機関が新しく確定した核施設(東倉里が有力)も廃棄対象に加えない限り経済制裁解除に応じないことを主張したことが真相であるらしい。首脳会談の決裂に対して関係各国は一様に”残念”とコメントし、引き続き対話の継続を求めているが、本当に残念と思っているのは韓国の文大統領だけであろうと思う。アメリカはトランプ大統領が安易な妥協をしなかったためにアジアの均衡が保てたことに安堵し、中国は米朝の緊張状態と経済制裁が続くことで引き続き北朝鮮を使い勝手のいい衛星国として繋ぎ止めることができ、日本は拉致被害者の救済要求をトランプ大統領の口を借りて北朝鮮に伝達し得たことで良しとしているものと思う。1回目の米朝首脳会談では、アメリカが「大量破壊兵器の非可逆的な即時廃絶」から、朝鮮半島を視野に入れた「段階的な大量破壊兵器廃絶」にシフトチェンジした印象を各国に与えたために、日中韓は少なからず混乱して、特に韓国は鉄道の連結、開城の再稼働、金剛山観光は明日にも着手・再開できると舞い上がって、北との対話に備えて反日をより鮮明にし米韓合同演習の縮小すら行った。しかしながら昨年末にも実現すると見られていた金正恩委員長の訪韓は実現せず、日米には韓国疲れと嫌韓の風潮を広めたに過ぎなかった。空気を読むことには敏感な”風見鶏大統領”は、3.1独立運動100周年記念式典では犠牲者の数を7500人(朝鮮総督府の記録では630人)と過大に表現した以外は、歴代大統領の常套句である未来型日韓関係の構築に戻っている。
長年の経済制裁によって北朝鮮の疲弊は相当なものであるが、宗主国然と保護・支援すべき中国自体が、国際的に国連決議の遵守状況を監視されているとともに、通商問題で米国と事を構えることができない状態に置かれていることから有効な支援ができない現状である。首脳会談を含む米朝協議は引き続き行われるであろうが、北朝鮮が今回と同じように中国の意を受けて同根の主張を繰り返すならば、核廃絶に対する急激な進展は望めないだろうと考える。