はせがわクリニック奮闘記

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村上春樹・独立器官

2014年02月08日 | 読書
今月号の文芸春秋に掲載された作品を読みました。

52歳の美容整形外科医である渡会が主人公です。父親から引き継いだ美容クリニックを六本木で開業しています。
ストーリー自体は、村上春樹を彷彿させる、主人公よりもちょっとだけ年上の作家が語り部です。

渡会には結婚歴も同棲歴も有りません。
若い頃から自分を結婚に向いていないとみなし、結婚に発展する可能性のある女との交際を避けて、
亭主持ちか、彼氏がいる女との交際を専らとして生きてきました。
順調で充実した人生を謳歌してきた渡会ですが、実際には誰一人として女を愛した記憶はありません。
そんな渡会が初めて女に惚れたところから、彼の人生が思わぬ方向へ歩き始めるというストーリーです。

これ以上はネタバレを避けて紹介しませんが、実に面白い作品でした。
以前の、「イエスタデイ」で村上春樹が自覚している、"決めの台詞を使いすぎる"という特徴が発揮されますが、それが魅力です。
おすすめ度100%です。

実は、こいつを読む前に、今回の芥川賞受賞作である、小山田浩子の、「穴」を読んでいました。
そのあまりの面白く無さに辟易とさせられた後でしたので、口直しと言いますか、つかえた胸がスッキリとしました。
私の個人的な考え方としては、小説も映画も、面白さの根源は、"そう言えばそうなんだな"と納得させられる魅力的なストーリーと
登場人物の善悪を超えた魅力的なキャラクターでしょうか。

「穴」には魅力的な登場人物は出てきません。
ストーリも、主人公である20代後半と思われる主婦が、旦那の転勤に伴って、田舎町の旦那の実家の隣に引っ越してくるという平凡なものです。
さすがに、それでは盛り上がりませんので、作者は、正体不明の穴を掘りまくる黒い獣や、実家の納屋に長年一人で住み続ける旦那の実の兄、
さらに田舎のコンビニで通路を塞いでしまうほどたむろする子供たちを登場させます。
しかし、物語の終盤で、それらが幻影であったことが記されます。

B級のホラー映画では、恐ろしいシーンが続いた後に、それが夢であったという展開が多用されます。
そのことを思い起こさせるような腹立たしくなる小説でした。
おすすめ度0%というか、読まないことをおすすめします。

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