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突然その人が死んだという知らせが来た。
特別親しい間柄ではなかったけれど、その人がいることで周囲が安心できる不思議な力を持っていた。
今年1月、彼の会社の創業10周年と、社屋新築記念に招かれ祝辞を述べた。
元気にやっていると思っていたが、最近になって体調を崩し声が出にくいと聞いたので、ご無沙汰を詫び簡単な手紙を書いた。
つい10日程前のことである。
その手紙を読んでくれたかどうかわからない、お見舞いに行けばよかったと悔やむ気持ちもあるけれど仕方ない。
癌治療時の過酷な副作用は想像を絶するものがあるらしい。しばらく面会を遠慮願いたいというその心情を理解したつもりだったのだけれど。
タイのチェンマイ、バンコクに旅行したことがある。
ある寺院で、篭の中の鳥に、願いを込めて空に放した。
私は、浅ましい願い託して放鳥したのであったが、彼がどんな願掛けしたのかこの世では知る由もない。