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①富永京子『社会運動のサブカルチャー化 G8サミット抗議運動の経験分析』(せりか書房 4,700円)
②東郷和彦、A・N・バノフ(編)『ロシアと日本 自己意識の歴史を比較する』(東京大学出版会 4,400円)
③エマニュエル・トッド/聞き手:朝日新聞『グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命』(朝日新書 720円)
(1)①は、1986年生まれの若手学者(立命館大学准教授)による意欲的で優れた研究書だ。世界的規模でサブカルチャー化しているデモや抗議活動について、日本の事例を実証的に調査、分析している。
<社会運動が「集合的アイデンティティ」から「流動性」「経験」に基づくものへと移行しつつあることを考えると、運動はそれぞれの活動家たちの属性や経験、好ましいと感じる規範や価値に基づく多様な居場所へと分化していく過程でもあるのではないかと思われる。(中略)同じ目的を持っている、共通の「敵」がいるというだけでは連帯しえず、誰をステークホルダーにするか、自らの運動の正しさをどれほど疑っているか、政府との距離をどれくらい保っているかといった点から、自らが参加すべき運動の方向性を測り、参加や離脱を決定していたと言える。だとすれば、社会運動サブカルチャーは、ある種のクラスター化された「同好の士」たちによってさまざまに分化するものではないだろうか>
という富永氏の指摘は事柄の本質を突いている。
もっとも、クラスター化して分化した抗議活動は、政治力としては弱くなるので、国家にとっての脅威ではなくなる。
(2)②において、チュグロフ氏は、次のように結論づける。
<1990年代初頭より、グローバル化が日本人とロシア人のアイデンティティを変化させたことは疑いようがない。グローバル化の挑戦にもかかわらず、日本国民やロシア国民は、、その比類のない適応性と柔軟性によって、自らの伝統的なアイデンティティを失わなかった。(中略)現在、日本とロシアは、自らの伝統とグローバル化によってもたらされた革新の間の、正確な均衡を見つけようとしている>
グローバリゼーションに対する反発が、日本とロシアを無意識のレベルで結びつけていることが、最近、北方領土交渉が加速していることの重要な動因だろう。日露の戦略的提携の可能性に関心を持つ人の必読書だ。
(3)③では、グローバリズムに対する反発が国家機能の強化となって表れていることに対する危機感が表明されている。
<日々テロにさらされているのだと思わせられると、人々はますます国家の規制を求め、マスコミは治安を重要課題にしてしまう。まったく妄想もいいところだ。だが、この妄想には意味がある。それで、国家が再登場できる>
このような国家機能の強化により、社会は閉塞感を強める。国家ではなく社会の機能を強化することによってテロに対抗していくことが重要だ。
□佐藤優「グローバリゼーションへの反発 ~知を磨く読書 第172回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年11月5日号)
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