きゃらめるぽっぷこーん

きっかけは韓国映画、今は興味の赴くままに観ます。mottoは簡潔に。radiotalkでラジオ配信始めました。

窓辺にて

2022年11月26日 | 日本

 

かなりの会話劇で始まり、登場人物の関係性をつかむまでは少しとまどったけれど、
妻の浮気を知っても、怒ることも言い出すこともできないフリーライター・市川茂巳の物語であると理解してからはすんなり入ってきた。

会話と生活音、音が途切れる瞬間もあり、彼らの日常生活に溶け込んだようなゆったりしたリズムが心地よかった。

妻に浮気されたのに怒りが湧かない主人公市川茂巳(稲垣吾郎)
浮気しながら感情が見えない市川紗衣(中村ゆり)
茂巳の友人でこれまた妻に内緒で浮気している有坂正嗣(若葉竜也)
その浮気相手でタレントの藤沢なつ(穂志もえか)

不倫の話だけど、そこがメインテーマでもないんですよね。
そもそも浮気というか、人を愛するって何だろうって考える。

「ラ・フランス」という作品で受賞した高校生作家の久保留亜(玉城ティナ)が物語を良い感じに動かしていて
交際相手への素直な感情が可愛くて面白い。

手に入れたものと、手放す人の話。
ちょっと哲学的。

タクシー運転手がパチンコって時間も金を消費していく贅沢な時間だって話から、パチンコに行くところ面白かったね。

今泉監督が稲垣吾郎を当て書きした脚本だけあって、すごくしっくりくる。
主人公が稲垣吾郎そのもののように感じるんだけど、でも主人公は吾郎ちゃんじゃなくて市川茂巳なんだよね。
絶妙な演技力でした、素晴らしい。

タイトルの「窓辺にて」
カフェの窓辺で思いがけず高校生作家の久保留亜とパフェを食べることになった光のような瞬間、そして光(光の指輪)
理屈ではなくあぁ、人生って瑞々しく幸せに溢れてると感じることができる。

彼らの心情はほぼ観てる私たちに託されてて、だからこそいつまでも考えてしまう思慮深い作品。
やっぱり今泉監督最高です。

 

窓辺にて  2022年  ☆☆☆☆☆  
監督:今泉力哉
出演:稲垣吾郎、中村ゆり、玉城ティナ、若葉竜也、志田未来、穂志もえか

フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者の妻・紗衣が売れっ子小説家と浮気していることを知りながら、妻にそれを指摘できずにいた。それだけでなく、彼は浮気を知ったときに芽生えた自身の感情についても悩んでいた。ある日、文学賞を受賞した女子高校生作家・久保留亜の小説に心を動かされた茂巳は、留亜に小説のモデルについて尋ねる。

 

No.11


金の糸

2022年04月06日 | ジョージア

 

岩波ホールが7月に閉館と知って「金の糸」観てきました。
ラナ・ゴゴベリゼ監督は1928年生まれで撮影時は91歳だそうです。
すごいな、うちの母とほぼ同じ年☆
予告編の静かな雰囲気も好きなものでしたが、今この時代にジョージア映画を閉館間際の岩波ホールで鑑賞するっていう巡りあわせに思うところがありました。

79才の作家エレナ、エレナのかつての恋人で車いすで過ごす建築家アルチル、ソビエト時代に政府の高官だったミランダ(娘婿の母)
いわゆる老人の物語ですよ、足が悪くて自由に出かけられないので、舞台はほとんどがエレナの自宅(アルチルは自分のマンションのような家)
でも決して狭い世界で生きているのではなく、想像豊かに暮らしているように見える。

ソ連構成国だったグルジア時代から今までの激動を生き抜いてきた人たち、反発しあいながらも今という時間を共に過ごす。
91分という短い上映時間ながらも懐の深いたっぷりとした作品。
ゴゴベリゼ監督は母親も監督で、ソ連時代に約10年の強制収容所で過ごした過去があるそうで、
今作の主人公の人生と国の歴史が重なりが見事に描かれてました。

タイトルの「金の糸」は日本の金継ぎのことで、壊れてしまった過去を未来のために金で継ぎ合わせていく。という意味だそうで、
ウクライナ情勢に心痛める昨今で、そういう未来が訪れてほしいと願いながらも、簡単に口に出せないくらいの複雑な心情です。

石畳の中庭を囲む古い家の静かな暮らしがとても素敵。
私がエレナの年齢になるまではまだ少しあるけれど、決して遠くもなく(笑)、
赤い髪のエレナがとてもチャーミングで、
さあ、私はこれから何をしましょう、、と考えてしまいました。

 

 

 

金の糸  2022年  ☆☆☆☆☆
監督:ラナ・ゴゴベリゼ
出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ、ダト・クビルツハリア

ジョージア・トビリシの旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネは、79歳の誕生日を迎えたが、そのことを家族の誰もが忘れていた。娘は姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたため、この家に引っ越させて、一緒に暮らすという。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性だ。そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってくる。

 

ロシアの隣国ジョージアの映画『金の糸』。91歳女性監督の流刑された母の記憶。痛ましい過去を未来へとつなぐ術を聞く

 

No.10


ボクたちはみんな大人になれなかった

2022年03月25日 | 日本

 

どっかで聞いたことがあるタイトルだなぁって思ったら、燃え殻さんに興味あって何冊か購入して読もうと思ってたんだった(笑)

ポケベル・Stussy・ポータブルMDプレーヤー・小沢健二・ノストラダムス、、
90年代のファッションやカルチャーが満載でリアルタイムに過ごした人には懐かしいのかもしれない。
私はもうちょっと大人なのでね。

主人公の21才から46才までの物語で、46才のコロナ渦の今から始まって21才まで遡って描かれる。
結果があって、どうしてここに辿り着いたのかと思いながら観るので、余計にエモーショナルな印象を受ける。

初めてできた彼女「かおり」との出会いがとても重要で、普通でないのがいいという価値観。
うん、わからないでもない。
そういう気持ちは確かにあった。
でもいつのまにかそんなこと考えもしなくなっていた。

その時、その場所でいろんな人に会って、過ごした経験の積み重ねで今があるんだなって、ちょっと自分のことを振り返ったりした。

確かにそこにあって、過ごした時間たち、自分を形成してくれたものたち、でも今は存在しないもの。
ホント「普通」なんですよ、でもかけがえのない大切な今の普通。

大人になれなかったけれど、いつのまにか大人になってるんですよ、、なんか禅問答みたいな結論です。

 

 

ボクたちはみんな大人になれなかった  2021年  ☆☆☆☆☆
監督:森義仁
原作:燃え殻
出演:森山未來、伊藤沙莉、東出昌大、SUMIRE、大島優子、篠原篤

1995年。佐藤(森山未來)は、文通相手のかおりと原宿のカフェで会う。「君は大丈夫だよ。おもしろいもん」と言われ、普通じゃない自分を目指していた佐藤は、その言葉を支えにテレビの美術制作会社で懸命に働きながら小説家を目指す。その後かおりが去り、小説家にもなれなかった彼は、テレビ業界の片隅で働き続けていた。バーテンダーのスー(SUMIRE)との出会い、恋人の恵(大島優子)との別れなどを経て、気が付けば佐藤は46歳になっていた。

 

No.9


空白

2022年03月25日 | 日本

 

「空白」の英題は「intolerance」、不寛容という意味。

感情のままに暴言を吐く、他人の感情を推し量ろうとしない、そして娘に無関心だった父。
店長はひたすら謝るだけ、人との関わりがとても苦手そうな人。後ろ向きな思考で感情が見えにくい。

開始早々に死んじゃった娘ちゃんが可愛そうだった。
存在感が薄くて、意思表示が苦手で、友達に何の印象も持たれないまま、この世から消えてしまった。
絵が上手だったんだよ、描くことで自分を表現していたんだね。

彼女は万引きをしたのか、真実はわからない。
店長は彼女にいたずらをしたのかも事実はわからない。
責任転嫁するように、あえて青柳の噂程度の話を父親に耳打ちする学校に嫌悪を感じた。

スーパーで働くベテラン店員は間違ったことははっきり正す、そしてボランティア活動に精を出し、自分を善意の人として自覚することで立っている人。
でも頑張っているのに周りと全く噛み合わない。

不協和音ガンガンなりまくりの方々。
疲れる、、現実にそうやって疲れてる人はたくさんいる。 

「どうやって折り合いをつけるんだろう」
最後に古田新太さんが放った言葉でなるほどとちょっと納得した。

折り合いをつけることがとても苦手な人たちの物語だったんだなって。

でもラストに起きた些細な出来事で少しだけ気持ちが救われた。
すれ違いながら、不協和音を奏でながら、折り合いをつけることは簡単じゃなく、
でも結局は人との触れ合いにホッとしながら生きていくもんなんだろな。

演技の巧い俳優だけで作ったって監督さんが言うくらいですから、本当に面白かったし、だからこそ観ていてずっしり疲れた(笑)
今回も自らの脚本でオリジナル作品。吉田恵輔監督作品は期待を裏切らない、ほぼ傑作です。

 

 

空白(英題:intolerance)  2021年  ☆☆☆☆☆
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔
出演:古田新太、松坂桃李、伊東蒼、田畑智子、藤原季節、趣里、寺島しのぶ

スーパーの店長に万引きを見咎められた女子中学生は、逃げて車道に飛び出したところ、凄惨な事故に巻き込まれて命を落としてしまう。彼女の父親である添田は、事故の原因となったスーパーの店長を追い詰めようと、マスコミを巻き込みながら激しい憎悪をエスカレートさせていく。

 

No.8


少年の君

2022年03月25日 | 香港・台湾・中国

 

アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた、デレク・ツァン監督による香港製作の青春サスペンス

濃密な2時間15分、一瞬で引き込まれて、どうなるのかとハラハラして、
心底ズドンときました。

進学校で成績優秀でイジメのターゲットにされているチェンと、親もなく学校にも行かずに生きる少年シャオベイの物語。

いじめ
受験戦争
貧困

多くのテーマが混在しつつ、彼女たちが大人になっていく物語であり、
そしてなにより屈指の純愛映画。

ありがちなテーマだけど、デレク・ツァン監督の手腕が光る作品で、脚本も素晴らしく、映像も魅力満載だった。

高校生役のチョウ・ドンユイさんは小柄で中学生にも見えるくらいなのに、数年後の先生役もちゃんと大人に見えてびっくり(実際は28才くらいらしい)
シャオベイはボーイズグループのメンバーだそうで日本で言ったらジャニーズの誰か(誰だろ~)といったところ。
惹きこまれました。

子供の世界は大人の映し鏡なんだけれど、
子供たちは子供たちの世界で必死に闘っている。

岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」を思い出すと言っていた人がいたけれど、
確かに子供たちが闘ってた。

  ⇒⇒ リリイ・シュシュのすべて レビュー

自分の力で生きていけるように、頑張って生き延びてほしいと願った。

感動しました。

 

 

少年の君  2019年  ☆☆☆☆☆ 
監督:デレク・ツァン
出演:チョウ・ドンユィ、イー・ヤンチェンシー、チョウ・イエ

進学校に通う高校3年生の少女チェン・ニェンは、大学進学のための全国統一入学試験を控え重苦しい日々を過ごしていた。ある日、一人の同級生が陰湿ないじめを苦に自殺し、彼女が新たないじめの標的となる。いじめっ子たちの嫌がらせが激しくなっていく中、チェン・ニェンは下校途中に集団暴行を受けている少年・シャオベイと出会う。共に孤独を抱えた彼らは次第に心を通わせていく。

 

No.7


吉田恵輔 監督

2022年03月24日 | 監督

吉田恵輔(1975年5月5日生)


☆作品

空白  2021年  ☆☆☆☆☆
BLUE/ブルー  2021年  ☆☆☆☆☆
愛しのアイリーン  2018年  ☆☆☆☆☆
犬猿  2018年  ☆☆☆☆
ヒメアノ~ル  2016年  ☆☆☆☆☆
銀の匙 Silver Spoon  2014年
麦子さんと  2013年  ☆☆☆☆
ばしゃ馬さんとビッグマウス  2013年  ☆☆☆☆
さんかく  2010年  ☆☆☆☆☆
純喫茶磯辺  2008年  

机のなかみ  2006年
メリちん  2006年
なま夏  2006年



☆インタビュー

古田新太の“色気”と“説得力”に委ねた吉田恵輔監督の最高傑作 映画「空白」
映画『BLUE/ブルー』:ボクシング歴30年超の吉田恵輔監督、「挑戦者の青コーナー」から立ち向かう男たちを熱く描く
『愛しのアイリーン』吉田恵輔監督×安田顕対談 木野花インタビュー
吉田恵輔監督×安田顕、変態的怪作を語る
兄弟・姉妹の壮絶な愛憎劇を描いた物語『犬猿』吉田恵輔監督インタビュー
映画「ヒメアノ~ル」近年まれに見るくらい生々しいのを作ってやったぞという気持ちがあります
『麦子さんと』吉田恵輔監督&松田龍平インタビュー
『ばしゃ馬さんとビッグマウス』吉田恵輔監督、麻生久美子インタビュー
“登場人物が自分を裏切って動き出すと映画は面白くなる”『純喫茶磯辺』吉田恵輔監督インタビュ



まともじゃないのは君も一緒

2022年02月22日 | 日本

おもしろかったーー!!
テンポが良くて展開がすっきりわかりやすくて楽しい☆
更に更に、主演の成田凌くんと清原果耶ちゃんがともかくうんまい!!
二人の絶妙にかみ合わない理屈満々の掛け合いが楽しくてずーっと楽しい。
キャスティングもばっちりで、胡散臭い実業家の小泉孝太郎さんがジャストフィットで、婚約者の泉里香さんが綺麗で聡明で素敵。

もう最高じゃないですか☆

二人でしゃべってる時の大野の引き笑いが気持ち悪くてうまいわぁ、そしてツボる。
そして婚約者の女性に対すると急に感じよい人になる不思議さ(笑)
友達のバーで、エナジードリンク10杯飲んで酔っ払ったおじさんにくだまいてる香住もうんまいわぁ。

そもそもまとも(普通)ってなんなの?って話で、
いろんな普通が世の中にはあって、同時に案外みんなそれぞれちょっと変だったりするしね。

登場する人全員にどこか共感する部分があって、ひたすらに楽しく鑑賞できる作品でした。

 

 

まともじゃないのは君も一緒  2020年  ☆☆☆☆☆
監督:前田弘二
脚本:高田亮

出演:成田凌、清原果耶、泉里香、小泉孝太郎

予備校講師・大野は、独身・彼女なし。ずっと 1 人で大好きな数学の世界で生きてきた。今の生活に不満はないが、このままずっと 1 人なのかと不安になることもある。自分だって普通に結婚したい。ただ、普通が何かわからない。女の子とデートをしてもなんだかピントがずれているような空気は感じているが、どうしていいのかはわからない大野。教え子の香住はそんな大野を”普通じゃない”と指摘してくれる唯一の相手。大野は香住に「どうしたら普通になれる?普通を教えてほしい。」と頼み込む。

 

No.6


街の上で

2022年02月19日 | 日本

 

若い頃を思い出す懐かしい何気ない日々。違和感なく馴染んでしまって、ずっとこのままこの人たちとこの街で一緒に過ごしたいくらいな気分でした。
街の佇まいが本当によくて、古着屋も、古本屋も、行きつけのバーも、小さな劇場も、まるで自分がそこにいたような心地よさ、生活感が残る。

~誰も見ることはないけど、確かにここに存在してる~
まさにその通りで、街の上で起きていた誰にもある存在していたものたち。

あんな風に街に出て、人と出会い人とかかわることが、コロナによって失われて、格段になくなってしまった今だからこそ、いろんなことを感じるんだろな。
そして下北沢は再開発が進んで、今現在は風景が変わってきているんだそうで、そういう点でも意味の深い作品でした。

主人公の青、古本屋で働く冬子、映画仲間のイハ、監督の卵の町子、そして元カノになった雪。
他にも古着屋のカップルの客や、カフェやバーの店主、お巡りさん等々、皆さん愛すべき人たちで、キャラクタが際立っていて上手いんですよね。
前半は比較的淡々とした展開だったけれど、終盤の路上でのややこしい人間関係のもつれは大爆笑でした。
そしてゲスト出演だと思ってた成田凌がまさかのそんな役回り!!(笑)

青と4人の女性の関係が、近いわけでなく、遠いけど優しげで、好意的で、基本的に青は振り回されるんだけど、そこがすごく好きでした。平和だ☆




街の上で  2019年  ☆☆☆☆☆

監督:今泉力哉
出演:若葉竜也、穂志もえか、古川琴音、荻原みのり、中田青渚、成田凌

下北沢の古着屋に勤務している荒川青(若葉竜也)は浮気されて振られた恋人を忘れることができなかった。ときどきライブに行ったりなじみの飲み屋に行ったり、ほとんど一人で行動している彼の生活は下北沢界隈で事足りていた。ある日、美大に通う女性監督から自主映画に出演しないかと誘われる。

 

No.5


ファーザー

2022年02月12日 | アメリカ・イギリス

 

ネタバレしないようにしていたけれど、なんとなくの内容はわかっちゃってたからなぁ。
未知の状態で観たならば、これはかなり驚いたと思う。

痴呆が始まった高齢のひとり暮らしの父を心配する娘の話。
物語の入り口としては他人事ではない、いつか我が身に起こるかもしれない話なんだけど、娘が突然が違う人として現れたところから、何が起きたのかと私も一緒に混乱しました。

知らない人が自分の家にいる。怖いよね、いったい何が起きているんだと混乱する。アンソニーは心細かったろうな。
演出はホラーサスペンス風になっていて、何が現実なのか何が虚像なのか判断できない恐怖さえある日常。
痴呆症になっていくアンソニーの視点で描かれていて、まるで追体験するようだった。

フラットと呼ばれる自宅。広々とした間取りで素敵なお家よね。家具も調度品もどっしりと風格があって、彼のこれまでの暮らしを想像する。
ひとりで暮らすには広い家だなぁっていう最初の印象だったけれど、間取りやキッチンのカタチが同じようでいて少しずつ変化していることに気付く(ホラーだよね)
奇妙だけど、そこからくる情報が多くて否応なしに集中しました。

エンジニアとして生きてきたアンソニーの人生や、若くして亡くなった妹や、アンと父との関係性。そこに思いを馳せる奥深さがあって、誰にでも訪れる人生の終焉について考えてしまう奥深い作品でした。

介護される身となったとしても幼い子供のように扱われることは嫌だと常々感じていたので、インテリを自負しているアンソニーの反発には納得したけれど、そんな彼が最後に母を求めて子供のように泣く姿は心が痛くて辛かった。ママに迎えに来て欲しいと、、
木々の緑を観ながら我がことのように胸が締め付けられました。
アンソニー・ホプキンスの名演技でした。
オリヴィア・コールマンも素晴らしかった。

 

 

ファーザー  2021年  ☆☆☆☆☆
監督:フローリアン・ゼレール
出演:アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン

ロンドンで独りで暮らす81歳のアンソニー(アンソニー・ホプキンス)は、少しずつ記憶が曖昧になってきていたが、娘のアン(オリヴィア・コールマン)が頼んだ介護人を断る。そんな折、アンが新しい恋人とパリで暮らすと言い出して彼はぼう然とする。だがさらに、アンと結婚して10年になるという見知らぬ男がアンソニーの自宅に突然現れたことで、彼の混乱は深まる。

 

No.4


真夜中乙女戦争

2022年01月20日 | 日本

 

最初に感じたこと、声がいいよねー、私の声がいい。
今作のイメージの大きな要因になっているような気がする。
そしてとても美しい映画だった。

冒頭で私がこの作品は110分で終わると名言したので思わずニヤッとした。
そっか、これから始まることが寓話であることを宣言したんだな、って。
東京タワーから街の夜景が逆さまに映り、ぐるぐる回り、現実世界と違う世界に行ったり来たりしているんだという導入でした。

難解かもしれないという評判だったけれど、比較的わかりやすい作品だった
ともかくネタバレを一切避けたので公開初日に鑑賞、
ファイトクラブをもう一度観ておこうかとも思ったけど時間がなく、観なくて正解だったかもしれない。

黒服に影響を受ける私という関係だけれど、実は黒服は私の中に存在するものじゃないかとも感じていて、柄本さんがあえて存在感を重くしないように演じているんじゃないかと思ったりもした。
池田エライザさん演じる先輩がもっとミステリアスな役かと思いきや、真っ当に存在していそうな、私を現実に引き戻してくれるような役割でしたね。
先輩に思いを寄せる私だけれど、恋愛というよりは、二人はとても似ていて、まるで双子のような関係性を感じた

ともかく廉くんのビジュアルがとても綺麗、ああ綺麗だな、、思わず何度も思ったけれど(エライザさんも綺麗)、彼の凄い所は、その綺麗さが演技の妨げにならないところですね。そして目の表情がいい。
ちゃんと私の佇まいでそこにいて、鬱屈とした大学生で、母親だったらつかみどころがなくてイライラする男の子だった。

出演者はほぼこの3人で、素晴らしいキャスティングでした。

あえていうなら、中盤の黒服が徒党を組んで反社会的にエスカレートしていくあたりが少し弱いというか、もっと過激で危険だったらよかったけれど、逆に今の時代は凶暴性が見えない方がリアルなのかもしれない。
その後に続くラストまでの流れが良かった。
私と先輩が向かいあう場面、私と黒服が対峙する場面からのクライマックスは息を呑んで観た。
東京が破壊される映像が感動的に綺麗で最高のエンディング。
私がコロナ禍の今を笑顔で生きていると信じたい。

ビリーアイリッシュの曲を聴きながらのエンドロールの余韻がとてつもなく気持ちが良かった。

面白かったです☆

 

 

真夜中乙女戦争  2022年 
監督:二宮健
出演:永瀬廉、池田エライザ、柄本佑

上京して一人暮らしを始めるも友人も恋人もできず、大学の講義も身が入らず無気力な日々を送る大学生の“私”(永瀬廉)は、ひたすら東京タワーを眺めていた。やがて「かくれんぼサークル」で出会った美しく知的な“先輩”(池田エライザ)に好意を寄せるようになるが、人の心を一瞬で支配する謎の男“黒服”(柄本佑)と出会ったことで状況は一変。黒服と二人でささいないたずらを繰り返していくうちに、私は全ての退屈を破壊する“真夜中乙女戦争”という名の東京破壊計画に巻き込まれていく。

 

No.3