岩波ホールが7月に閉館と知って「金の糸」観てきました。
ラナ・ゴゴベリゼ監督は1928年生まれで撮影時は91歳だそうです。
すごいな、うちの母とほぼ同じ年☆
予告編の静かな雰囲気も好きなものでしたが、今この時代にジョージア映画を閉館間際の岩波ホールで鑑賞するっていう巡りあわせに思うところがありました。
79才の作家エレナ、エレナのかつての恋人で車いすで過ごす建築家アルチル、ソビエト時代に政府の高官だったミランダ(娘婿の母)
いわゆる老人の物語ですよ、足が悪くて自由に出かけられないので、舞台はほとんどがエレナの自宅(アルチルは自分のマンションのような家)
でも決して狭い世界で生きているのではなく、想像豊かに暮らしているように見える。
ソ連構成国だったグルジア時代から今までの激動を生き抜いてきた人たち、反発しあいながらも今という時間を共に過ごす。
91分という短い上映時間ながらも懐の深いたっぷりとした作品。
ゴゴベリゼ監督は母親も監督で、ソ連時代に約10年の強制収容所で過ごした過去があるそうで、
今作の主人公の人生と国の歴史が重なりが見事に描かれてました。
タイトルの「金の糸」は日本の金継ぎのことで、壊れてしまった過去を未来のために金で継ぎ合わせていく。という意味だそうで、
ウクライナ情勢に心痛める昨今で、そういう未来が訪れてほしいと願いながらも、簡単に口に出せないくらいの複雑な心情です。
石畳の中庭を囲む古い家の静かな暮らしがとても素敵。
私がエレナの年齢になるまではまだ少しあるけれど、決して遠くもなく(笑)、
赤い髪のエレナがとてもチャーミングで、
さあ、私はこれから何をしましょう、、と考えてしまいました。
金の糸 2022年 ☆☆☆☆☆
監督:ラナ・ゴゴベリゼ
出演:ナナ・ジョルジャゼ、グランダ・ガブニア、ズラ・キプシゼ、ダト・クビルツハリア
ジョージア・トビリシの旧市街の片隅にある古い家で娘夫婦と暮らす作家のエレネは、79歳の誕生日を迎えたが、そのことを家族の誰もが忘れていた。娘は姑のミランダにアルツハイマーの症状が出始めたため、この家に引っ越させて、一緒に暮らすという。ミランダは、ジョージアのソビエト時代に政府の高官だった女性だ。そんなエレネの誕生日に、かつての恋人アルチルから数十年ぶりに電話がかかってくる。
ロシアの隣国ジョージアの映画『金の糸』。91歳女性監督の流刑された母の記憶。痛ましい過去を未来へとつなぐ術を聞く
No.10