「地震直後も状況を把握できず後片付けを続けた」「災害や避難の情報は音声中心。情報格差に悩まされた」。障害者たちは被災直後の様子を、こうつづっている
▼全日本聾唖(ろうあ)連盟などが参加する東日本大震災聴覚障害者救援中央本部(東京)がまとめた報告書にある。編集作業に携わったのは、秋田市土崎出身で同連盟常任理事・事務局長の久松三二(みつじ)さん(58)
▼報告書は障害者の死亡率が通常の2倍に上っていると指摘。情報アクセスの必要を説き、被災地による救援態勢の差も浮き彫りにした。「手話通訳や相談員の派遣は現地の依頼次第。大災害では地元の行政に余裕がない」と久松さん
▼先月は米国も訪れた。視察先の一つが連邦緊急事態管理局。先の米大統領選でロムニー候補が規模縮小を唱えた組織だが、選挙終盤で米国を襲ったハリケーンの救援活動でフル稼働。オバマ大統領を優位に押し上げた
▼久松さんは同局障害担当部責任者の説明に衝撃を受けた。災害発生後72時間は連邦が支援して州に引き継ぐが、障害者支援だけは連邦が継続。今後は手話通訳ら75人の障害者対応班を12時間以内に派遣、字幕電話など障害者と意思疎通できるタブレット型コンピューターも携帯するという
▼災害が相次いだ1970年代、各部局に分散する緊急対応機能を統一し同局は発足した。「縦割りの発想ではできない」と久松さん。行政横断的な組織を動かし政治の意思を実現する姿に、彼我の違いを痛感する。
(2012/11/27 付)秋田魁新報