~ 恩師の「心行の解説」下巻より ~
講演 十七
「正しく定に入るべし」
先の続き・・・
自らを許させていただいた時、
この肉体の五官の感覚が完全に消えてしまいました。
意識ははっきりしていますが、頭・手・足・胴はどこにもなく
何も感じないのです。
こういうことは生まれて初めての体験ですから、
「あら、私の体が無くなってしまった。
私はどこかへ行ってしまった」と思ったのです。
身が軽いというようなものとは全く違います。
完全に肉体の感覚が消えます。
私は自分がどこかへ行ってしまったらえらいことだと思いましたから、
顔・頭・胸・手足をしっかり掴んで確認しました。
するとやっぱり感じがあるなと思い、自分の全身を探したぐらいです。
そして「ああ、やっぱりついていた」と思ったのです。
私たちの心の中には想念帯という心の曇りの場所があるそうです。
それは私たちの肉体の五官の感覚によってできているそうですね。
想念帯が破れた時に、この五官の感覚が全くなくなってしまいます。
そのことが後になって分かって、
その時の心の状態はこういうふうになったのだなと
知ることができました。
その時の心境は、
もう見るもの見るもの全部が愛おしくて
いとおしくてたまりませんでした。
そこらに生えている草、林の中の木々を見ると、
ああ良かったなあと草に頬ずりをし、
木に抱きついて喜んだものでした。
何ともいえない喜びに満たされるものです。