新型コロナウイルス感染が止まらない。今月13日を境に国内の感染者は急増しており、新たなフェーズへと突入した。厚労省の資料によると、日本で最初に感染が確認された1月15日から2月12日までの感染者は29名だったのに対し、13日以降17日までは30名と急増(17日午前9時現在国内59名)、中でも東京都がダントツの19名となっている。さらに、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の感染者数は355名にも上る。世界からは「第二の感染地」と言われる始末で、日本政府の対応に批判の声が上がっている。これからは、日本が渡航中止の当時国になってしまうのではないか。東京オリンピックの開催中止も現実味を帯びてきた。
ところで、中国クルーズ船の寄港回数が全国で一番多い福岡市(2018年博多港1位、2019年那覇港1位)は、大丈夫なのか。昨年12月、中国武漢で肺炎が流行し、世界保健機関(WHO)は12月31日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。今年1月7日、新種コロナウイルスが原因であると発表。1月9日、最初の死者が出た。その頃の博多港はといえば、普段と変わらず中国からクルーズ船が寄港していた。1月23日、武漢が閉鎖されてからも上海や大連からの寄港は続いていた。寄港中止は1月27日からだった。
福岡市港湾空港局に電話で確認したところ、最後にクルーズ船が寄港したのは1月25日、上海から寄港した「SPECTRUM OF THE SEAS」だった。このクルーズ船には、約4600人の中国人観光客が乗船し、博多港で下船している。厚労省福岡検疫所は、サーモカメラで入国者の発熱の有無を確認したというが、解熱剤を飲んでいればスルーできるし、新型コロナウイルスは潜伏期間が長い。その上、感染者には無症状の人もいる。絶対、安全だという保証はない。
ツイッター上では、このクルーズ船が、1月29日に寄港したというデマが出回っていた。これに高島市長が即反応し、「昨日クルーズ船は来てないし、当面は全部キャンセルの見込みで…災害時同様、必要以上に不安を煽る情報に注意しましょう」とつぶやいていた。デマはよくないが、25日までは寄港していたのだから市民が不安になるのは当然だろう。災害時同様というのなら、大事なことはツイッターでばかりつぶやいていないで、きちんと市の公式ホームページに載せるべきだろう。SNSをやっていない市民も多くいるのだから。
高島市長は1月30日、自身のブログで「当面は中国本土からのクルーズ船の寄港を拒否すべきだ」と発言し、翌31日の記者会見では「平時と有事の対応はしっかり分けて考えなけれならない」と珍しく国に苦言を呈していた。入港の権限を持つ、福岡海上保安部では、感染症の可能性があるというレベルで拒否できない。上陸の権限を持つ、法務省福岡出入国在留管理局では、政府から特段の指示がない中、現在の法律に基づく上陸拒否の条件に該当しない。そこで、高島市長は2月7日、クルーズ船の入港や外国人観光客の入国を制限できる基準とルールを定めるよう国に求める意見書を、法務省に提出した。国をけん引していると自負する高島市長だが、さて国は動くか。
中国政府の新型肺炎対策チームである長鐘南山氏は、武漢閉鎖が1月23日で、潜伏期間が14日とすると、2月5日ごろまでは武漢から移動した人が各地でウイルスを拡散させるが、そこで感染網を断ち切れていれば、20日あたりに一服するという。一方、東北医科薬科大の賀来満夫特任教授は、国内の感染経路がはっきりと分からない感染者が出ており、国内いつどこで感染が起きてもおかしくないと警鐘を鳴らしている。報道によれば、武漢閉鎖前の1月20日から23日まで、武漢市から直行便で外国人約1700人が日本に入国している。しかし、その後の行動についてはわからないのか、明らかにされていない。敵が見えないだけに不安は募る。幸いというか、今のところ、九州(沖縄以外)では感染情報はない。このまま収まってくれればよいのだが。
※福岡市を含めた福岡県内の感染情報は、県のホームぺージで毎日9時、13時、17時に更新されています。こちらで確認を。
今月2日、博多港に寄港した乗客ゼロのクルーズ船「SPECTRUM OF THE SEAS」、これを最後に寄港していない(写真:西日本新聞より)
この船は、もともと上海から直接博多港に寄港する予定だったが、ツアー中止を受け、船員だけ乗せて、1月29日、那覇港に寄港。2月2日朝、博多港に入港。予定されていた食品を積んで、同日午後、韓国釜山へ向かった。
世界全体の感染者は7万人超、それで中国を除く世界感染者の約半数がクルーズ船、、(日経コロナウイルス世界マップより)
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