みのりトンボ印バリカン(ヘヤークリッパー)
合間を見ながら、少しずつ身の回りのかた付けをやっている。
もうとっくに無くなっていると思った物が出てくると、ついそちらに気を取られてしまう。
今日のバリカンもその類である。
まして 再会の喜びの余り分解など始めたらきりがない。
まあいいか 時間はあまるほどある。
散髪は親父がやってくれた。
腕はよかったのだろう、友達のような虎刈りにされたことは一度もなかった。
しかし決して愉快な時間ではなかった、とのかく痛かったことを覚えている。
散髪の間ずっとバリカンを力いっぱい頭に押し付けられた、その痛さを虎刈りで友達に笑われる恥ずかしさに比較して涙をこらえて耐えた。
もう一つの原因は刃が切れなくなって、髪の毛を引っ張らた時である、1本の毛が抜かれても痛いのに、数本が一時に引き抜かれる痛さは想像を絶する。
親父は道具にこだわって、職人が使うバリカンを専門店で調達しとても大切に扱っていた。
分解してみた、医療機器と同じで、1丁々職人の手作りであることは間違いないと思う。
手に握って動かしてみた、思ったより力がいる、握った時と同様、離した時も切るために固めのスプリングが必要だったのだろう。
これでは頭がひりひりするほど押しつけられても仕方がない。」