だから、おやすみしますm(_ _)m
こんばんは、へちま細太郎です。
藤川先生が大河ドラマの“天地人”を見ながら、
「“たわけ”って、まだこの時代にはないぞ」
と、ポツリとつぶやいた。
「なんで?」
「なんでって、江戸時代になると所有する田畑を売買するのは禁止だし、先祖伝来の田畑を手放す行為は大バカ者のすることなんだな」
「そうか、だから“田分け者”なのか」
慶子おねえちゃんは、辞書をパラパラめくりながらうなづいている。
「藤川家と美都藩にはそんな“たわけもの”はいないぞ」
「そりゃそうだね、あんに食い地がはってりゃ」
と、おばあちゃんが笑いながら藤川先生の言葉に対して返した。
テレビの前に陣取っている、なぜかまだいる鎧甲のおじさんが、やっぱりうなづいている。
「う~ん、言葉って難しいねえ」
ぼくは、菜々子をだっこしながら、その柔らかい感触に満足していた。
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孟宗学園に合格したぼくのために、今日はふつうのごはんだった。
なんでだあ。
確かに行きたくはないけどさ、一生懸命やったご褒美くらい欲しいよな。
「あんだけ勉強して落ちたら、そりゃないでしょってことで…」
おばあちゃんの言葉に、もっともだと思う。
「ほんと、シビアなおふくろだよ」
と、おとうさんはおばあちゃんの悪口を言いながら、お祝いだといって買ってきたケーキ
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なれたよ…。
それでも、テニスのラケット
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よかった。
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さて、今日は孟宗学園の合格発表の日。
朝から落ち着かないたかのり君は、何をやっても空回りしていた。
発表はおとうさんが見てくれて、広之おにいちゃんに連絡がくることになっていた。 学校にも結果通知がくるらしいけど、おとうさんは早く見たかったらしい。 けんちゃん先生に、しつこく聞き回っていたみたいだけど、
「特別扱いしねえよ」
という当たり前の返事に怒っていた。
できれば合格したくないぼくは、あんまり結果なんかどうでもよかったけど、それでもなんとなく気にはなった。まあ、頑張って勉強したからね。
美都二小から受験をしたのはぼくら5人の他に、あのはるみを含めて3人くらいかな。あとは地元の私立を受けたみたいだ。
休み時間になっても、お昼休みになっても、広之おにいちゃんから全然連絡がこない。
「落ちたのかよっ
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たかのり君はカリカリ、みきお君はイライラ。たかひろ君は貧乏ゆすり、しんいち君はがっくり。そんなイライラも知らず広之おにいちゃんは、2年生の自分のクラスの子たちのめんどうにおわれていたんだとさ。
結局、結果がわかったのはお昼休みだった。 ぼくらは全員呼び出されて、
「はい、おめでとう
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と、あっさり学年主任の先生に言われて、なんだか拍子ぬけしてしまった。
そうか、合格したのか。
はい、おめでとう…ってよかったのかなぁ。
はろー、べいびぃ子ネコちゃんたち藤川だよ
只今、勤務中のネットサーフィン中。
5人の兄弟姉妹のうち、独身者は俺だけになってしまった。
女には不自由していないが、しかし、特定…本命の彼女がいない。だから、結婚ができない。
って、結婚したいわけじゃない。
でも、結婚はしなくちゃいけない、立場上…。俺は所詮“種馬”だからね。
相手も誰かが選んでくれるだろうから、積極的に探す気もないけどさ…やっぱり好きな人と結婚したいよな、と思う今日このごろ。
なんか、わびしいなあ。。。
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藤川本邸での住み込み浪人生活も追い込みを迎え、センター試験の自己採点も予想以上に高得点だった。
「いくぜ東大、まっしぐら」
と狸を数えていたら、
「ね、あんた、落ちたらど~すんの?」
と、藤川先生の色っぽい姉さんが聞いてきた。
「何いってんっすか~、落ちるわけないじゃないっすか」
「いつもすべってばかりいるから、本番は大丈夫」
今度はうどの大木のだんなだ。言うことがいちいちムカつく。というか、相変わらず、おもしろくもなんともない。
「だ~から、落ちないっていってんじゃないっすか
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「落ちたら、また浪人すれば言いだけよねえ」
ちきしょうっ
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ぜってー東大受かってやるっ
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こんばんは、へちま細太郎です。
給食を食べながら、たかのり君が言った。
「みんな、落ちたらど~すんの?」
「へんなこと言わないでよ」
しんいち君は唇をとがらせた。
「ぼく、つくばった町に引っ越すんだから、落ちたらつくばった中学だよ。友達がいないじゃないか」
「そうか、しんいち君は引っ越しちゃうんだよね」
「寂しいなあ」
たかのり君は牛乳を飲み干してつぶやいた。
「はぁ…、二度と会えなくなっちゃうんだ」
しんいち君はじろっとたかのり君をにらんだ。
「だから、そんなこと言うなっ」
「あ、ごめん」
たかのり君、今日はすべりっぱなし…。
発表は明後日だぁ。
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「福はぁ内
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「鬼はぁ外
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「福はぁ内
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「鬼はぁ外
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「福はぁ内
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「鬼は外っ
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「いてっ
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「あ…
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広之おにいちゃん、ダメだよ、奥さんに豆ぶつけちゃ。
へちま細太郎
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「もし、給付金が出たら、何買う?」
「12,000円かあ、新しいラケット買うかなあ」
「ずいぶんやすいな」
「バカ、細太郎のだ」
「あ?」
「中学になったらテニス部に…」
「入らないよ」
「ほ、ほそたろぉ」
バカだ、コイツ。
慶子おねえちゃんでした。
こんばんは、へちま細太郎です。
2月だあ。 というわけじゃないけど、まだまだ寒いよね。
「2月は一番寒いんだ」
と、三田先生が寒そうに体育の授業の時にボヤいた。 見ているだけでジャージが寒く見える。
今日の体育は、からだを暖めようということで、縄跳びを校庭のグラウンドで5年生といっしょにやった。 長縄の競争や、ダブルダッチをして失敗したりで大いに盛り上がった。
ところが、校庭のすみの鳥小屋から、
ケッケッ、コケーッ、キケーッ
とかいう凄まじい鶏の鳴き声がしてきた。
「なんだなんだ」
みんなが一斉に鳥小屋を見ると、扉が開いていて茶色いかたまりとそれを追いかけるようにコケ吉が飛び出してきた。
「あ、コケ吉何やってんだ」
と思う間もなく茶色いかたまりが、ぼくらの方に走ってきたじゃないか。
「あっ、狸だっ」
「まぢかよっ」
「きゃあ」
猛然とダッシュしてきた茶色いかたまりは、狸だった。 コケ吉は爪とくちばしで狸を猛攻撃をくらわし、狸はたまらず逃げ出してきたらしい。
コケーッっという鳴き声をあげながら、狸の背中に乗り頭と言わず背中をつつき回され、狸はぼくらの間を駆け回ってやがてコケ吉を振り落として走り去っていってしまった。
「な、なんだったんだ、今のは」
「なんで、狸がいるんだ」
「ここは狸が出るような田舎だったのか?」
こんな言葉がささやきながらぼうっと立っている僕らの前をコケ吉が、尾羽をピンと立て誇らしげに歩いていった。
コケ吉、すごいぞ。まるで慶子おねえちゃんみたいだ。
みんながコケ吉を尊敬のまなざしで見送る中、ぼくだけはそんな変なことを考えていた。