原題「SIVAS] 2014年トルコ・ドイツ合作映画 97分 監督・脚本:カアン・ミュジデジ
シーヴァスとは闘犬につけた名前。実際の犬種はカンガール犬というのだそうだ。主人公の11歳の少年にとって畳一畳くらいの大きさの犬だ。獰猛な顔つきをしている。それだけに寝ている顔はユーモラスである。大の大人二人がかりでも引きずられるくらい力強い。こういう犬が何匹も集まる。そして2匹ずつ激しくぶつかり、咬みあいどちらか逃げるか、死ぬまで闘う。それは闘牛と同じ、ショウだ。準主人公のシーヴァスは、勝負に負けて、半死半生になり、飼い主に捨てらてしまう。主人公の11歳の少年はこの犬を助け、家族の反対を振り切って飼い始める。少年の願いは再び闘って勝利し、どの犬より強い犬であって欲しいことだ。再起をかけて、いろいろ困難な環境を乗り越えて訓練し、闘いに望むのか・・と思ったがそういうストーリーはないのだ。学校のこと、友達のこと、イスラムの祈り、家畜の老馬の放逐等など延々と脈絡もなく場面が変わる。トラクターや車のエンジンの音、いろいろな効果音がうるさくて人の声がよく聞こえない。トルコのどこかで撮影したのだろうけれど、荒涼とした原野を背景に展開されるストーリーらしき展開に、詩情のようなものは殆どなく、たんたんとショットが映し出される。そして唐突にというかんじでシーヴァスは復帰戦に挑む。そこでガッチリと闘う様子を映し出してくれるのかと思うけれど、そうではなく、観客の背中や肩越しにチラリと見せ、獰猛な犬の声のみが館内に響き、やがてシーヴァスは勝利する。最強の闘犬となったシーヴァスを売るのだというようなことをチラッと大人が言うのを主人公は怪訝そうに見やるショットがあるのだがやがて映画は終了。犬の「ロッキー」版を期待してたのに、なんだかよくわからない映画だった。