
作者の梶尾真治は熊本県生まれで熊本市在住の65才です。
91年に、”サラマンダー殲滅”で第12回日本SF大賞を受賞しました。
著書には、”黄泉がえり”、”穂足のチカラ”などがあります。
羽田発熊本空港行きの旅客機が阿蘇山に墜落して、生存者は主人公の知彦ただ一人であり、他の乗客62人は行方不明となります。
そして、知彦の恋人やパイロット、スチュワーデス(CA?)を含む62人は、すべて阿蘇出身者であり、
皆が、とっくの昔に死亡したとされている人々でした。
知彦も生まれは阿蘇です。
阿蘇には先祖代々に引き継がれている62の基(パワースポット?)を守る62の家庭があり、
人々の邪気を吸いこんだ基が荒れ狂う時にはそれを鎮める役割を果たしてきました。
旅客機事故で行方不明になった62名はこの62の家庭に生まれた人達でした。
幽霊のような62名は、、万が一、邪気が膨れ上がって邪魔となり、コントロール不能な状態になった時には合体して、
”鬼”という戦闘群体になるために用意されていたのです。
そして、その合体を完成させて、”鬼”を導く”健般龍命”の役割を担う運命に生まれてきたのが知彦だったのです。
ただし、いったん合体して鬼になってしまうと戻ることはできずに人間としての記憶もすべて失うという設定でした。
したがって、”鬼”を作るということは、知彦にとって、恋人との完全な別れを意味するのです。
まあ、面白いと言える作品でした。
しかし、私にとっては、読むタイミングが悪すぎました。
”クロノスの飛翔”を読んだ直後でしたので、どうしても比べてしまうのです。
文章力、構成力、心理描写など、すべてに於いて中村弦が上回っています。