耳からの情報に頼る視覚障害者のために、風の騒音を小さくする帽子や耳当ての制作を、元秋田高専教諭で工学博士(超音波工学)の茂木良平さんらが中心となり進めている。17日には秋田高専で風洞実験を実施。6人中5人で効果を確認した。来月は海沿いに吹く風の中で実験する予定で、実用化に向けステップアップを図る。
視覚障害者は日常生活を送るのに必要な情報の多くを音によって得ているが、風が強いと周囲の状況が把握しづらく危険で、本人も不安になる。このため、県立盲学校教諭の佐藤均さんが茂木さんに風の音を消せる装置を作れないかと相談したのをきっかけに開発がスタート。県が実施する今年度の医工連携フィージビリティスタディ(実現可能性調査)委託事業にも採択された。
茂木さんによると、風の音は、額や鼻など顔の出っ張った部分に風が当たり渦ができることによる2次発生音▽風が耳の穴に入ることによる気流進入音▽耳に風が当たることによる振動による骨導音−−の3種に分けられる。試作した帽子は、人工毛皮の繊維で渦を打ち消したり、耳から頬まで布で覆うことで骨導音を減少させるなどの工夫が凝らされている。
秋田高専で17日実施した風洞実験には、視覚障害者3人と秋田高専の学生3人が参加。風洞を風速10メートルに設定し、ラジオの音量を内容までは把握できない大きさにして流した。しかし、帽子を着用すると、6人中5人が風の中でラジオの内容を把握することができたといい、風音を少なくする効果が確認された。実験に参加した秋田市の視覚障害者10+件、佐々木達夫さんは「雑音が少なくなり、効果がある。いつも通勤時に音響信号を渡るが、ビル風や強風の日は聞こえにくい。耳からの情報は大切だ。聞こえないと不安になるので助かると思う」と評価した。
機能だけでなくデザインにもこだわった。男鹿市の帽子製造会社の菅原圭位社長らが協力。菅原さんは「機能性とデザイン性のバランスに苦労した。かぶりたいと思えるようなものを作りたい」と話す。これまでに100個以上の試作品を作ったという。
茂木さんらは12月15日に秋田市の秋田マリーナで海風を使って実験する。効果が確認されれば商品化を目指すという。
毎日新聞 2012年11月24日 地方版
視覚障害者は日常生活を送るのに必要な情報の多くを音によって得ているが、風が強いと周囲の状況が把握しづらく危険で、本人も不安になる。このため、県立盲学校教諭の佐藤均さんが茂木さんに風の音を消せる装置を作れないかと相談したのをきっかけに開発がスタート。県が実施する今年度の医工連携フィージビリティスタディ(実現可能性調査)委託事業にも採択された。
茂木さんによると、風の音は、額や鼻など顔の出っ張った部分に風が当たり渦ができることによる2次発生音▽風が耳の穴に入ることによる気流進入音▽耳に風が当たることによる振動による骨導音−−の3種に分けられる。試作した帽子は、人工毛皮の繊維で渦を打ち消したり、耳から頬まで布で覆うことで骨導音を減少させるなどの工夫が凝らされている。
秋田高専で17日実施した風洞実験には、視覚障害者3人と秋田高専の学生3人が参加。風洞を風速10メートルに設定し、ラジオの音量を内容までは把握できない大きさにして流した。しかし、帽子を着用すると、6人中5人が風の中でラジオの内容を把握することができたといい、風音を少なくする効果が確認された。実験に参加した秋田市の視覚障害者10+件、佐々木達夫さんは「雑音が少なくなり、効果がある。いつも通勤時に音響信号を渡るが、ビル風や強風の日は聞こえにくい。耳からの情報は大切だ。聞こえないと不安になるので助かると思う」と評価した。
機能だけでなくデザインにもこだわった。男鹿市の帽子製造会社の菅原圭位社長らが協力。菅原さんは「機能性とデザイン性のバランスに苦労した。かぶりたいと思えるようなものを作りたい」と話す。これまでに100個以上の試作品を作ったという。
茂木さんらは12月15日に秋田市の秋田マリーナで海風を使って実験する。効果が確認されれば商品化を目指すという。
毎日新聞 2012年11月24日 地方版