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 「Hoshino Parsons Project」のブログ

絵解きの魅力と歴史学の進歩

2009年03月30日 | 気になる本
最近、少し遅い昼食をとりながらテレビをみていたら、国宝絵画の値段ランキングが出ていました。

私が上位に予想したのは、尾形光琳や俵屋宗達、長谷川等伯、雪舟などの絵画ですが、これらの有名な絵画はいずれも20億円以上するものではありましたが、ベスト10入りしていたのは、光琳の紅白梅図屏風と雪舟の秋冬山水図のみでした。

これらの絵画以上に高額なものがいったい何なのだろうと思ったら、それは絵巻物のたぐいでした。

信貴山縁起絵巻や鳥獣戯画、あるいは洛中洛外図などは、考えてみると純粋な絵画的価値のみならず、歴史資料としての価値やその情報量においても確かに前にあげた絵画よりも貴重なものであるといえるかもしれません。

とすれば、国宝絵画で最も高価なものは、当然「源氏物語絵巻」に違いないと思ったのですが、なんとそれ以上に値段の高いものがあったのです。

伴大納言絵詞です。

実は最近、こうした絵巻物にとても興味を持っているお客さんがいて、私の家に埋もれた画集などを貸したりしていたのですが、そのお客さんが一遍上人絵巻などともに、伴大納言絵詞をよく話題にしてたのを思い出しました。

早速そのお客さんにこのことを知らせると、どうだとばかりに私の目に狂いはないと鼻高々に喜んでくれました。

で、そこまで絵巻物に興味を持って画集を買い集め丹念に読み解いていたお客さんだったのですが、そうした絵解き研究の第一人者である黒田日出男さんが、群馬県立歴史博物館の館長であることを知らなかったのです。

ここ10年ほどのあいだの歴史研究の進歩には目覚しいものがあり、これまで正史と呼ばれるその時代の支配者の側からみた文献資料ばかりに頼っていた歴史学が、文字にあらわされたもの以外の考古学の成果やこうした絵巻物の絵解きの進歩によって、これまでの常識が次々と書き換えられているのです。

足利尊氏の像といわれていた絵が尊氏ではなかった。

肖像画の名作として知られていた伝源頼朝像などが、なんと足利尊氏から義満へ受け継がれる関係をあらわしたもののひとつであったことなど。

考えてみると最近の歴史学の進歩は、考古学の領域なども含めてみると、現代のIT技術の進歩にも劣らないともいえるほどの目覚しいものがあります。

こうした分野の研究の第一人者が黒田日出男さんなのです。

別なお客さんが、最近、予約の取りにくい黒田さんの講座にやっと参加できた話をしてくれました。お話自体もとても上手なので人気もかなり高いようです。

こうした絵画資料の見直しばかりでなく、史実とは関係ないものとして捉えられがちな神話や説話の世界も、今ようやく真の歴史的資料としての読み解きがはじまりだしています。
たしか、史実とは関係ないとみられがちな『神道集』の再評価も大事であると強調されていたのも黒田さんだった気がします。

ちょうど今月、岩波新書で出ていた洛中洛外図についての黒田さんの本も復刊されました。

こんど、「現代の科学技術の進歩にも負けない日本歴史学の最先端」とでも題したフェアをしてみましょうか。
古代史の関裕二さんと黒田日出男さんあたりを軸にして。



             「正林堂店長の雑記帖」より改題転載
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