4月1日 室内で越冬した金魚を池に移した。
尾びれを思い切り振っても壁に衝突することがない環境にしばらく戸惑いを隠せなかったがすぐに慣れた。
その日ちょっと出かけることがあって1時間ほどで帰ってみると、池の中に金魚の影も形も見えない。
鷺の侵入を防ぐ糸を張り巡らせたのだが効果がなかったのだろう。
室内で3か月寝食を共にした25匹の金魚たちである、悄然としてしまった。
それから二日後、思いがけないことに、10匹以上の金魚が池の中を群れて泳いでいるのを見つけた。
いろんな方に会うたびに、金魚悲劇の顛末を話していたから、気の毒に思ったどなたかが池にそっと入れてくれたのかもしれないと思うほど日がたっていた。
しかし注意深く観察すると、室内越冬金魚であることは間違いない。
7匹の子ヤギという童話があった、母さんヤギの留守中に腹を空かせたオオカミが、言葉巧みのドアを開けさせ。片っ端から子ヤギを丸呑みする怖い話である。
しかし 時計の中に隠れた一番小さな子ヤギだけが助かった。
金魚は大勢で小さな池のどこに隠れていたのだろうか。
用心深くなった魚たちはそれからめったに姿を見せなくなった。