「21世紀の資本論」の著者トマ・ピケティ教授がレジオンドヌール勲章を辞退した。かれはフランスの社会党に近い立場と言われているが、現政権のオランド大統領を見限ったとも言われており、またその年齢からこの権威を受けると後々難しくなると考えたのかも知れない。
その前にこの勲章につく年金が余りにも安い。5等で6.1€、1等で36.59€となれば、名誉にまつわる義務を考えれば受けない方がマトモに感じられる。何かがあった時に勲章剥奪と言う事もある訳で、以外と名誉だけでリスキーでもある。
さらにレジオンドヌール勲章受賞者の組織、オルドルが過去の社交界のような感じがする。騎士団と言う意味のようだが、そこには序列がある。国家に貢献すればするほど昇進し、グランクロワまで来ればそれはそれは名誉な事なのだが、この騎士団の中でどういった話があるのかと考えれば、ピケティが辞退するのは解る。
国家に貢献したとしても、自分の未来を考えればいい事は無い。
ただここで先だってのフランスのテロ事件で、食料品店が襲われた事件があった。テロリストから階下にいる人もすべて出せと言われて、とっさに従業員の一人が階下ににいるお客さんを冷凍庫に入れてその電源を切り、自分一人で脱出して警察に建物内部から詳細な情報をもたらした、というものだ。
CNNの記事だ。細かいニュアンスはこちらの方が正しい。
彼はアフリカのマリ人でイスラムだ。その彼にレジオンドヌール勲章を与えるべきだという署名が30万集まっている。
私が違和感を感じるのは、人として当たり前の事を知略で切り抜けた彼を賞賛しても、勲章はどうなのか、なのだ。いいイスラム、悪いイスラムを二分化しようとしていると思う。今回のテロ事件では殺された警察官もイスラムだった。彼も賞賛されている。
これはいい事ではない。本質はもっと厄介なのだ。下手にこのマリ人にレジオンドヌール勲章を与えたらテロの標的になる可能性もあるのだ。寝返った奴、当たり前の事をしたのにそう見なす人たちがいる訳だ。
ただフランス人は非常に苦しんでいる。だからその苦しみから逃れようと署名しているのだろう。
そしてその二分化した世界は、実はイスラムにもある。JBPressがとても良い記事を書いていた。この後半にイスラムの現在の苦しみを描いている。
エジプトのシシ大統領がイスラム学の最高府アズハル大学で重要な演説をした。1月1日だが、それは予言のようになった。
イスラムにとって「宗教革命」が必要であると言い切った、という。
「私たちの信仰に問題があるわけではありません。問題は考え方(al-fikr)にあるのです」
「私は繰り返します。私たちには、宗教革命(al-thaura al-diniyya)が必要です。あなた方、宗教指導者は神の前に責任があります。世界中、繰り返しましょう、世界中が、あなた方が次に動くことを、あなたがたの言葉を待っています。なぜなら、この世界(ウンマ=イスラム世界)は引き裂かれ、破壊され、失われているからです。それも私たち自らの手によって」
引用で強調かけるほど重要な言葉だ。残念ながら私はアラビア語は解らない。でもYouTubeにこの演説は落ちている。言葉の重さがひしひしと伝わってくる。
イスラム世界は欧米の文化で自分たちが傷ついて来たと考えていた。それはそれで正しいし、宗教である限り世界にあわせる必要も無い。だがそれでも原理主義者達は彼らも蝕んでいるのだ。しかもとてつもなく。
シシ大統領の演説は1月1日だ。予言のように響いてくる。
エジプトはとても古い歴史を持つ国家だ。その中には様々な宗教もある。イスラムが覆っていても経典の民を保証するという精度があった。だがキリスト教コプト教会襲撃事件は、原理主義政権がになっていた時代に起きた。その前に通商が伝統の国で、後は観光、産業と言えるのは少ない国でベビーブームがあって若年層の失業率が高い。
この状況は安倍政権になってからヘイトスピーチが大きくなったというのと似ている。正確に言えば在特会によるヘイトスピーチはその前からあるが、安倍政権後そんな事言ってもいいのかと言う人が増えて社会問題になった、そう言うべきだろうか。
20世紀の夢が余りにも大きかったので、引き裂かれているかもしれません。自らの手によって。
イスラム世界のどこからか、重要なファトファが出るのではないのかと期待しているのですが、引き裂かれた状況では難しい様です。報道もこのあたりは鈍感ですから仕方が無いのかもしれません。