いわき市の磐栄運送(村田裕之社長)は7月にも、同社倉庫を活用した、野菜の水耕栽培事業を開始する。運送会社が野菜栽培事業に参入するのは全国でもあまり例がないといい、村田社長は「今後、空き倉庫が増加する状況になった場合のモデルケースになれば」と話している。
これまで建築資材などを保管していた倉庫を活用する。保管されていた資材は別の場所への移動を完了している。これまで東日本大震災による復旧、復興事業による「特需」により、運送業務が多忙だったが、村田社長は「今後その状況が続くとは限らない」と分析、事業開始に踏み切った。
現在、同市南台の同社勿来営業所近くに工場を建設中で、今月末ごろに完成する予定。敷地面積は約1050平方メートル。生産能力は、1日当たり70グラムのフリルレタス約2700株を出荷できる規模という。計画ではレタスのほか、バジルなども栽培する。工場稼働に伴い、新たに地元を中心に8人の雇用を見込んでおり、そのうち2人は障害者の雇用を予定している。野菜出荷の際、取引先への配送にかかるコストは、運送会社の利点を生かし低減する。
同社は事業開始の理由として、高齢化したドライバーの長期雇用や、システム化が容易であることから、雇用を生み出しやすいことなどを挙げる。村田社長は「高齢になり、運転手としての業務が難しくなった社員でも、新たに携わりやすい事業」として、野菜栽培事業に期待を寄せる。
安定した運用を目指すため、農事組合法人和郷園や、水耕栽培設備メーカーの指導の下、事業をスタートさせる。村田社長は将来的には事業の拡大も視野に入れている。本県の農産物などが原発事故による風評被害の影響を受けている中、「いわきブランドの構築にも貢献できれば」と青写真を描く。また、磐城農業高との連携も視野に「野菜栽培について共同研究などにも挑戦していきたい」と話した。
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