静かだけどとてつもなく面白くて、台詞の説得力が素晴らしくて、記憶に留めておきたい会話がたくさんあった。
「東京は棲み分けができていて、同じ階層の人としか出会わないようになっている」
東京のあるエリアに住む人と、地方からきた東京に住む人。
ま、東京はほとんどが地方出身者でできてる街だとは思うし、貴族までとは言わないけれどそういう層の人は確実に存在する。
そして、華子と美紀は同じ時代に東京に暮らす同年代の女性なのに、まったく違う世界で生きている。
さらに政治家を世襲するべく環境に生まれた青木幸一郎が登場して、でも幸一郎もこう生きなければならない、という息苦しさの中でそれを甘んじて受け入れていて、それぞれが選択した道を否定する気持ちにはない。
そういう現実を描いたうえで、どう生きるかを描いていて、
さらに魅力的なのは、どちらの世界が良いのかという比較をしているわけではないこと。
分断を描きたいのではないことが気持ちよくて、たとえば華子の友人のヴァイオリニストの逸子の「女を分断するもの」に対して意見には共感しまくりで、映画館でひとり心の中で頷いてました。
門脇麦と水原希子のキャスティングが絶妙したよね。
全然違う役なのに、役を逆転したとしても成り立つような気もする。
二人が実力のある俳優さんだからということはもちろんあるけれど、たまたま生まれついた家庭の環境に違いがあるということだけで、華子と美紀は自分の意志で歩んで居場所を見るけられる女性だということ、何も違いはない。
そういう意味のような気がした。
「東京はみんなの憧れで作られている」
東京駅を見下ろしながら二人で交わした会話が素敵だったな☆
優しい気持ちなる作品でした。
⇒⇒ “いつでも別れられる”ってすごく大事。自尊心を見失わず、生きたい場所で生きていく。
映画『あのこは貴族』監督と語る私たち。
あのこは貴族 2021年 ☆☆☆☆☆
監督:岨手由貴子
出演:門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ
都会に生まれ、箱入り娘として何不自由なく育てられ、「結婚=幸せ」と信じて疑わない華子。結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされてしまう。気が付けば 20代後半、名門女子校の同級生たちの結婚、出産の話を聞くたびに焦りが増すばかり。あらゆる手立てを使い、お相手探しに奔走した結果、ハンサムで良家の生まれである弁護士・青木幸一郎と出会う。幸一郎との結婚が決まり、幸せが叶えられたかに思えた。一方、東京で働く美紀は富山生まれ。猛勉強の末に慶應大学に入学し上京したが、学費のために夜の世界も経験したが、中退。恋人はなく、仕事にやりがいを感じているわけでもなく、都会にしがみつく意味を見いだせずにいた。