障害児入所施設における問題
障害児入所施設においては児童福祉法の改正に合わせ、2006年10月1日より同法の適用となった。それ以前は児童相談所が入所が適当がどうか判定していたのだが
保護者の経済的な理由、家庭の事情(保護者に養育能力がない)
家庭での養育を続けた場合、親子関係の維持が困難になる
当該児の障害が重い
養育できる(すべき)人がいない
当該児に虐待、ネグレクト(育児放棄・養育放棄)の疑いがある
等の理由のため「家庭での養育が困難」として、入所判定が出た児童は全員「措置入所」という扱いを受け、児童福祉の観点から入所にかかる費用、学校教材費、医療費がほぼ無料であった。しかし、同法適用に伴い、児童相談所の再判定により「措置継続」と「契約利用」に分かれた。契約利用においては成人施設同様、利用料を払っての入所となり、医療費等も原則負担となる(自治体によっては補助、あるいは指定病院は無料という形もある)。同一施設内で同じように暮らしているにもかかわらず、医療費も含め利用料を払わざるを得ない家庭と払わなくてもすむ家庭が混在することに両者の軋轢、職員の予算執行に関わる職務の増大が懸念される。また、デイサービスなど施設利用、あるいは何らかのサービスを受けている在宅障害児においても負担が増えた。
また、措置の基準が厚生労働省より示されているものの明確ではなく、結果、判断する児童相談所の多くが当該児との面会や家庭環境調査等を行わず措置と契約に分けたため施設、保護者の混乱や判定のバラつきが見られる。
そもそも所得がなく、保護者による「保護」が必要な児童全般において、障害児も障害者と同じように利用の際は対価を支払うという自立支援法の枠組みに組み込まれ、「自立」を促されるようになった(2006年10月1日の児童福祉法改正により、児童福祉施設の中で障害児施設のみが入所にかかる実費負担が必要になった)というのは児童福祉の観点から大きく逸脱するものとして関係者から非難の声が上がっている。
虐待、ネグレクトされている疑いのある児童の場合、措置継続になる可能性が高いが、その一方、熱心に保護者が面会・外泊など行い、施設入所させているものの非常によくコンタクトを取る家庭であっても契約利用となっている。子供に対し無関心な親は無料で、真剣に考えている親は有料であることに不公平感が生じるケースもある。こうした問題点から「児童福祉の理念に反している。障害児は児童じゃないのか。」等の声が現場関係者、保護者から挙がっている。
もっとも、入所児童の利用負担に対し、以前は保護者の経済力、家庭の状況に関わりなく利用費、医療費、学費がほぼ無料であったことから、在宅で障害児を看ている家庭からすると負担面で相当優遇されていたことから、(不本意な形とはいえ)ある程度是正されたという見方も出来なくはない。
過齢児の問題
障害児施設は児童福祉施設であり、18歳以上(慣例として高校・高等部卒業まで、通所利用の場合は大抵18歳になった時点で利用出来なくなるケースが多い)の継続入所が原則認められていないのだが、成人施設が見つからない等、次の進路が決まらない場合、暫定的に継続して入所サービスが受けられる。そのような「過齢児」は少なくなく、施設によっては大半を過齢児が占め、児童施設として成り立たないでいる所もある。児童施設では平日日中は学校があるため、職員の配置を薄くしているが、加齢児がいることで児童・加齢児双方の支援体制が十分に取れなくなってしまうケースがある。
同法成立により、入所サービスを受ける基準が厳しくなった為、過齢児の次の進路決定がさらに厳しくなると見られる。その結果、児童施設であるにもかかわらず18歳以上の利用者が残り続け、18歳未満の障害児の利用も困難になっていくという可能性もあり、スムーズに過齢児の次の進路が見つかるような方策が必要と思われる。
また、次の進路が決まった18歳以上の障害者についても、20歳まで障害年金が支給されない為、それまでの経費負担が増大するケースもある。特に就労が困難な障害者の場合は保護者の経済力が頼りとなってしまう。
対象外障害者問題
「障害者自立支援法」と言えども全ての障害者が対象では無く、現段階では三障害(身体・知的・精神)のみである。この三障害に該当しない人達、発達障害・情緒障害等の人達で、単一障害者は支援されないケースが目立つ。三障害以外の人達で重複障害がある人は適用となるが、現在、対象外にも支援の手を差し伸べて欲しいと、障害者団体を通じ国に働き掛けをしている所である。
以上のような問題点がある為、2006年秋の第165回国会には、民主党から、自己負担1割の凍結を柱にした改正案が提出され、地方自治体や地方議会からも、見直しを求める意見書の提出も相次いでいる。更に、法案に賛成した障害者中央5団体も、大幅な見直しを与党に要求するに至っている。これらを受けて、2006年11月下旬には、与党の自民党・公明党が利用者負担の見直しに合意する等、10月の本格施行から2ヶ月を待たずして、障害者自立支援法は大幅な見直しが行われる見通しとなった。 2006年12月1日には自民、公明両党は増大する負担軽減のため、2008年度末まで1200億円の予算請求をすることで合意し、障害者だけではなく経営環境が厳しくなった事業者等の支援にも充てられる。 しかし、両党は障害者自立支援法そのものの見直しを行う気はないとしており、問題点は根本から解決に向かうわけではない。
障害児入所施設においては児童福祉法の改正に合わせ、2006年10月1日より同法の適用となった。それ以前は児童相談所が入所が適当がどうか判定していたのだが
保護者の経済的な理由、家庭の事情(保護者に養育能力がない)
家庭での養育を続けた場合、親子関係の維持が困難になる
当該児の障害が重い
養育できる(すべき)人がいない
当該児に虐待、ネグレクト(育児放棄・養育放棄)の疑いがある
等の理由のため「家庭での養育が困難」として、入所判定が出た児童は全員「措置入所」という扱いを受け、児童福祉の観点から入所にかかる費用、学校教材費、医療費がほぼ無料であった。しかし、同法適用に伴い、児童相談所の再判定により「措置継続」と「契約利用」に分かれた。契約利用においては成人施設同様、利用料を払っての入所となり、医療費等も原則負担となる(自治体によっては補助、あるいは指定病院は無料という形もある)。同一施設内で同じように暮らしているにもかかわらず、医療費も含め利用料を払わざるを得ない家庭と払わなくてもすむ家庭が混在することに両者の軋轢、職員の予算執行に関わる職務の増大が懸念される。また、デイサービスなど施設利用、あるいは何らかのサービスを受けている在宅障害児においても負担が増えた。
また、措置の基準が厚生労働省より示されているものの明確ではなく、結果、判断する児童相談所の多くが当該児との面会や家庭環境調査等を行わず措置と契約に分けたため施設、保護者の混乱や判定のバラつきが見られる。
そもそも所得がなく、保護者による「保護」が必要な児童全般において、障害児も障害者と同じように利用の際は対価を支払うという自立支援法の枠組みに組み込まれ、「自立」を促されるようになった(2006年10月1日の児童福祉法改正により、児童福祉施設の中で障害児施設のみが入所にかかる実費負担が必要になった)というのは児童福祉の観点から大きく逸脱するものとして関係者から非難の声が上がっている。
虐待、ネグレクトされている疑いのある児童の場合、措置継続になる可能性が高いが、その一方、熱心に保護者が面会・外泊など行い、施設入所させているものの非常によくコンタクトを取る家庭であっても契約利用となっている。子供に対し無関心な親は無料で、真剣に考えている親は有料であることに不公平感が生じるケースもある。こうした問題点から「児童福祉の理念に反している。障害児は児童じゃないのか。」等の声が現場関係者、保護者から挙がっている。
もっとも、入所児童の利用負担に対し、以前は保護者の経済力、家庭の状況に関わりなく利用費、医療費、学費がほぼ無料であったことから、在宅で障害児を看ている家庭からすると負担面で相当優遇されていたことから、(不本意な形とはいえ)ある程度是正されたという見方も出来なくはない。
過齢児の問題
障害児施設は児童福祉施設であり、18歳以上(慣例として高校・高等部卒業まで、通所利用の場合は大抵18歳になった時点で利用出来なくなるケースが多い)の継続入所が原則認められていないのだが、成人施設が見つからない等、次の進路が決まらない場合、暫定的に継続して入所サービスが受けられる。そのような「過齢児」は少なくなく、施設によっては大半を過齢児が占め、児童施設として成り立たないでいる所もある。児童施設では平日日中は学校があるため、職員の配置を薄くしているが、加齢児がいることで児童・加齢児双方の支援体制が十分に取れなくなってしまうケースがある。
同法成立により、入所サービスを受ける基準が厳しくなった為、過齢児の次の進路決定がさらに厳しくなると見られる。その結果、児童施設であるにもかかわらず18歳以上の利用者が残り続け、18歳未満の障害児の利用も困難になっていくという可能性もあり、スムーズに過齢児の次の進路が見つかるような方策が必要と思われる。
また、次の進路が決まった18歳以上の障害者についても、20歳まで障害年金が支給されない為、それまでの経費負担が増大するケースもある。特に就労が困難な障害者の場合は保護者の経済力が頼りとなってしまう。
対象外障害者問題
「障害者自立支援法」と言えども全ての障害者が対象では無く、現段階では三障害(身体・知的・精神)のみである。この三障害に該当しない人達、発達障害・情緒障害等の人達で、単一障害者は支援されないケースが目立つ。三障害以外の人達で重複障害がある人は適用となるが、現在、対象外にも支援の手を差し伸べて欲しいと、障害者団体を通じ国に働き掛けをしている所である。
以上のような問題点がある為、2006年秋の第165回国会には、民主党から、自己負担1割の凍結を柱にした改正案が提出され、地方自治体や地方議会からも、見直しを求める意見書の提出も相次いでいる。更に、法案に賛成した障害者中央5団体も、大幅な見直しを与党に要求するに至っている。これらを受けて、2006年11月下旬には、与党の自民党・公明党が利用者負担の見直しに合意する等、10月の本格施行から2ヶ月を待たずして、障害者自立支援法は大幅な見直しが行われる見通しとなった。 2006年12月1日には自民、公明両党は増大する負担軽減のため、2008年度末まで1200億円の予算請求をすることで合意し、障害者だけではなく経営環境が厳しくなった事業者等の支援にも充てられる。 しかし、両党は障害者自立支援法そのものの見直しを行う気はないとしており、問題点は根本から解決に向かうわけではない。