はせがわクリニック奮闘記

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この国の空

2015年08月22日 | 映画














木曜日は電気館で上記映画を観ました。

この作品のジャンルですが、単なる恋愛映画とみなせば、ひどくみすぼらしい恋愛ストーリーです。

戦時中に東京の杉並で母親と二人して暮らす19歳の二階堂ふみがヒロインです。
隣の家には妻子を疎開させて一人暮らしを続ける財閥系銀行の支店長である長谷川博已が住んでいます。
長谷川は38歳ですが、やさ男ですので兵役検査では丙種となり、徴兵されなかったのです。
男は皆、兵隊に取られていますので、ふみの周りで恋愛対象になる男性は長谷川くらいしかいなかったのです。
長谷川ですが、ふみの心の奥の自分への好奇心を嗅ぎ取った時に、それを拾うのは中年男の性でしょう。( 私見です )

長谷川は19歳の光り輝くようなふみに対して、こう言います。
” 女の人には何をやっていても美しく見える時期ってあるんですよね。 ”

実は、この作品のエンドロールで、女流詩人・茨木のり子が19歳で終戦を迎えた経験を基に書いた詩が、ふみによって朗読されます。

「 わたしが一番きれいだったとき 」

わたしが一番きれいだったとき
街々はがらがら崩れていって
とんでもないところから
青空なんかが見えたりした

わたしが一番きれいだったとき
だれもやさしい贈り物を捧げてはくれなかった
男たちは挙手の礼しか知らなくて
きれいな眼差しだけを残し皆発って行った

わたしが一番きれいだったとき
わたしの国は戦争で負けた
そんな馬鹿なことってあるものか
ブラウスの腕をまくり
卑屈な町をのしあるいた

わたしが一番きれいだったとき
わたしはとてもふしあわせ
わたしはとてもとんちんかん
わたしはめっぽうさびしかった

だから決めた できれば長生きすることに
年とってから凄く美しい絵を描いた
フランスのルオー爺さんのようにね  

この作品の原作は1983年に芥川賞作家の高井有一が書いた小説でした。
そして、この小説は谷崎潤一郎賞を受賞しています。
この映画の監督を務める荒井晴彦が30年前に高井有一から脚本化のOKをもらっていました。
おそらく荒井晴彦は茨木のり子の詩を連想して、その2つをオーバーラップさせ、映画化したのでしょう。

確かに実年齢20歳の二階堂ふみは輝いていました。
その輝きこそが、この作品のすべてであるように思えます。

戦争が終わって長谷川の妻子が疎開先から帰ってくることになります。
映画の最後は、ふみの陳腐なセリフで締めくくられます。

” 私の戦争はこれから始まるんだ。 ”

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