11月8日 午後1時始 矢来能楽堂 於
番組
● 能 『 井筒 』
シテ:遠藤喜久 ワキ:則久英志 間:山本則重 後見:長山禮三郎 遠藤和久
笛:一噌庸二 小鼓:幸清次郎 大鼓:佃良勝
地謡:小島英明 坂真太郎 桑田貴志 中森健之介 鈴木啓吾 駒瀬直也 中所宜夫 永島充
● 狂言 『伯母ヶ酒』
シテ:山本則俊 アド:若松隆 後見:山本修三郎
● 仕舞
・経正 佐久間二郎
・玉鬘 奥川恒治
・三笑 観世喜之 長山禮三郎 永島忠侈
地謡: 坂真太郎 五木田三郎 弘田裕一 河井美紀
● 能 『春日龍神』
シテ:観世喜正 ワキ:殿田謙吉 ワキツレ:御厨誠吾 梅村昌功
間:山本則重 後見:弘田裕一 永島忠侈
笛:熊本俊太郎 小鼓:住駒充彦 大鼓:小寺佐七 太鼓:高野彰
地謡:佐久間二郎 桑田貴志 高橋康子 新井麻衣子 遠藤喜久 中森貫太 奥川恒治 永島充
『井筒』 正面にススキがセットされている。ススキは今が見ごろだ。青々とした茎・細長くしなやかに伸びた葉。ススキの穂は開いて丁度良いくらいに穂が垂れ下がり、照明に照らされ、くすんだ黄金色に光っていた。余ったのであろうススキは能楽堂の外で、花瓶のようなのに差し込まれて雨に濡れていた。今回は見所から見て右手に置かれていた。ワキ僧の名ノリは下掛宝生。なんだかピンとこない。ところでお調べのときから気になってたのだけど、哀しい物語にしては、お囃子も、名ノリもどこか陽気な音色に感じた。シテは終始物静かに有常の娘を演ずるが詞章聞き取りにくい。間はメリハリ良く語っていた。もう少し情緒があっても良かったかなと思う。
『伯母ヶ酒』 面白かった。シテもアドも熱演。アドは少し張り切りすぎたか声が割れてる感じで聞き取りにくかったところもあった。シテは歯切れよく物語を展開していった。酒売りの伯母に一度も酒を振舞われたことのないシテ。一計を思い付き、鬼に化けて伯母を脅かし、酒蔵に入り込み、大酒を飲み酔いつぶれて寝てしまう。このあたりを流れるように演ずる。酔いを演ずるのも無理を感じない。酒を飲むところを絶対見るなと厳命してはいても酔いには勝てずブツブツと鬼はつぶやくようにしてぐっすりと寝てしまう。静かになった酒蔵を覗いた伯母は、鬼の面を膝にかけて眠りこけているシテを見つけ、悔しがる伯母。ドタバタの退場だった。
『春日龍神』 唐・天竺に渡り霊地・仏跡を巡り、修行を深めようとする明恵上人(ワキ)は、渡航を前に挨拶のため南都に下り、春日明神へ詣でる。そこで宮守の翁(前シテ)が現れ、釈迦入滅した後、ここ春日山は、釈迦が法華経などを説法した山に相当するので、渡航するまでもないことを告げた。上人は渡海を思い止まる。シテもワキも悠然という風で、聴いていて心地よかった。中入り後、宮守の言った通り、龍神(後シテ)が現れ、三笠山に五天竺を移し、釈迦の誕生から入滅の様子を見せる。龍神は颯爽とキレよく軽快に舞上げ、とても面白く楽しめた。