大分県内の障害のあるアーティストを一般企業やデザイナーらに紹介し、作品を広く商業利用してもらう仕組みを大分市内の民間デザイン会社が構築している。障害者アートには見る人の心を打つ力のある作品が多い一方で、自らPRすることがなく、その才能は埋もれがち。魅力を広く発信し、仕事につなげようと取り組む。 市内のデザイン事務所「カスガデザインルーム」の古庄優子代表が立ち上げた事業「アートストレージ」。「芸術作品の保管場所」という意味で、2014年から主に知的障害のある作家の作品データを預かり、有償で提供している。
現在、県内在住の10~60代の8人が所属。作家によっては新規の創作依頼の仲介なども行う。作品に興味を持っても、誰を通じて仕事を依頼すればいいか分からないといった問題を解消し、これまでに会報誌やチラシの挿絵、テレビ番組のロゴデザイン制作といった仕事につないだ。著作権利用料などとして作家に還元する。
古庄さんは、県内の障害のある作家たちによる絵画展「元気のでるアート!」の広報のためのグラフィックデザインの仕事を受けた縁で、「アールブリュット」に感銘を受けた。アールブリュットとは、専門的な美術教育を受けていない作家が他者を意識せずに創作したアートのことで、「生の芸術」という意味のフランス語。古庄さんは「福祉や障害については専門外だが、アートへのリスペクトを大切に作家とつながっている」と話す。 ホームページでの紹介のほか所属作家の作品展も開き、魅力をPRしている。「印刷物だけでなく、テキスタイルや服飾、グッズなど活用方法はまだまだあると思う。それぞれの作品の特長を生かせるよう、各分野のデザイナーとも連携し価値を高めていきたい」としている。
問い合わせは☎097-538-2356。
※この記事は、10月10日大分合同新聞朝刊17ページに掲載されています。