『忘られぬ 初恋記念日 そぞろ寒』
(わすられぬ はつこいきねんび そぞろさむ)
『秋旱 上から目線に 庶民なし』
(あきひでり うえからめせんに しょみんなし)
『朝寒や 押しくらまんじゅの 電車かな』
(あささむや おしくらまんじゅの でんしゃかな)
『いにしえの 明日香風吹く 暮の秋』
(いにしえの あすかかぜふく くれのあき)
『明日香には ロマンの芽あり 花白粉』
(あすかには ろまんのめあり はなおしろい)
『山の辺の 柿の木坂を 左折れ』
(やまのべの かきのきざかを ひだりおれ)
『夕映えの 春日の芒 銀に金』
(ゆうばえの かすがのすすき ぎんにきん)
『柿盗む 昔話に 渋き顔』
(かきぬすむ むかしはなしに しぶきかお)
『もみじ葉の 落ちて流れて 堰の上』
(もみじはの おちてながれて せきのうえ)
『保津下り 北山杉に 紅葉谷』
(ほづくだり きたやますぎに もみじだに)
『もみじ葉は 水に映りても 紅葉なり』
(もみじはは みずにうつりても もみじなり)
『深紅なり 水木の花の 赤い実は』
(しんくなり みずきのはなの あかいみは)
『秋澄むや 六分も四分も 消え失せて』
(あきすむや りくぶもしぶも きえうせて)
『穴惑い 風が溢れて 息詰り』
(あなまどい かぜがあふれて いきつまり)
『居酒屋の 定番の席 暮の秋』
(いざかやの ていばんのせき くれのあき)
『苔生せる 藁屋根の上 柿たわわ』
(こけむせる わらやねのうえ かきたわわ)
『秋の夢 父の飲む酒 水ばかり』
(あきのゆめ ちちののむさけ みずばかり)
『山の辺の 峠の茶屋の 柿旨し』
(やまのべの とうげのちゃやの かきうまし)