花の四日市スワマエ商店街

四日市の水谷仏具店です 譚

「晩春」

2011年05月14日 | 諏訪商店街振興組合のこと
「晩春」は昭和24年に製作されました。
戦後4年目、この作品くらい、平和と秩序と伝統の回復を実感させてくれた芸術作品は他にちょっとない。(小津安二郎新発見・講談社α文庫より)
不滅のヒロインとなる原節子起用の第一作で、紀子三部作(「晩春」「麦秋」「東京物語」)の最初の作品となります。(原節子はこの三作とも紀子の名前で出ていマス)
     
北鎌倉に娘と二人だけで住む大学教授が、自分の再婚をにおわせながら娘を嫁がせる物語。
     
住まいである北鎌倉や旅先の京都清水寺、竜安寺などの風景が、白黒の画面であるにもかかわらず、静かにゆったりと流れて行く様はしみじみと魅させられます。
     
     
父の再婚を「不潔だわ」と決め付ける紀子。幸せそうな顔が、再婚を知らされたとき豹変する。その恐ろしい形相には驚かされるのです。
失恋、落胆、憎悪、安堵、喜びと原節子の移りゆく表情が美しく映されている。以来、小津作品の形態を決定した記念的作品であります。
     
式を終えた夜、一人寂しさをこらえる父親(笠智衆)に、小津監督は「ここで、慟哭しろ!」とせまったそうです。それに対して笠智衆は「私には、どうしても出来ません!」と断ったそうで、このときが、監督に反発した最初で最後だったそうであります。(多分この作品でした。何せ、遺作となった「秋刀魚の味」も娘を嫁がせる父親の寂しさを描いておりますから・・・よくぞ、同じような作品を何作もつくられたものでゴザイマス)