日本人では閉経前の女性のほとんどが鉄不足に陥っているのだそうです。
鉄が欠乏すると真っ先に連想されるのは貧血ですが、それだけではなかったのです。
鉄は幸せホルモンであるセロトニンや満足ホルモンドーパミンが産生されるときの補因子です。
鉄不足はセロトニンやドーパミンの減少を招き精神疾患のリスクを高めます。
さらには根本的なエネルギー不足を惹起します。
ちょっと難しいけど、エネルギー産生についてざっとアップしてみます。
私たちは食事によって活動するエネルギーを得ています。
このエネルギーの元がATP(アデノシン3リン酸)でエネルギーの通貨とも呼ばれます。
ATPからリン酸が1個ずつ切り離されてアデノシン2リン酸やアデノシン1リン酸に変化するときにエネルギーが発生するのです。
では、エネルギー通貨であるATPを私たちはどうやって作っているのでしょうか?
まずはブドウ糖を原料とした場合を考えてみます。2段階にわたってATPが産生されます。
① 嫌気性解糖
ブドウ糖がピルビン酸に変化します。この時にATP2個が産生されます。
② 好気性代謝
ピルビン酸はビタミンB群やパントテン酸、αリポ酸によってアセチルCoAとなってミトコンドリアに入ります。
アセチルCoAは鉄やビタミンB群、Mgの補因子によってクエン酸回路を回ります。
その後、鉄とO2が介在して電子伝達系に入りATP36個が産生されます。
次に脂肪酸を原料としてみます
脂肪酸はビタミンB群やパントテン酸、αリポ酸によってアセチルCoAとなってミトコンドリアに入ります。
その後は好気性代謝と同じですが産生されるATPの数は脂肪酸の長さによって変わります。
たとえば炭素数が16のパルミチン酸の場合はATP129個が産生されます。
つまり、鉄やMgやビタミンが不足するとクエン酸回路に入れなくなってしまいエネルギー不足になります。
そうなると、鉄もビタミンも必要としない嫌気性解糖に頼るしかなくなります。
代謝産物のピルビン酸はミトコンドリアで燃やされずに乳酸に変化していきます。
この乳酸の蓄積が様々な症状を発現します。
以上のような理由で起こる鉄不足の症状を列記すれば
イライラ、集中力低下、神経過敏、立ちくらみ、めまい、耳鳴り、偏頭痛、節々の痛み、腰痛、喉が詰まる
冷え性、易疲労、朝起きれない、皮下出血、コラーゲン劣化、ニキビ肌荒れ、不妊、睡眠障害、うつ、パニック
むずむず足症候群、氷を食べたがる、などです。
さて、鉄はフェリチンの形で肝臓を中心とした体内で貯金されます。
正常値は測定方法によっても違いますが、日本人女性では10から120くらいとされています。
これは外国と比べると異常です。
欧米ではフェリチンが40未満の女性は妊娠しないように指導されるそうです。
この本の著者はフェリチンは100以上を目指すべきだと主張します。
ところで、外国では鉄不足は珍しいのだそうです。
欧米では小麦に鉄を混ぜています。
フィリピンでは米に、中国では醤油に、東南アジアではナンプラーに鉄を混ぜているそうです。
日本政府は何もしません。
さらにアメリカから輸入される小麦には鉄は入っていません。
日本では女のお子さんは初潮が始まるまでは大丈夫ですが、始まると2年くらいでフェリチンが低値になります。
このことが思春期の立ちくらみや不登校、いじめや自殺の原因になっているかもしれません。
特に悲惨なのは出産後の女性です。
子供にフェリチンを50くらい持って行かれます。
鉄不足は母乳にも反映されますので、子供の鉄不足も心配されます。
この本の最後のほうで作者は次のように述べています。
医師は「病気」を勉強しているのであって「健康」について勉強しているのではない。
医師は「どうすれば健康でいられるか」ということを指導するための教育は受けていない。
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