元ラーメン屋店主のツイート集

ラーメン屋を10年経営し、今は閉店し、介護士をしています。

オンリー・ミー/三谷幸喜

2007年08月19日 | 小ネタ
一般の人とラーメン屋調理師では舌に大きな
違いがあります。あえて、料理人と大きな
カテゴリーではなく、ラーメン屋に限定し
ます。それは、他の料理の世界をあまり
知らない為、適当な事は言えないので、
よく知っているラーメン屋に限定します。

一般の人は調味料で味つけを全くしていな
いラーメンのダシ汁(スープ)を飲んで「美味し
い」とは感じないはずです。でも、ラーメン
屋は、ダシ汁だけを一日10回以上味見する
ので、嫌でも「美味しい」と感じるように
なります。ダシ汁を知る事で「トリガラを
増やそう」「モミジを引き上げよう」
「香味野菜を入れよう」と判断できるよう
になります。
例えば「昆布ダシ」「しいたけダシ」
「かつおダシ」「トリガラ・ダシ」
「トンコツダシ」など、単独での一番ダシ、
二番ダシの味をしっかり記憶していないと、
微調整が出来ません。どれぐらいの分量を
どれぐらい煮こめば、どうなるかは理解
していないといけません。

だから、それぞれ単独のダシの味をバラン
ス良く足し算するのが、ダシの味です。

この完成ダシ汁+元ダレ+香味油が、
ラーメンスープの味です。店によっては、
最後に魚粉、化学調味料、香辛料など加え
る場合もあります。

元ダレや、香味油は、ダシ汁ありきの物です。
ラーメン開発中にダシ汁が未完成状態で、
元ダレ、香味油が完成するなんて本来ありえ
ません。ダシ汁で充分美味しくて(あくまで
ラーメン屋にとって美味しい段階で、一般の
人は吐き出すかもしれません)、その後の味
付けです。

ダシ汁のみの味見で、調整工程が変わってき
ます。もし、元ダレ、香味油を加え味見を
したら「ん?何か足りない?でも、何だろう?」
と分からなくなる事が多いです。だから、ダシ汁、
元ダレ、香味油はそれぞれ単独で味見をしなけれ
ばいけません。元ダレは、だいたい1日1~2回
しか味見をしませんが、作りたてよりも1週間後
ぐらいの元ダレが熟成されて一番美味しいです。
だから、当店では一週間前の元ダレが使用出来る
ように、一週間先の分を仕込んでいます。

ラーメンの話は、枕の触り程度のつもりでしたが、
長くなってしまいました。

要は何が言いたかったと言うと、一般の人と、
プロでは、ある分野では違う感覚があるという事を
書きたかったのです。

例えるなら、芸人はテレビのフリートークで、最近
あった面白い話をする事が多いけど、芸人だから
と毎日面白い出来事に遭遇している訳じゃないです。

何気ない事を「面白い」「ネタになる」と気づくか
どうかです。一般の人は、数分後に忘れるぐらい些細
な小ネタでも、芸人は「面白い」と感じるのです。
「面白い」原石に気づけば、後は調理をするだけです。
芸人の技術で、日常的な小さな話が、笑える話に化け
ます。

そんな芸人感性を持っている三谷幸喜の「オンリー・
ミー」という本を今読んでいます。

三谷幸喜が誰なのか説明不要と思いますが「振り返れ
ば奴がいる」「古畑任三郎」「王様のレストラン」
「総理とよばないで」「HR」など沢山のドラマの
脚本をし、大河ドラマ「新撰組」の脚本も手がけ
ました。最近は映画監督としても有名ですが
映画の原作、脚本をてがけた「ラヂオの時間」
「笑の大学」「みんなのいえ」は滅茶苦茶笑え
ました。舞台脚本や、タレントとしても有名です。

そんな三谷幸喜の「オンリー・ミー」は素朴だけ
ど笑えます。凄く面白いブログを読んでいるような
感覚です。

日常の些細な事ばかりを書いていますが、一般の
人にとって普通なありふれた事も、三谷幸喜に
とっては凄く面白い事なんでしょうね。例えば
ファミレスに無愛想なウエイトレスがいただけ
で凄く面白い観察日記になっています。

やっぱり三谷幸喜は喜劇派脚本家ですね。