古い雑誌や本を処分しようとして、ふと「サイエンス」の2009年3月号に目がとまりました。
「サイエンス」2009年3月号。噴泉を吹き上げる土星の衛星エンケラドスの特集。
はて、こんな衛星で、生命がどうとか、という記事を最近読んだような…
と思って調べてみると、ありました。
3月12日前後に新聞、TVなどメディアに一斉に出ています。そのひとつ、比較的詳しいハフィントンポストから引用してみると、
『地球以外の太陽系の天体に現在も、原始的な生命を育みうる環境があった。土星の衛星エンセラダスは、地球の海底と同じように地下海の岩石の割れ目から熱水を噴出している可能性が高いことを、東京大学大学院新領域創成科学研究科の関根康人(せきね やすひと)准教授、海洋研究開発機構の渋谷岳造(しぶや たかぞう)研究員らの日米欧の国際チームが探査と再現実験の綿密な連携で確かめた。 (中略) 米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)などとの共同研究で、3月12日付の英科学誌ネイチャーに発表した。』
土星の衛星 Enceladus はエンケラドスともエンセラダスとも読めます。東大の発表ではエンセラダスとなっています。まあ、どうでもいいことですが。
ところで、古い「サイエンス」2009年3月号の記事は、『地球外生命体探査の新候補』として、
『土星の衛星エンケラドスでは、有機物を含んだ粉雪と水蒸気のジェットが「虎の縞地帯」から噴出している。直径500Kmちょっとの小さな天体で、一帯どんな作用がそのような活発な地質活動を維持しているのだろうか。(中略)エンケラドスに液体の水が存在すれば、この衛星は火星や木星の衛星エウロパと並び、太陽系で地球外生命体を探査する有力な候補地となるだろう』
と書かれています。
噴泉を吹き上げるエンケラドスの想像図も。
大きさの目安としてイラストには、エンケラドスに降り立った宇宙飛行士が描かれ、SFチックなイメージが強く印象に残っていました。
特集の知識は、1997年に打ち上げられたNASAの土星探査機「カッシーニ」の成果。
このころから生命体が存在する可能性が話題になっていたので、先日の記事も何となく読み飛ばしていました。
「生命の可能性? で、何が新しいの? ずいぶん前にもう話題になっているじゃないの」
という気持ち。
あらためて、今回の発表をよく読んでみると、
『欧米チームはカッシーニ探査機のデータから、プリューム(間欠泉)として放出される海水中に、岩石を構成する2酸化ケイ素のナノシリカ粒子が含まれていることを見つけた。日本チームは海洋研究開発機構の装置で、エンセラダス内部の環境を再現する熱水反応実験を実施し、ナノシリカ粒子が生成するためには、岩石からなるコアと地下海の海水が、現在も90℃を超える高温、pH8~10のアルカリ性で反応していることを示した。』(ハフィントンポストより)
というところが新しいようです。
探査機「カッシーニ」はこれまで、エンケラドスの噴泉(南極地帯から噴き出している)に向かって突入、噴出された物質を検出しています。
それを解析したのが今回の研究で、ナノシリカ粒子が生成されているからには、エンケラドスの分厚い氷の下に90℃を超える熱水があるはずだ、というのが最大のポイント。
地球の深海では、太陽の光が届かない熱水の噴出孔の周りにたくさんの生物がいることがわかっています。なので、熱水があるエンケラドスにも生命体がいる可能性がある。ということ。
「サイエンス」2009年の記事から、ほんのちょっと前へ進んだのかな…
科学の進歩には長い時間が必要なんですね。
でも、氷の下の熱源って何でしょう。それはまだ謎のまま。
「カッシーニ」はまだ探査を続けることになっています。
捨てようと思った古い「サイエンス」。とりあえず置いておこうかな…
NASAのページから、噴泉を吹き出すエンケラドスの南極地帯の写真を貰ってきました。
サムネイルをクリックするとフルサイズの画像になります。
神秘的ですよ~
(2010年にカッシーニが撮影したエンケラドスの噴泉 NASA/JPL/SSI 提供)
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