赤いフルフェースのヘルメットをかぶった男は、刃物を振り回して子どもたちを追い掛け回した。31日に大分県宇佐市の「四日市こども園」で学童保育中に起きた事件。職員2人が次々と切り付けられ、男児も殴られた。子どもたちは四方に逃げ惑い、普段は笑い声であふれる園庭に悲鳴が響いた。
「不審者、不審者」。午後3時20分ごろ、園に一斉放送が響いた。男が刃物を持ち、今にも窓ガラスを割ろうとしている。職員の一人が「落ち着いて」と話し掛け、注意を引く間に子どもを非常口から逃がした。
向かいの障害者福祉施設「ほろんの郷四日市」には血だらけの職員2人が飛び込んできた。「助けてください」。障害者施設の職員3人がほうきを手に園へ向かう。そこで見たのは刃物を振り回す男の姿だった。
男は園を出て障害者施設の敷地にも侵入してきた。自転車に乗ろうとしたが、職員から車輪に棒を突っ込まれて転倒。取り押さえられそうになると刃物を突き付けるように威嚇し、塀を乗り越えて逃げたという。
「相模原の事件が頭をよぎった。怖かったが、利用者を守ろうと必死だった」。障害者施設の副責任者の男性(55)が緊迫した状況を語った。
子どもたちは園を飛び出し、障害者施設や果樹園に逃げ込んだ。約100メートル離れた酒店にも20人ほどが駆け込んできた。「先生が切られた」「怖い、怖い」。身を震わせる子、恐怖で立てない子。酒店の女性(87)は「恐ろしくて夢中でシャッターを閉めた」と声を震わせた。
現場は静かな住宅街。地元の自治会長(70)によると、数日前に不審な男が夜中にうろつく姿を住民が目撃していたという。
果樹園の従業員の男性は午後4時ごろ、こども園から約300メートル離れた宇佐道路の四日市インターチェンジ付近で4、5人の警察官に覆いかぶさられている男の姿を目撃した。県警は銃刀法違反容疑で無職射場健太容疑者(32)=宇佐市四日市=を現行犯逮捕した。パトカー十数台が集まり、住宅街は騒然。男性は「顔見知りも多い場所。こんな事件が起きるなんて」と驚いた様子で話した。
刃物などを持った男が侵入した「四日市こども園」の周辺で規制線を張る県警捜査員ら
=2017/04/01付 西日本新聞朝刊=