大阪市淀川区の障害者支援施設「だんけのそのポレポレクラブ」の絵画クラブのメンバーらが25日から、十数年にわたり指導を受けていた恩師が運営していたギャラリーで展覧会を開く。恩師は3年前に亡くなり、ギャラリーも今年暮れに閉館する。絵画クラブのメンバーにとってギャラリーでの展覧会は今回が最後で、メンバー9人が懸命に作品の仕上げにかかっている。
展覧会は、「アール・ブリュットの新しい星たち」と銘打ち、兵庫県西宮市の「ギャラリーアライ」で開催。アール・ブリュットとは「生(き)の芸術」という意味のフランス語で、障害者を含め美術の専門教育を受けていない人たちが既存の表現方法にとらわれない自由でユニークな発想の芸術。
同施設では約20年前からギャラリーアライのオーナーの荒井洋一さんを顧問に迎え、毎週土曜日に施設内で絵画クラブを開催。荒井さんはメンバーたちが自由に描く姿を見守った。その活動の中から産経新聞厚生文化事業団の障害者の公募展「産経はばたけアート公募展」などで入賞者を出してきた。しかし3年前の10月、荒井さんは61歳で亡くなり、今年12月には閉館することに。現在は、銅版画家の二口圭子さん(67)とクラフト作家の吉屋慧実子(えみこ)さん(66)らが、荒井さんの遺志を継ぎクラブのメンバーを指導している。
絵画クラブは現在、障害者支援施設に入所する20~60代の男女10人。このうち男女9人が1点ずつ出品し、鉛筆やパステルなどで描いた幾何学模様や線、点などを駆使した抽象画を展示する。一方、今年1月に67歳で亡くなったメンバーで、「産経はばたけアート公募展」などで入賞歴がある友近修さんの「ボタン」など、フェルトペンの作品も複数並べる。友近さんの作品は、希望者に展覧会後、贈呈されるという。
また、二口さんが教える箕面市の障害者の絵画グループ「ミントアンサンブル」の8人の絵と、吉屋さんが指導する和泉市の障害者支援施設「太平」の工芸クラブ員が制作したタペストリーもあわせて展示する。
絵画クラブがある「だんけのそのポレポレクラブ」施設長の桑田英治さん(33)は「障害のある人たちは、社会的に認められることが少ないが、アートはその可能性があふれる世界。独特の発想の作品を多くの人に見てほしい」と話している。
7月5日まで。水曜休廊。問い合わせはギャラリーアライ(電)0798・42・2263。
2015.6.23 産経ニュース