グループホームには様々な工夫が
2019年1月、新潟市江南区に新たに完成した1軒のグループホーム。 その生活の様子を覗いてみると。 NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; 皆さん、楽しそうに団欒をされていますが、会話は手話です
利用者同士で交わされる、手話による会話。 テレビ番組も字幕で楽しむ。 県内では初めてという、聴覚に障害がある人のためのグループホーム「かめこや」。 施設の中には様々な工夫が施されている。
ピンポン♪(玄関の呼び鈴)
NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; あ、呼び鈴が鳴らされると光るんですか?
音だけでは訪問者に気付かないことから、光で知らせるインターホンに。
NPO法人にいまーる 臼井千恵理事長; 元々は、押し引きする開閉するドアになっていたが、ろう者の場合はドアの向こうに誰かがいてもわからないんですね。足音も聞こえないので
扉は、足音が聞こえないことでぶつかってしまわないようスライド式にしたほか、向こうが透けてみえる「すりガラス」を使っている。
ここに入居するのは、例えば耳が聞こえない中、家族が亡くなって単身での生活に困るなど、それぞれに事情を抱えた人たち。
NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; ここでの生活は快適ですか?
木村良さん; 快適です
入居者の一人、木村良さん(42)。 ここで生活しながら、日中は「かめこや」を運営するNPO法人が以前から運営している就労支援施設で、自転車でのメール便の配達などに従事している。
木村良さん; メール便の配達の時に、お客さんにありがとうと言われたり、飲み物を頂いたりするときもあるので、それがうれしい
施設に集まる人の聞こえない度合いは様々。 その中で、木村さんの聴覚障害の程度は比較的軽いもの。 しかし、これまでには辛い経験をしてきた。
木村良さん; いじめられたこともあった。ショックでした
静かな所での1対1の会話はなんとか聞きとれるものの、複数人が話している場では聞き取りができないことから、「聞こえないふりをしているのではないか」と理解のない言葉を投げかけられ、傷ついた事があるという。 見た目には障害がわかりづらいことから、「見えない障害」とも言われる聴覚障害。 施設を運営するNPO法人の理事長で、自らも聴覚障害を抱える臼井千恵さんは、そうした現状が、聴覚障害者向け施設の整備が進まない理由でもあると話す。
NPO法人にいまーる 臼井千恵理事長; 聞こえないことで、どんな事で困っているのかという部分が一般社会の中ではピンとこないので、グループホームなどの施設が必要という認識がまだまだ広がっていない
VR体験で「見えてきた」こと
では、一体聞こえない世界とはどのようなものなのか。 先日、新潟市中央区で開かれた催しで用意されたのはバーチャルリアリティ、いわゆるVR。 ヘッドホンなどの機材を装着した参加者の目の前に広がるのは、日常の風景。 しかし…
NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; 道路をゆっくりと歩いています。 お!車が後ろから急に追い抜いて行きました。かなり近かったが、通り過ぎるまで気付かなかった
これは、聴覚障害がある人にとって日常の音がどのように聞こえているのかを再現しようと開発されたDeaf VR 。 急に至近距離を走り抜いて行った車だが、健聴者の場合、こう聞こえている。
ビーッ♪(車のクラクション)
NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; 車はクラクションを鳴らしていたんですね
聴覚障害者は、音の大きさ・高さによってほとんど聞こえなかったり、こもって聞こえたりする。 続いて、家族で囲む食卓の一幕では…
NST新潟総合テレビ 杉本一機キャスター; 何を話しているのかわからないですが、家族はみんな盛り上がっています。 ちょっと会話に入っていけない、さみしさ、孤独感みたいなものが …。
なんとなくの音は聞こえるものの、わからない会話内容にこみあげる疎外感。 実際には、家族でこんな会話がかわされていた。
娘)きょうドッジボールで勝ったんだよ 父)すごいね何人に当てた? 娘)3人に当てたんだ 父)やっぱりパパの子だ
今回この体験会に参加した多くは、周りに聴覚障害者がいる人たち。
参加した女性A; 周りの音が何もないというのは、すごく怖いことだと感じた
参加した女性B; 生活の中で一緒に楽しめないという気持ちを、初めて知りました
開発した企業の担当者は、聴覚障害への理解が進んでいるとは言えない中、まずは聴覚障害者がどんな世界で生活しているのかを、健聴者が知ることが第一歩だと話す。
シー・エヌ・エス 牧村正嗣さん; こういう世界に住んでいる人がいるんだというのを知ってほしい。知っているのと知らないのとでは大きく違うと思うので、とにかく知ってほしい
技術の進歩とあいまって、少しずつ高まりつつある障害の理解に向けた機運。 グループホームを運営する臼井さんも、障害者が生活しやすい社会のために求めることは特別なことではないと話す。 NPO法人にいまーる 臼井千恵理事長; 聞こえない人と会った時に、聞こえる人が『聞こえない?(ならば)逃げる』と言うのではなくて、『わかりました、通じない、じゃあどうしよう、筆談がいいかな、ボディランゲージで使った方がいいかな』とか色々想像力を働かせてもらえれば、私たちはすごく助かる。聞こえる人の歩み寄りと、聞こえない人の歩み寄りと、お互いに歩み寄ることが大事
NST新潟総合テレビ