児童相談所が把握した子ども買春や子どもポルノの被害者の3人に1人が知的障害や発達障害などの何らかの障害があるか、その境界域とみられることが厚生労働省の調査でわかった。被害者の2割は未就学の子どもと小学生が占めた。障害を抱える子どもたちへの性的搾取のリスクが高く、被害が低年齢者に広がっていることが浮き彫りになった。
児相がかかわる子どもたちの性的搾取の被害について調べたのは初めて。
調査は、厚労省の「児童相談所における児童買春・児童ポルノ被害児童への対応状況に関する調査研究事業研究会」(委員長=湯沢直美・立教大教授)が2月、全国の児童福祉司2934人を対象に実施。昨年4~9月に対応したケースのうち買春やポルノの被害が含まれているものを集計した。回収率は78・3%。
調査によると、被害者は計266人。9割超が女の子だった。年齢は13~15歳が43・6%、16~18歳が33・5%を占めたが、6~12歳が18%、1~5歳も6人いた。買春が59%、ポルノが31%、買春とポルノの複合被害が10%だった。
児相の判定などによるとうち31人が「知的障害」、28人が「発達障害」で、36人は「(明確な遅れがあるとまでは言えない)知的境界域」だった。障害が重複している子どももおり、合計の人数は90人だった。
生活課題や取り巻く環境をみたところ、64・7%が「親子関係が不調」で、43・6%の子どもが「家出や無断外泊」をしていた。不登校も27・4%あり、「ひとり親家庭」は36・1%を占めた。
被害の実態は、買春の場合、性交やその類似行為が8割超で、対価は7割近くが金品、23・9%は「宿泊」だった。ポルノの撮影者は「家族」が最も多く、3割近くを占めた。本人の同意がなく他人に撮影されたケースは4割近くあったが、「自らの意志で自ら撮影した」が25・9%、「本人が同意して他人に撮影された」も23・1%あった。
湯沢教授(社会福祉学)は「被害児童に障害のある子どもが多いのは、声をかけやすいと見ているなど加害者側の問題があるだろう。家出や無断外泊は子どものSOS行動のひとつと考えられ、家の外でも安全に過ごせる場所が必要だ。こうした子どもたちにこちらから出向いて支援できる仕組みが求められる」と話している。