老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

路端に転がる石

2022-02-19 14:07:03 | 介護の深淵


石のぬくもり 

介護ベッドの上で
寝返りすることもできず
ジッと天井を見つめたまま

長い一日を過ごす苦痛
屈伸することもできず
左右の手足は「く」の字に拘縮したまま

硬くなってしまった老人の躰は
石のように冷たい

辛夷(こぶし)に映る 握りしめた指をひと指ひと指解し
空に向って開いた手を握り返す
微かにぬくもりが伝わりはじめてくる


路傍の石はジッとしたまま
何処へも行くことができず
地べたにへばりついたまま

石の表面は
青空を見つめ
太陽に照らされ
ぬくもりの石になる

石の裏面は地べたに引っ付き冷たいが
表面からやさしいぬくもりが
じわっとつたわり
ぬくもりの石になる



終電車

2022-02-19 08:03:43 | 阿呆者


1812. プラットホーム

高台のプラットホームに立つと
冷たい風がわたしの躰をすり抜けていく

金曜の夜 プラットホームに立ち
終電車に乗ったあなたを
手がちぎれるほど振り続け
「サヨウナラ」と呟いた

あれから時は流れ過ぎ
いま あなたは
どこで 何をしているのだろうか

終電車を見送ることもなくなった