ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

「重度訪問介護(重訪)」

2019年10月17日 16時18分52秒 | 障害者の自立

 重い障害のある人の自宅に公費でヘルパーを派遣する「重度訪問介護(重訪)」は、地域で自立した生活を送る障害者を支えるが、報酬単価が低いために提供する事業所が限られ、十分なサービスを受けられないケースも多い。大学で学ぶ利用者の通学などを公費で支援する制度も始まったが、事業所不足で、通学を含めた介助が家族頼みの人もいる。

 「利用する権利があるのに、なぜ使えないのか」

 九月中旬の夜、名古屋市中区の日本福祉大大学院で開かれたゼミ。ゼミ生で、全身に重い障害のある中山圭子さん(64)=同市緑区=が自らの体験を基に、重訪を使えない現状を訴えた。

 中山さんは十二年前から、全身の筋肉に強い痛みが出る原因不明の病気「線維筋痛症」などを患う。体を動かしたり、歩いたりすることが難しくなり、六年ほど前に身体障害者一級の認定を受けた。

 重訪は障害者総合支援法に基づき、障害者が利用できるサービスの一つ。常時介護が必要な障害者を対象に、自宅に派遣されたヘルパーが食事や排せつ、入浴など生活全般を介助する。

 各市町村が利用者の状況などを調べて介護を支給する時間を決定。中山さんは一日約五時間使える。だが、実際はこの一年半、全くサービスを利用できていない。介護はもっぱら、夫の貞夫さん(65)が担う。

 貞夫さんが仕事で不在になる日中、中山さんはベッドの上で一人きり。障害者福祉の研究をするために今春から同大学院に通うが、週三回の夜間のゼミや講義には仕事を終えた貞夫さんが車で一時間ほどかけて送迎。講義にも同席し、トイレや薬の服用を介助する。

 重訪の対象者らは、昨年から市町村の事業で通学などにヘルパーを利用できるようになった。中山さんも利用できる可能性がある。

 だが、そもそも重訪に対応してもらえる事業所が見つからない。これまで二つの事業所に依頼したが、家事の仕方や利用時間で条件が合わず、断られた。中山さんは病気の関係で物音などに敏感だ。そのため、ヘルパーに配慮が求められることも多く、事業所と折り合いが付きにくいという。

 厚生労働省によると、重訪の利用者はここ数年一万一千人ほど。国は、障害者の暮らしの場を施設から地域へ移す施策を進めており、重訪はよりどころだ。

 だが、中山さんのように対象者になっても使えない人は少なくない。京都府立大の中根成寿(なるひさ)准教授(42)=障害学=が、二〇一三年二月時点で利用者が二百人以上いる八都道府県の百三十四市区を対象に支給決定したサービス時間と実際の利用時間を調べたところ、消化率は平均約七割だった。

 利用が進まない理由の一つが事業所不足だ。厚労省が一八年度、在宅の障害者向けの事業所千八十三カ所に実施した調査では、ほぼすべてが居宅介護を提供するのに対し、重訪もできる事業所は約七割。重訪専門はわずか0・4%だった。

 参入が進まない大きな要因が報酬単価の低さ。重訪は長時間のサービスに対して報酬が支払われるため一時間あたりの単価は低く、通常の居宅介護の半分の約二千円にとどまる。

 中根准教授によると、地方では重訪の事業所がない地域もあり、サービス提供のめどが立たず、支給自体を認めない自治体もあるという。「住み慣れた場所で自立した暮らしを望む障害者が取り残されない対策が必要」と指摘する。

2019年10月16日        中日新聞

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<障害者のきょうだいたち 広がる支え合いの場> (中)母とすれ違う思い

2019年10月17日 15時57分29秒 | 障害者の自立

 障害者の兄弟姉妹の交流会「きょうだい会@Nagoya」を、四月に名古屋市で始めた戸谷知弘(かずひろ)さん(34)。母洋子さん(69)は十六年前、知弘さんが通っていた北海道の全寮制高校で聞いた、担任の言葉が忘れられない。

 「知弘さん、苦労してますね」。その時は、どういう意味なのか分からなかった。「一番大変なのは私、と思い込んでいたから」と洋子さんは言う。

 夫が早くに亡くなったため、一人で子どもを育ててきた。知弘さんの七つ上には、重度の知的障害と自閉症の匡志さん(41)がいる。目を離すと、金属などの異物をのみ込んだり、興味を持った物に突進したりと行動が予想できない。公的な支援が今ほどはない当時、家庭は当然、匡志さんが中心だ。暴れることもあるため、そのたびに力ずくで止める洋子さんの両腕はあざで黒ずんでいた。

 知弘さんは振り返る。小学生のころ、兄に教科書をびりびりに破られた。母は器用に貼り合わせてくれたが、理由を聞かれたくなくて、学校では「なくした」とうそをついた。中学入学後は兄についてばかにされることが多くなり、学校に通えないように。「一番苦労しているのは母だし、兄が悪いわけでもない」。分かってはいるのに、寂しくて、苦しい。誰にも相談できず、一人で抱え込んだ。

 知弘さんは振り返る。小学生のころ、兄に教科書をびりびりに破られた。母は器用に貼り合わせてくれたが、理由を聞かれたくなくて、学校では「なくした」とうそをついた。中学入学後は兄についてばかにされることが多くなり、学校に通えないように。「一番苦労しているのは母だし、兄が悪いわけでもない」。分かってはいるのに、寂しくて、苦しい。誰にも相談できず、一人で抱え込んだ。

 知弘さんについて、洋子さんは「自由に生きてほしい」と願っていた。知弘さんが不登校になる少し前、匡志さんを施設に入れたのはそのためだ。「子どもを捨てるのか」などとも言われたが、自分が年を取った時のことを考えた。同じ時期、経済的に自立できるよう、社会福祉法人の職員として働き始めた。「全て匡志と知弘のためだった」

 ただ、周囲から「お兄さんとお母さんを支えて」と言われ続けて育った知弘さんは、心が不安定になった。自分を思いやってくれた決断なのに。一方、洋子さんは、匡志さんの存在が不登校に関係しているとは想像もしなかった。「小さい時から駄々をこねたことなんて一度もない。うまく育ってくれたと思っていた」

 親は障害児を持った瞬間から、じっくり向き合い方を学んでいく。でも「きょうだいは違う」と知弘さんは言う。「兄弟姉妹の障害を勉強する間もなく、『障害者のいる家庭』に組み込まれる」

 時間はかかったが、今なら正直に言える。「障害のある兄弟姉妹を、みんなが受け入れられるわけではない。そういう気持ちを否定してほしくない」。洋子さんは「匡志も、普通のお兄ちゃんのイメージからはかけ離れているもんね。当たり前」としみじみ答える。

 きょうだい会は「安心して家族についての弱音を吐ける場所」だ。「気持ちに余裕が生まれれば『この人ときょうだいで良かった』と思えることもあるはず。そうなれば、悲観するだけの人生から抜け出せる」

 知弘さんは一七年に社会福祉士の資格を取り、同市西区にある障害者の通所施設で働く。心掛けるのは、障害者本人だけでなく、家族側の立場でも考えること。そこには、障害者のきょうだいとして育った経験がある。

 「兄貴」と呼ぶ匡志さんとは、つかず離れずだ。正月やお盆などに施設から帰ってくると、二人でドライブや散歩に出掛ける。匡志さんは話すのが難しく会話にはならないが、どうやら「身内」であることは分かっているようだ。「弟と認識しているかは分からないけれど」 

2019年10月17日        中日新聞


障害のある方の「働く」をサポートするウェルビー

2019年10月17日 15時07分27秒 | 障害者の自立

支援者・医療従事者向けイベント「就労フォーラムin福岡2019」11月8日、九州地方で初開催

[ウェルビー]

ウェルビー株式会社(本部所在地:東京都中央区、代表取締役社長:大田誠、以下当社)は、福岡県において障害者雇用をテーマにした『就労フォーラム』を開催いたします。大規模イベントは、東京都以外では初めての開催となります。
今回の『就労フォーラム』は、「多様化する障害者雇用の実際を知ろう」をテーマに、精神科医療や障害者雇用の第一線で活躍する専門家や医療従事者、企業の方々を招いた企画をご用意いたしました。支援機関や医療機関、企業の人事担当者はもちろん、障害者雇用に携わるすべての方に、様々な視点から障害者雇用の現在を考えていただける内容となっております。
当社は、障害者雇用への需要が高まる現状に合わせ、地域ごとの特色を盛り込みながら各地の行政・企業・支援機関の方々と連携し、自立の機会を創造することができる社会づくりの一翼を担うことを目指します。

[『就労フォーラム』について] 当社が主催する『就労フォーラム』は、障害者雇用の促進を目的としたイベントです。東京においては、4回目の開催を11月13日に予定しております。
就労フォーラムin福岡2019 —多様化する障害者雇用の実際を知ろう— 」概要
開催日時 2019年11月8日(金) 15:00~18:00(14:30開場)
内容 ・基調講演「精神科医療の現状と課題」 久我弘典 様(厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐) ・講演「精神科医療従事者の立場から見た支援」 平野昭吾 様(九州大学病院 精神科神経科 助教) ・多様な障害者雇用の事例 障害者雇用を行っている企業3社が登壇
開催場所 エルガーラホール(福岡県福岡市中央区天神1丁目4番地2号) 地下鉄空港線「天神」駅  徒歩5分、地下鉄七隈線「天神南」駅 徒歩1分、 「西鉄福岡(天神)」駅 徒歩3分
参加費 無料
お問合せ 0120-655-773(ウェルビー株式会社フリーダイヤル 受付時間:9時~18時)
URL https://www.welbe.co.jp/info/media-2/17987.html
関連ニュース 「第4回ウェルビー就労フォーラム」を11月13日に東京で開催 https://www.welbe.co.jp/info/media-2/17489.html

就労フォーラムin福岡2019 —多様化する障害者雇用の実際を知ろう— 」概要
開催日時 2019年11月8日(金) 15:00~18:00(14:30開場)
内容 ・基調講演「精神科医療の現状と課題」 久我弘典 様(厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課 課長補佐) ・講演「精神科医療従事者の立場から見た支援」 平野昭吾 様(九州大学病院 精神科神経科 助教) ・多様な障害者雇用の事例 障害者雇用を行っている企業3社が登壇
開催場所 エルガーラホール(福岡県福岡市中央区天神1丁目4番地2号) 地下鉄空港線「天神」駅  徒歩5分、地下鉄七隈線「天神南」駅 徒歩1分、 「西鉄福岡(天神)」駅 徒歩3分
参加費 無料
お問合せ 0120-655-773(ウェルビー株式会社フリーダイヤル 受付時間:9時~18時)
URL https://www.welbe.co.jp/info/media-2/17987.html

時事通信    10月17日

 
 

事業所不足、利用進まず 重度障害者向け公費ヘルパー制度

2019年10月17日 15時00分25秒 | 障害者の自立

 重い障害のある人の自宅に公費でヘルパーを派遣する「重度訪問介護(重訪)」は、地域で自立した生活を送る障害者を支えるが、報酬単価が低いために提供する事業所が限られ、十分なサービスを受けられないケースも多い。大学で学ぶ利用者の通学などを公費で支援する制度も始まったが、事業所不足で、通学を含めた介助が家族頼みの人もいる。

 「利用する権利があるのに、なぜ使えないのか」

 九月中旬の夜、名古屋市中区の日本福祉大大学院で開かれたゼミ。ゼミ生で、全身に重い障害のある中山圭子さん(64)=同市緑区=が自らの体験を基に、重訪を使えない現状を訴えた。

 中山さんは十二年前から、全身の筋肉に強い痛みが出る原因不明の病気「線維筋痛症」などを患う。体を動かしたり、歩いたりすることが難しくなり、六年ほど前に身体障害者一級の認定を受けた。

 重訪は障害者総合支援法に基づき、障害者が利用できるサービスの一つ。常時介護が必要な障害者を対象に、自宅に派遣されたヘルパーが食事や排せつ、入浴など生活全般を介助する。

 各市町村が利用者の状況などを調べて介護を支給する時間を決定。中山さんは一日約五時間使える。だが、実際はこの一年半、全くサービスを利用できていない。介護はもっぱら、夫の貞夫さん(65)が担う。

 貞夫さんが仕事で不在になる日中、中山さんはベッドの上で一人きり。障害者福祉の研究をするために今春から同大学院に通うが、週三回の夜間のゼミや講義には仕事を終えた貞夫さんが車で一時間ほどかけて送迎。講義にも同席し、トイレや薬の服用を介助する。

 重訪の対象者らは、昨年から市町村の事業で通学などにヘルパーを利用できるようになった。中山さんも利用できる可能性がある。

 だが、そもそも重訪に対応してもらえる事業所が見つからない。これまで二つの事業所に依頼したが、家事の仕方や利用時間で条件が合わず、断られた。中山さんは病気の関係で物音などに敏感だ。そのため、ヘルパーに配慮が求められることも多く、事業所と折り合いが付きにくいという。

 厚生労働省によると、重訪の利用者はここ数年一万一千人ほど。国は、障害者の暮らしの場を施設から地域へ移す施策を進めており、重訪はよりどころだ。

 だが、中山さんのように対象者になっても使えない人は少なくない。京都府立大の中根成寿(なるひさ)准教授(42)=障害学=が、二〇一三年二月時点で利用者が二百人以上いる八都道府県の百三十四市区を対象に支給決定したサービス時間と実際の利用時間を調べたところ、消化率は平均約七割だった。

 利用が進まない理由の一つが事業所不足だ。厚労省が一八年度、在宅の障害者向けの事業所千八十三カ所に実施した調査では、ほぼすべてが居宅介護を提供するのに対し、重訪もできる事業所は約七割。重訪専門はわずか0・4%だった。

 参入が進まない大きな要因が報酬単価の低さ。重訪は長時間のサービスに対して報酬が支払われるため一時間あたりの単価は低く、通常の居宅介護の半分の約二千円にとどまる。

 中根准教授によると、地方では重訪の事業所がない地域もあり、サービス提供のめどが立たず、支給自体を認めない自治体もあるという。「住み慣れた場所で自立した暮らしを望む障害者が取り残されない対策が必要」と指摘する。

2019年10月16日    中日新聞


<障害者のきょうだいたち> (上)「二の次」で重ねた我慢

2019年10月17日 14時46分05秒 | 障害者の自立

「個性が大事、と障害のある人は好きなことをするだけで親にほめられる」。三つ下の妹に軽い知的障害があるという女性(36)がつぶやいた。「でも、彼らが好きなことができるよう、裏で支えるきょうだいは認めてもらえない」

 九月上旬、名古屋市内であった「きょうだい会@Nagoya」。二カ月に一度開かれ、障害や重い病気がある人の兄弟姉妹が集まる。今年四月に、同市緑区の障害者施設職員、戸谷知弘(かずひろ)さん(34)がつくった。同市内を中心に毎回、五、六人が参加する。女性はその一人で、会のホームページ作りを手伝った。

 ずっと我慢をしてきたという。姉妹でけんかをすると、母は必ず「妹のことを分かってあげなさい」と言った。「私の気持ちは? 寂しくて妹の障害がうらやましかったこともある」。戸谷さんはうなずきながら言った。「周りの人の頑張りも見てほしいよね」

 戸谷さんの兄匡志さん(41)は重度の知的障害と自閉症だ。父は戸谷さんが小学二年の時に亡くなった。周囲から繰り返し言われたのは「お兄ちゃんとお母さんを支えてあげて」という言葉。次第に苦しくなった。

 匡志さんはこだわりが強く、大声を上げるなど頻繁にパニックを起こす。幼い時、スーパーでのことだ。匡志さんが売り場にあった揚げたてのはんぺんに突進し、ほおばった。とっさのことで止められなかった。自分たちを見つめる目。「兄と一緒にいるのは恥ずかしい」と感じ始めた。

 中学に入ると、からかわれることが増えた。「兄ちゃんがああだから、おまえも頭が悪いんだな」。テストで悪い点を取った時、笑われた。同じころ、兄は施設に入り、母は外で働き始めた。「面倒を見るはずの自分がしっかりしていないからか」と悩み、学校に通えなくなった。

 転機は、母の勧めで進んだ北海道の全寮制高校だ。初めて、同級生や近所の目から逃れられた。「兄のため、母のためではない、自分が主体の人生になった」と振り返る。東京の大学で心理学を学んだ。卒業が迫った二〇一一年、大学の掲示板で、障害のある兄弟姉妹を持つ子ども「きょうだい児」を支援する「横浜きょうだいの会」のボランティア募集のチラシを見た。

 会に出るようになってしばらくしたころ。小学生の男児が泣いていた。「お姉ちゃんに消えてほしい。おもちゃを壊すし」。男児の姉は発達障害で、自身は不登校という。話を聞くことしかできず「無力感でいっぱいになった」。昔の自分と同じ。故郷に戻り、「現実を知りすぎているから」と避けていた福祉の道へ。障害者らの相談に乗る社会福祉士の資格を取った。

 あの時の男児は今、元気に高校に通う。今夏には実名で新聞に出て姉への思いを語った。会の代表から「大人に話を聞いてもらったことが力になった」と話していると聞き、「やってよかった」と心から思った。

 一九年版の障害者白書によると、身体、知的、精神に障害がある人は国内に約九百六十三万人。障害者本人には行政の支援があり、保護者には話し合うための会もある。一方、特に地方では、きょうだい同士が顔を合わせる機会は少ない。

 会には「障害者のきょうだいが苦労を分かち合い、息抜きができれば」と願いを込めた。話し合ったところで、親亡き後はどう面倒を見るか、お金はどう賄うか-などの不安が消えるわけではない。でも「ここに来れば、必ず仲間がいる」。

 ◇ 

 「きょうだい」「きょうだい児」などと称される、障害がある人の兄弟姉妹。家庭は障害児が中心になりがちで、親との関係がうまく築けなかったり、誰にも悩みを言えなかったり…。同じ経験をした仲間と気持ちを語り合い、支え合う取り組みが広がっている。 

2019年10月16日   中日新聞