語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】半可通批判

2010年04月20日 | 批評・思想
 『日本人とユダヤ人』 は、単行本および文庫本をあわせて300万部以上が売られ、第2回大宅壮一ノンフィクション賞(1971年)を受賞し、一説によれば「いざや、便出さん」に由来する筆名イザヤ・ベンダサンこと山本七平の懐をおおいに潤わせた。

 山本七平がその文才を発揮して儲けるのは、山本七平の自由である。
 と同時に、正確ではない情報を頒布することで、活字を信じやすい日本人をたぶらかした罪は山本七平が負わなければならない。
 旧約聖書学的見地から、『日本人とユダヤ人』をこてんぱてんにやっつけたのが『にせユダヤ人と日本人』である。

 たとえば、山本ベンダサンは、新約聖書には「神の小羊」といった表現が実に多いというが、じつのところヨハネ福音書第1章の29節と36節に2回登場するにすぎない、と実証する。
 あるいは、新約聖書ヨハネ黙示録第6章8節の文語訳「蒼ざめた馬」は原典の意味もわからず何となくムードに惹かれた日本人の誤訳だ・・・・と山本ベンダサンは指摘するが、実はこれはまったく正しい訳であって、誤訳と思いこんでいるのは世界広しといえども山本ベンダサンだけだ、と皮肉る。

 著者、浅見定雄は、宗教学者。専門は旧約聖書学、古代イスラエル宗教史。日本のカルト問題にも取り組む。

【参考】浅見定雄『にせユダヤ人と日本人』(朝日文庫、1987)
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