障害者が考えていることを知ってもらおうと、峡東地域の障害者のグループ「障がい当事者団体みのあか峡東支部」が、本音を伝えるカルタを作った。「『普通できるでしょ』で片づけないでほしい」など、気になっていても口にできない本音を障害者約40人が出し合い、2年半をかけて「あ」から「ん」まで46枚にまとめた。各市町村や峡東地域の小中学校などに配ることにしている。
峡東地域のグループ作製
同支部は2007年から、毎月第4日曜日に、山梨市上神内川の山梨市地域交流センターで会合を開いている。毎回、体や心などに障害のある30人ほどが集まり、身近なできごとや気になったことを自由に発表していて、中には、不快な思いをした体験を話す人もいた。
障害者向けのグループホームなどを運営する社会福祉法人三富福祉会(山梨市)の職員で、会合に参加している吉村純さん(43)は、「会合で不満を言っているだけでは、いつまでたっても障害者の気持ちを理解してもらえない。気持ちを伝えるカルタを作っては」と提案。会合に参加した人たちは、14年春から、思っていても口にできないでいることを出し合い、カルタにする言葉をまとめた。
同支部代表で、脳性まひのために車椅子を使う中村安孝さん(38)は、買い物中に知らない人から「大変だね、頑張れ」と声をかけられたことがあり、「なぜ障害者だけが頑張らないといけないのだろうか」という疑問から「楽する権利も認めて下さい」というカルタを作った。また、車椅子で電車に乗ると、乗客から迷惑そうな目を向けられた経験から「笑顔で接して下さいね」「偏見の目を持つ前に、私たちのことをよく知って下さい」というカルタが生まれた。
カルタは横7センチ、縦10センチ。イラストは、南アルプス市出身で北海道旭川市に住むイラストレーター、三井ヤスシさんに依頼し、印刷所で作製した。「できないことはできません」のカルタには、車椅子に乗った男性が「無理」と書いた紙を掲げるイラストが描かれている。
中村さんは「親しい人や支援してくれる人に対しても、『考えていることを口にしたら関係が悪くなってしまう』と考えて、言えないことが多い。私たちの気持ちを少しでも知ってもらえるとうれしい」と話している。
「一般の人も支援してくれる人も、カルタで私たちの本当の思いを知ってほしい」と話す中村さん(中央)
2017年4月7日 読売新聞