邦題は”風にそよぐ草”となっていますが、完全な誤訳で、直訳すれば”気が狂った草”となります。
実際、映画の中でも、コンクリートの隙間から生えている、生命力逞しい雑草が何度もクローズアップされます。
写真の男性は50歳くらいの役どころなのですが、どう見ても70歳くらいのジジイにしか見えませんよね。
ストーリーは、このジジイが偶然に財布を拾い、その中に入れてあった、持ち主である女性の写真に一目惚れすることから始まります。
警察の手によって財布が返ってきた女性はジジイにお礼の電話をかけます。
女性は40歳台後半位の歯科医で趣味は小型機の操縦ですが、日本人では、まずお目にかかれないようなひどいソバカスおばちゃんです。
この電話以降、ジジイのソバカスに対するストーカー行為が次第にエスカレートしていきます。
最初は留守電、次は手紙、などですがソバカスは全く相手にしません。
ジジイは、あげくの果てに、ソバカスの車のタイヤを4本とも切り裂くという暴挙にでます。
さすがに、ここまでされると、ソバカスも警察に相談せざるを得ません。
告訴もしないし、賠償も求めないので、今後自分にまとわりつかないように説得してくれと頼みます。
それでストーカーは終わるのですが、こんどはソバカスがジジイのことを心配してしまいます。
警察を使ったことでジジイを深く傷付けたのではないだろうかと。
ある夜、ソバカスはジジイの家に電話をかけます。
電話にでたジジイの美人妻はそれがソバカスからのものであることを見抜きます。
驚いたソバカスに対して美人妻は、ジジイが自分になんでも打ち明けることを説明し、暗に、ジジイが最近ひどい精神状態にあることをほのめかします。
その夜ジジイは街の映画館にパイロット物を見に行っていました。
それを聞きだしたソバカスは映画館の前にある喫茶店で上映が終わって出てくるジジイを待ちます。
ジジイを見たことは一度も無いソバカスでしたが、誰がジジイなのかを見極める自信がありました。
正確にジジイを見抜いたソバカスは、後ろから回り込んで正面から対峙します。
驚いたジジイは、”愛の告白か?”とボケをかまします。
ソバカスの、”いいえ、心配になったから。”という応えには、”愛せなくとも心配することはできる。”とやりかえします。
以後、愛が進展することもないのですが、今度は逆にソバカスのほうが深みにはまっていき、イライラして仕事が手につかなくなります。
エンディングは二通り用意されていました。ジジイ夫婦を遊覧飛行に招待したソバカスが飛行場の事務所でジジイとキスをするシーンで終了の文字が出ます。
ところがそこで終わらずに映画は続き、3人での遊覧飛行中に冗談で操縦をまかされたジジイが失敗して墜落したかもしれないという
微妙なシーンで2回目の終了マークが出ます。
日本人ならば引いてしまいそうなストーカー行為が、フランスでは情熱的だとか、自分に正直だ、などと褒め讃えられるのかも知れません。