♪まっすぐ歩いていこう たまには道草して休もう
岡山放送開局50周年の記念ソング「みらいのとちゅう」。 2019年現在、テレビやインターネット上でミュージックビデオを公開しているが、実はこのダンスには「手話」が取り入れられている。
岡山放送 篠田吉央アナ(手話リポ); 手話ダンスに参加する女の子が、こちらの岡山聾学校にいます。
中学部1年の天野七夏さん(13)。 生まれつき重度の難聴で、両耳に人工内耳をつけて生活しているが、岡山市内の小学校卒業後は、ろう学校に通っている。
(Q.今、手話の勉強をしていますか?) 天野七夏さん; 友達に手話を聞いて覚えて、みんなで話す時に使っています。
周りが騒がしくなければ大体のことが聞き取れるため、これまでは手話を使っていなかったが、コミュニケーションの幅を広げたいと、ろう学校入学後から手話を学んでいる。
天野七夏さん; もっと色んな手話を覚えたい。
総社市の小学6年、吉井優芽さん(12)も現在、手話を勉強中だ。 吉井さんも生まれながらの重度の難聴で、両耳に人工内耳をつけているが、2019年夏から手話を学び始めた。
吉井さんは時には兄弟にも、手話でのあいさつなどを教える。
吉井優芽さん; 七夏ちゃんは手話がとてもうまいが、自分は全然できないので、追いつけるように夏に勉強に行きました 。
実は、2人の共通の趣味はダンス。 2年前からユニットを組んで、これまでにも様々な舞台で披露している。
ダンス中は、耳につけた音を拾う機械が外れてしまうため、片耳のみ装着。このため、聞こえる程度も大幅に悪くなるという。
ダンスの先生; これぐらいで聞こえる?聞こえづらい?
天野七夏さん; レッスンの時つけているクーラーの音がすごくて、音が聞きづらい。
リズムをつかむことはもちろん、動くタイミングを合わせるのも一苦労。
吉井優芽さん; 音の振動でもわかるので、(感じて)合わせている。
一方で、歌の振り付け作りは2019年2月から始まっていた。 歌詞に込めた思いを、ろう者が聞き、手話で表現。それをもとに、ダンススクールの講師が振り付けを考える。
岡山県聴覚障害者福祉協会 佐藤美恵子事務局長; (タイトルの)「みらいのとちゅう」とはどんな意味ですか?
作詞を担当した石田康成さん; 「みらいのとちゅう」イコール「今」。一番新しい時代は「今」なんです。新しい時代はずっと続いていく。
手話は、言葉の意味をくみ取って形にする。 歌詞の「新しい時代」は、今が続いて未来につながると解釈し、「時代」を時刻などの「時」と表すのではなく、「時の流れ」として表現した。
手話通訳 大岡政恵さん; (この動きは)流れを意味する。
岡山放送 篠田吉央アナ; (意味をくみ取って)形にするのが、手話の言葉。
マコトダンスカンパニー 今川誠代表; なるほど、それで理解できました。
この他にも…
岡山県聴覚障害者福祉協会 手話対策部 庄田正子部長; 「出会い」は、1対1ではなくて色んな人と会うので、(手話で)何回も出会うと表現する。
そして、この手話を音楽に合わせると…
♪新しい時代がやってくる 新しい出会いもやってくる
マコトダンスカンパニー 今川誠代表; (手話表現の)本当に伝えたい意味を感じられたのが楽しかった。
ダンスも完成し、天野さんと吉井さんも早速、練習開始。覚えたばかりの手話も使われていて何だか嬉しそう。
天野七夏さん; (指文字で)「せ」「と」
マコトダンスカンパニー NARUMIさん; この指で「せ」「と」なんだ。
岡山放送 篠田吉央アナ(手話リポ); こちらでは、本番に向け全体での練習が行われています。
初めて顔を合わせるメンバーと踊る、今回のダンス。 吉井さん、コミュニケーションが上手く取れず、タイミングも合わない。
そんな中、打ち解けるきっかけとなったのも手話だった。 休憩中に手話について話が弾み、健常者のメンバーも手話への理解が深まったようだ。
健常者メンバー; 「笑顔」という手話をすると、自然と笑顔になる。
健常者メンバー; こういう伝え方もあるんだと、新しい発見になった。
そして収録日。 最後のリハーサルには、手話表現を考えたろう者も立ち合い見守る。
岡山県聴覚障害者福祉協会 佐藤美恵子事務局長; 手話だけでなく、口の動きも読み取れてよかった。
いよいよ本番。
♪まっすぐ歩いていこう たまには道草して休もう
屋外のため音が聞こえづらい部分もあるが、サビの部分も息ぴったりだ。♪新しい時代がやってくる 新しい出会いもやってくる 待ってるばかりじゃしょうがない さぁ迎えにいこう
撮影スタッフ; はい、OKです!
無事、成功を収めた。
天野七夏さん; (手を)大きく動かすのを一番頑張った。
吉井優芽さん; 聞こえなくてもダンスなど色々できるのを、(これからも)みんなに伝えたいと思う。
聴覚障害者と健常者がともに作り上げた手話ダンス。 その手の動きには、踊りの振り付けを越えたメッセージが込められていた。
(岡山放送)