ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

〜障害者と健常者の境界が消える日〜(2)

2015年06月29日 01時02分01秒 | 障害者の自立

義足が普及しない理由

小川:遠藤さんは、だからこそ、研究者であると同時に、開発者であり実業家なんですよね。論文だけに終わらせたくない、どうしても優れた義足を世の中に提供したいという思いが強い。

遠藤:そうなんです。だから僕は自分のことをエンジニアと名乗るんです。論文だけでは満足できなくて(笑)。もちろん論文を残すことも大事なのですが、やはり製品という形にして、それを患者さんが使って、笑顔になるのをみたいなと。そこが僕のモチベーションです。

小川:埋もれたままの研究や論文、特許はたくさんありますからね。もったいないというか。研究と実用化のブリッジをする人がもっといないといけないなと思いますね。

遠藤:日本には特にそのプレイヤーが少ないですね。基礎研究が素晴らしい人はたくさんいるんですね、日本には。でも多くの研究が実用化できずに埋もれてしまう。その点で、MITメディアラボは、研究と実践のバランスが良いと思います。

小川:遠藤さんが手がけられているロボット義足に関していえば、日本ではどれくらいの研究者、エンジニアがいるのですか。

遠藤:知る限りでは、僕の他にはいないと思います。

小川:なんと、遠藤さんしかいないとは。ロボット義足普及のためには、さみしい現実ですね。

遠藤:そうですね。日本ではベンチャーがなかなか育たなかった。そして、日本は民間企業が強く、大学というよりも、研究をできる大企業が技術を牽引してきた面はありますね。とはいっても、大企業には意思決定のスピードが遅いという弱点もあり。

小川:それに、儲かりそうもないことには企業はなかなか投資しないし、ロングテールで存在する課題の解決を網羅していくには大企業だけでは限界があります。さらに、新しい課題は増え続け、環境変化も激しいですから、アンテナの感度とスピード感を上げていかなければならないと思うんです。

遠藤:変化を求められている時代には、まさにそうですよね。

小川:ITのような新しい分野では、ベンチャー企業がイノベーションを牽引しやすいという実感はありますが。

遠藤:ちょっと話はずれるかもしれませんが、陸上競技の大会にエントリーする時に、いまだにファックスで、というのがあるんですよ(笑)。大会情報もWebに全く掲載されずに、結果はPDFで添付されるという。昔ながらのスタッフが運営していて、新しいことをやろうとしない結果ですよね。これでいま回っているからいいや、みたいな。

小川:一度つくったもの、決めたことを変えるということをしたがらない場面には多々遭遇しますね。前例主義的で。本音の理由は、よくわからないから、面倒くさいから、責任取りたくないから、というように。

遠藤:日本に帰国してから感じたことはまさにそれで、ひとつの分野から踏み出して他の分野にいくという敷居もすごく高いなと。日本人のマインドセットというか、ある業界において他の業界から入ってきた人に対して冷たいというような話もよくあります。

目指すは『攻殻機動隊』の世界

小川:そういう閉塞感は払拭したいですよね。遠藤さんは、義足以外に関心があることとか、これから活動を広げていきたい分野はあるんですか。

遠藤:『攻殻機動隊』というアニメがありますが、昔はSFと現実が離れすぎていました。この前、脚本を書かれている冲方丁さんとも話したのですが、最初は攻殻機動隊が現実、テクノロジーを意識することはあまりなかったようなんですね。それが、テクノロジーが発展するにつれ、だいぶ現実を意識するようになって、現実に歩み寄ってきていると。

攻殻機動隊の中で描かれていたのは、義体化されている人とされていない人が、運動神経に大きな違いがあるにもかかわらず、お互いリスペクトしているような社会なんです。

僕が目指しているのはまさにそういう社会で、ロボット義足であるとか競技用義足であるとか、障害者とか健常者とか、それぞれがあまり意識されずに過ごせるにようにしたいと。それを実現するのは、テクノロジーの力だと考えています。何か他の分野に進出したいというより、義足を特殊な分野にしたくないなと。

小川:ロボット義足や競技用義足を普及させたいというだけではなく、それを特別なものにしない、フラットな社会にしたいという思いですよね。

遠藤:そうなんです。いちいち区分することがない社会が良いですね。

100年後を描く

小川:テクノロジーとともに、人間のマインドセットも重要ですよね。ヒュー・ハー教授の「身体に障害を持つ人なんていない。テクノロジーに障害があるだけだ」という言葉に感銘を受けているのですが、まさにそのような感性が必要だなと。

遠藤:その通りだと思います。

小川:ちなみに、100年後のロボット義足、ヒューマノイド全般、それを取り巻く社会はどのようになっていると思いますか。

遠藤:たとえばロボット義足でいえば、見た目はたいして変わっていないと思います。もちろんテクノロジーの進化によって、個々の部品は小さくなって、性能も向上してと。それ以上に、ロボット義足をつけている人を、周囲が気にしたり、意識したりしなくなっているんじゃないかと思うんです。テクノロジーはさることながら、メンタリティーが成熟している。

ロボットに関していえば、人間の感情を持つことは難しいと思うし、ロボットに介護されるのも個人的には違和感があります。やはり産業用が主で、ロボットは一家に一台という状況にはなっていないのではないかと。掃除機の延長線上くらいで。ロボットが人間の代わりを担うようになると、人間が人間とコミュニケーションをとる量が減って、人間独特の優しやさ思いやりというような感情が薄れてしまうんじゃないかと思ってしまうんです。ロボットで利便性を得られたとしても、その分失うものがあるのではないかと。特に感情の側面で。

小川:なるほど。ロボットに携わるエンジニアの遠藤さんの見解だからこそ面白い。最後に、これからの目標、夢を教えてください。短中長期、いろいろあると思いますが。

遠藤:短期の夢ははっきりしていて、僕の友達を治すことですね。彼は骨肉腫になって、2回転移しています。5年以内の生存率が50%を切るという統計などもあるのですが、それに対して、僕は2005年にMITへ留学して、5年以内に卒業して、義足をつくって彼に届けるという目標を立てていました。しかし、10年経ってもまだ完成していないというのがとても悔しくって。

だからまず、彼が日常的に使えるロボット義足を完成させることです。2016年のサイバスロンへは、彼と一緒に行きたいんです。僕がつくった義足を彼につけてもらって出場したい。中長期的には、ロボット義足が当たり前な社会をつくりたいです。障害者、健常者という区分をしないような社会になったら良いなと思います。

遠藤謙(えんどう・けん) ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員、Xiborg代表取締役。2001年慶應義塾大学機械工学科卒業。03年同大学大学院にて修士課程修了。05年より、マサチューセッツ工科大学メディアラボ(MIT)バイオメカニクスグループにて博士課程の学生として下腿義足の開発・研究を行う。12年、MIT博士取得。現在、ソニーコンピュータサイエンス研究所研究員を務める一方、14年に競技用義足開発などを手掛けるXiborgを起業、代表としても活動する。12年、MITが出版する科学雑誌Technology Reviewが選ぶ35才以下のイノベータ35人(TR35)に選出された。
 
 
小川和也 (おがわ・かずや) アントレプレナー、デジタルマーケティングディレクター、著述家。グランドデザイン株式会社 代表取締役社長。慶応義塾大学法学部卒業後、大手損害保険会社勤務を経て、数々のITベンチャービジネスの立ち上げや、デジタルマーケティングディレクターとして、大手企業や行政、アーティスト等の先端的デジタルマーケティング事例を数多くつくり続けている。西武文理大学特命教授を務め、著書、講演、メ ディア出演多数。ビジネスだけではなく、デジタルと人間や社会の関係の考察と言論活動を行なっている。日本で初めて同タイトルの概念をテーマとした著書 『ソーシャルメディアマーケティング』(共著・ソフトバンク クリエイティブ)などを執筆。最新刊は、人間に大きな恩恵をもたらす一方で不思議な違和感をも生むデジタルの不気味さといかに向き合うべきかを説いた『デ ジタルは人間を奪うのか』
 
(講談社現代新書)




〜障害者と健常者の境界が消える日〜(1)

2015年06月29日 00時54分18秒 | 障害者の自立

「全ての人に、動く喜びを」を掲げて義足の開発に取り組む遠藤謙氏。彼はどんな未来を描いているのか。(→前編はこちら)

義足で世界記録を更新する

小川:遠藤さんの研究開発テーマとして、日常生活を円滑にするロボット義足に加え、競技に使用する義足がありますよね。元五輪陸上選手の為末大さんやプロダクトデザイナーの杉原行里さんとともに、陸上競技用義足の研究や開発を行う新会社「Xiborg」(サイボーグ)を立ち上げていますが、そちらではどのような取り組みをされているのですか。

遠藤:大きなビジョンとして、「全ての人に、動く喜びを」ということを掲げて活動しています。テクノロジーの力をバックグラウンドに、競技用義足もロボット義足も、Xiborgで提供したいと考えています。いまはソニーと連携していますが、今後は様々な企業と連携していきたいなと。

小川:「全ての人に、動く喜びを」というビジョンのもと、日常から競技まで、あらゆるシーンで動く喜びをサポートしたいということですね。

遠藤:モビリティの中で、面白いなと思うのが、自転車なんです。自転車はみんなが練習して乗れるようになって、どこに行くにも便利で身近な乗り物です。自転車を持っている人は多いですし、ちょっと移動するときにも自転車は便利です。補助輪をつければ子供でも乗れますし、もっと極めたい人にはロードバイクやマウンテンバイクのようにハイエンドなものもあって、オリンピック種目にもなっている。自分が求めるもの、自分の立ち位置から幅広く選べるんですよね。価格もまちまちで、自分にあったものを選べばいい。

それに対して義足は選択の幅が狭いんです。医療機器や福祉機器として歩けるようにするのがやっとで。そうではなく、日常生活にはロボット義足があって、走りたい人には競技用義足がある。発展途上国であれば、誰にでも手に入る安価なものもある。ちゃんと経済合理性も担保しながら、市場を整備していきたいと思うんです。

小川:確かに、自転車の用途の広さを義足に照らし合わせて考えてみると、ひとつのヒントになりますね。まずは日常生活を円滑に過ごすための義足の開発が急務でしょうが、競技用義足の方も、2020年東京オリンピックを意識して研究開発を進めていますよね。2020年には、パラリンピアンがオリンピアンよりよい記録をだせるようにすることが大きなゴールと考えているそうですが、それは実際可能なのでしょうか。

遠藤:たとえば、陸上の100メートル走に関していえば、結構チャレンジングで、なかなか難しいとは思います。

しかし、走り幅跳びであれば、リオのオリンピックでも間に合うのではないかと。さすがに世界記録を更新するというのはまだ難しいですが、ドイツのマルクス・レームという義足の選手が、健常者である選手を相手に、好記録でドイツ選手権1位になりました。その記録は8m24cmで、オリンピックを想定しても、トップクラスを狙えます。もしオリンピックに出られれば、好勝負できるでしょうね。

小川:そこでいつもつきまとうのが、そのようにテクノロジーの補助を受けている選手が、健常者と同じ試合に出てよいのかという議論ですよね。特にオリンピックでは、その判断がシビアになる。そのような選手がどんどん出てくると、その議論はより混沌としていくでしょうし、根本的な考え方やルールを早く整えなければいけなくなりそうですよね。

遠藤:マルクス・レームも、ドイツ選手権で1位をとったにもかかわらず、本来は進めるはずであったヨーロッパ選手権に進めませんでした。やっぱりパラリンピック選手だと。僕も2008年当初から、道具を使う選手と使わない選手では分けるべきではないかと考えてきました。かわいそう、かわいそうじゃないとかいう観点ではなく、違う種目だと思うんですね。

義足を使うのはずるいのではないかという研究者の論文や陸連に対し、それではかわいそうだという世論がありました。でも僕は個人的に、すっきりと競技として切り分けて良いのではないかと考えています。

小川:明確に切り分けて、それぞれの競技を楽しめば良いのではないかという発想ですね。2016年にはスイスでバイオニック・アスリートたちのオリンピックとして「サイバスロン」が開催されますよね。まさにそのような競技大会然りで。

遠藤:まさしく、テクノロジー寄りの競技会です。そういう競技の楽しみ方があっても良いと思うんです。

小川:それもひとつの考え方ですよね。義足に限らず、たとえば医療などでも、患者数が少なかったり、日が当たらずに放置されているような病というのはたくさんあると思うのですが、経済合理性という制約を乗り越えて、それらを解決していかなければならいと思うんです。遠藤さんが、安価で優れた義足を、必要とする世界中の人に行き届かせたいという思いは、とても共感します。

遠藤:その意味でも、もっと研究者が増えて欲しいなと思います。研究者というのも現金なところがあって(笑)、ヒューマノイドロボットのブームがあれば、国などもそこへ研究費を出し、研究者もわーっと集まります。いまだとまさにロボットで。だから僕らのような義足の分野では、まだまだ研究者が足りていない。国がどこに目を向けるかで、研究環境も変わりますから。

「エンジニア」を名乗る理由

小川:それが、政策、経済合理性ありきの壁というものですね。もっとも、プライオリティーという考え方はわからなくないのですが、そこで埋もれてしまう課題の解決については、僕も強い問題意識を持っています。

遠藤:僕も同じくです。一方で、市場の原理というのはやむを得ないところもあるとは思っていて、儲からないところにはなかなか資金は集まってこない。だからこそ、工夫次第だと思うんです。たとえば義足もマイノリティーで、市場規模もとても小さい。でも、義足のコア技術を使って他のリハビリにも活用できるようなストーリーをつくれれば、市場は拡張できると。

実際僕も、それは試みています。僕はなんとしても良い義足をつくりたいのですが、投資家には「義足なんて儲からないから」と言われてしまう。それに対して、義足の技術を使えば、これだけ色々なことにつながっていくのだということを示さなければならないと考えています。そこは研究者の意地であり、テクニックかなと。

それと、ものになる研究というのは少ないのですよね。研究費が与えられて、そこで求められるものが論文や特許の数だったりすることが多い。特に日本では。研究者が社会との接点を持って、社会に還元するような製品もなかなか出てこない。だからベンチャーが研究者を引っ張り込んで製品をつくったりすることも必要です。

(2)につづく

 




イベントや旅行、遊園地まで?! 看護師資格を活かせる仕事

2015年06月29日 00時48分07秒 | 障害者の自立

 看護師を志望する学生が増えている。その理由のひとつが、就職時の選択肢が多く、バラエティに富んでいる点だ。

 ほとんどの看護師は、まずは病院に就職し、そこで数年間研鑚を積む。ひとくちに病院といってもいろいろで、大学病院や地域の基幹病院、クリニックなどがあり、勤務形態や仕事内容は異なる。病棟のある病院は24時間態勢で患者に対応するため、夜勤がつきものだ。だが個人経営のクリニックや診療所は、日勤のみで夜勤がないところもある。

 地域医療の現場で働くという選択肢も、近年注目を浴びている。老人福祉施設や障害者施設、訪問看護ステーションなどがこれにあたる。これまでは、ベテランが支えるイメージの強かった訪問看護でも、新人を受け入れる体制の現場も増えてきた。

 国際緊急援助隊などの医療チームに所属し、災害時に海外に派遣されたり、日本青年海外協力隊に所属して海外に赴くなど、国際社会に貢献するという道もある。

 そのほか、イベントナース(コンサートやイベントなど)、ツアーナース(旅行に同行する)、シップナース(船に同行する)、産業看護師(企業や遊園地などの医務室で働く)、保育園・幼稚園・託児所、健診ナースなど、看護師の就職先は実に多彩だ。

 また、看護師のキャリアも多様化している。経験を積むだけでなく、看護教育者になる、管理職に進むというキャリアパスのほか、より専門的なスキルを伸ばして活躍する、認定看護師や専門看護師という選択肢もある。

 看護師は、一生資格を保持でき、そしてキャリアを磨いていける、貴重な職種なのだ。

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※週刊朝日MOOK「看護師になる」より抜粋


障害残る手で力作 栃木県庁で交通事故被害者作品展

2015年06月29日 00時43分53秒 | 障害者の自立

 交通事故で重い障害が残った被害者による作品展が27日、宇都宮市塙田1丁目の県庁15階展望ロビーで始まった。7月3日まで。

 脳や脊髄の損傷による四肢のまひや意思疎通に困難が残る状態で作り上げた絵画や絵手紙、書、写真など、11人の作品約50点が展示されている。

 写真とともに本人の経歴や人柄を紹介する文も掲示され、「絵画との出会いは前を向いて生きていくエネルギー」など、苦しみや悲しみからの心境の変化もつづられている。

 自動車事故対策機構栃木支所が主催。入場無料。平日は午前8時半~午後9時、土日は午前10時~午後9時。

 

6月28日 朝刊     下野新聞


知的障害者名義のカード不正取得、容疑の介護業者社長を逮捕 大阪府警

2015年06月28日 14時08分50秒 | 障害者の自立

 経営する介護事業会社を利用している知的障害のある男性になりすましてクレジットカートを申し込み、カードをだまし取ったとして、大阪府警豊中南署は26日、詐欺容疑などで、介護業「キッズ・エスコート」(大阪府吹田市)社長、緒方元一郎容疑者(48)=同市江の木町=を逮捕した。「弁護士が来るまで話さない」としているという。

 逮捕容疑は平成25年12月上旬、同社の訪問介護サービスを利用する豊中市内の40代男性名義のカード1枚をだまし取ったとしている。緒方容疑者はカードで約50万円を借り入れたが、一部は未返済という。

 同署によると、男性には中程度の知的障害があった。緒方容疑者は男性に対し、自宅に利用明細が郵送されても開封せず、同社社員に渡すよう指示していたという。

 同社は昨年12月、介護給付費約60万円を不正に受給したとして、市から指定の取り消し処分を受けていた。

2015.6.26     産経ニュース