カルテ番号 は・9（15）
原奈緒子はここで言葉を挟んだ。
「どうしてですか？性力が強ければ、性欲も強いのでは？」
「そこが性力と性欲の誤解されやすいところです。
性力とは、生命力そのものです。シャクティなどともいいますが・・・
生命力が本当に強い人、そうですね、子供を想って下さい。
子供時分は生命力が強い時期です。
好奇心が強い、いろいろに興味があるし、そこに向かって突っ走る。
そんな大人は、自分の道をどんどん進む。いろいろに興味がある。
例として、大きなテーマを追いかける研究者や画家とかを想って下さい。
彼らは決してマッチョな男くさいタイプではありません。
鶴のように痩せているかもしれない。でも、性力の強いタイプです。
ですから、なにかに興味があり、そこに向かう心身のスタミナも凄いです。
他に生命力を使うものが大きいから、性欲などに多くの生命力を使わないのです」
なるほど・・・
「では、性欲の強い人は、性力はそれほどでもない、と？」
実は原奈緒子は自分を少し重ねていた。
「そうともいいきれませんね。
他に目標が見つからない場合、性欲に向かうこともあります。
また、性そのものに興味を持つ場合も、性力の強い人には多々みられるようです。
でも、性欲の大きい人の多くは、単なる不平不満不安からの逃避なのですね。
この場合は、生命力からの突き上げではなく、心という幻を追いかけてのことです。
つまり、自分から求めている性欲ですね。
例えば戦争状態などの、過度のストレスがあると、性欲は強くなります。
でも、性力は弱くなります。
戦士は、見た目は鍛えて強そうですが、本来の生命力は弱くなっています。
命令で動き、好奇心や遊び心などは持ってはいけないから、尚更ですね」
（登場する人物・組織・その他はフィックションです）
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