語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】騒音のなかでも会話できる心理学的根拠

2017年05月14日 | 心理
 盛り上がったパーティや忘年会の会話を記録しておこうと、カセットテープをあちこちに据えつけておき、いざ再生する段になると環境音がうるさくて何を話しているかわからない。
 集音器で特定の人の声を拾うか、お喋りを録音したい人の胸元にマイクをつけるしかない。あるいは録音した音声データをコンピュータで解析するしかない。

 人は、こんな騒音のなかでも話を聞き取ることができる。
 人の情報処理系には、そのごく初期の段階に選択機構があって、ひとつの情報だけを通過させ、それ以外の情報の通過を妨げる濾過装置のような機能がある。パーティや忘年会のワイワイガヤガヤ場面では多くの情報が感覚器に入力されるが、聞きたい音声のみ注意をはらい、注意をはらったものだけをパターン認識することができる。その他の情報は、いわば音量を下げるようなかたちで感覚器を通過させるのだ。
 これを<選択的注意>という。ホンダのアシモくんにはまだ備わっていない能力だ。
 アラーが偉大であるかはどうか知らないが、人の心身のシステムが偉大であることはたしかだ。

 逆にいえば、<選択的注意>がうまく働かなくなったとき、心身のどこかが故障していることになる。

【参考】和気典二ほか『心理学アップデイト』(福村出版、1991)
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