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(1)スウェーデンの成人年齢は18歳だ。つまり、高校を卒業する頃に選挙権を持つ。
スウェーデンの選挙は、原則として4年に1回、一斉選挙(国会・県議会・市議会)が行われる。よって、めぐり合わせが悪いと、22歳にならないと選挙権を行使できない。とはいえ、若者は選挙に行って自分の意見を反映してくれる候補者、政党を選ぶのが当然と考えている。
(2)スウェーデンの選挙では、一部個人を選ぶことができるが、基本的に政党に投票する比例代表制だ。各政党が選挙に際して候補者名簿をつくり、その政党への投票数によって、名簿の上から順番に当選する。
候補者名簿では下になっているが、どうしてもこの候補者を選びたい、という場合にはその人の前についている欄にチェックを入れる。多数がチェックを入れた場合、名簿の順番を飛び越して当選することもある。
選挙では、選挙人が投票用紙に自分で候補者の名前を書くわけではない。すでに候補者の名前が印刷してある政党の投票用紙を投票用の封筒に入れるだけだ。投票所では、皆わりとオープンに、自分の好きな政党の用紙を拾い上げていく。誰がどの政党に投票したか、知ろうと思えば分かる。むろん、誰にも悟られないよう全部の政党の用紙を拾い上げて、封筒に入れるとき要らない政党の用紙を捨てる、という方法をとることができるし、そうする人も多い。
(3)スウェーデン人の選挙への関心は非常に高く、2010年の国政選挙の投票率は85.8%だった。前回の2006年は83.0%、前々回の2002年は80.9%。
18~24歳の若者は、他の年齢層より少し投票率が低いが、それでも2010年は79.9%、2006年は75.0%、2002年は70.7%だった。
最も投票率が高かったのは、65~69歳の年齢層で、91.3%だった(2010年)。
どの年齢層でも、女性のほうが男性より2~3%の高い数字を示している。
市会議員の選挙でも投票率は高く、全体で81.6%、18~24歳の年齢層は74.1%だった(2010年)。
ちなみに、日本の衆議院議員総選挙の場合、普通選挙が始まってからの最高投票率は76.99%(1958年)、最低投票率は59.65%(1996年)だった。スウェーデンに比べると、ずいぶん低い。市議会議員などの選挙の投票率も高いとは言えない。
(4)スウェーデンではなぜ選挙への関心が高いか。
スウェーデンでは、政治と市民生活の関わり合いがハッキリ目に見えるからだ。
社会の仕組みを動かす財源は税金だ。皆から税金としてお金を集め、それをいろいろなことに有効に使おう、そのためには何を優先し、何を後回しにするか、何にどれくらいのお金を使うかを議論して決めるのが政治だ。
スウェーデン国民の所得税は、スウェーデンの福祉を実際に運営している市(コミューン)と県に直接行き、市民は自分の納めた税金が具体的にどのように使われているかを市のレベルでチェックできる。
<例>自分が住まう市で、経費削減のために市立図書館の開館時間が短くなった、学校給食の質が落ちた、などについて苦情を申し立てたければ、次のような方法がある。
(a)図書館や学校にクレームをつける。
(b)市議会の中の文化・教育委員会に直接連絡をとる。
(c)市のホームページの「意見箱」欄に書き込んで意見を送る。
(d)市の政党支部に言う。その政党が市議会の野党の場合などは、議会与党を攻撃するタネになるので、よく話を聞いてくれる。
(e)地域のミニコミ紙に連絡を取って記事にしてもらう。かなり有効。
□三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(岩波ジュニア新書、2013.2)
【参考】
「【スウェーデン】いじめ防止の取り組み」
「スウェーデン関係書誌」
↓クリック、プリーズ。↓
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