カクタス
冬支度(ふゆじたく)秋の取り入れが終わって穏やかな日が続く今頃、母は冬支度を始める。
沢庵漬、野沢菜漬は大仕事だ。
冬の間、炬燵の周りでする針仕事の材料は古着をほどいて洗い張りをする。
日当たりの良い場所に立てかけた張り板に、きれいに洗濯して糊付けされた古布を手際良く布の隙間に残った丸い空気のふくらみを押し出しながら張られた。
冬日に照らされて、洗い張りされた布から、白い湯気が澄んだ青い空に立ち昇ってゆく。
乾いた布はしっかりと、張り板に張り付いて、それをはぎ取ることを子供たちは競い合った。
小春日和の中で懐かしく思い出す事柄である。